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『君たちはどう生きるか』の映画感想まとめ

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『君たちはどう生きるか』についてのすてきな映画感想をまとめるマガジンです。 #君たちはどう生きるか
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あまり難しく考えすぎない、「君たちはどう生きるか」の解釈

今回は、宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」について書きたいと思う。 これは間違いなく、宮崎駿史上最も難しい作品だよね。 ちょっと変わった作品ともいえる。 鈴木敏夫プロデューサーは、以前にこう言っていた。 「宮さんは、実はただひとりの観客を意識して映画を作っている。 宮崎駿が一番作品を見せたいのは、高畑勲」 その高畑さんが、2018年に逝去。 つまり「君たちはどう生きるか」は、宮崎駿がジブリ史上、初めて高畑さんのことを意識せずに作った作品なんだ。 高畑勲を意識し

【後編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

前編はこちら▼【以下後編】字体統一のメリットとデメリット新聞のルールで名前の字体を変えた結果、その人が普段使っている表記や他のメディアでの表記と異なることで、「同じ人物」を指すことが分かりにくくなってしまうとすればデメリットと言わざるをえません。 新聞は「分かりやすい」記事を旨とします。普段「臺」を使っている人の名前を「台」にすると、字体は「分かりやす」くなりますが、「臺」と「台」が〈字体が異なる同じ字種である〉という知識を読者に要求する、という点では「分かりにく」くなって

【前編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

「宮﨑 駿 監督作品」泣く子も黙るスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」が公開された2023年夏、校閲部内(の一部)に動揺が走りました。 宮崎駿が「たつさき」になっている…ざわ…ざわ アシタカ「じいじ、何だろう」 じいじ「分からぬ。人ではない」 アシタカ「村の方はヒイさまが皆を呼び戻している」 じいじ「来おった……タツサキだ!!」 アシタカ「タツサキ!?」  ♪ デッデー、デデデッデー 映画ポスターの監督名表記がこれまでの「宮崎駿」から「宮﨑駿」にさりげなく変わって

岩倉博『吉野源三郎の生涯 平和の意志 編集の力』 (2022、花伝社)を読む

吉野源三郎と言えば児童小説『君たちはどう生きるか』の作者であり、その作品が宮﨑駿監督作の映画の発想の元になったことでその名も改めて周知されることになった。改めて、とあえて記述したのには意味がある。本書を読むと第二次世界大戦後の日本社会において、吉野がいわゆる進歩的知識人・言論人・編集者・作家として歩んだ生涯の足跡の大きさ、もっと言えば偉大さを感じる。しかし、私自身は宮﨑監督作を観るまでは、これまで特に吉野自身に注目したことはなかった。不勉強ではあるが、1981年にその生涯を閉

『風立ちぬ』から考える、魔の山にあった2つの選択肢。

「宮崎駿は『ロード・オブ・ザ・リング』がお嫌い」ーーこんな記事が2年前に書かれている。 悪行があり、それを流血によって罰する物語。悪人を罰する過程で、罪のない無数の人々が殺される物語。宮崎監督からしてみれば、ハリウッド映画とは、概ねそんなものであると。 彼が発した実際の表現としては。「アメリカ人は物を撃って爆発させたりするから、さすがにそういう映画をつくる」「敵なら無限に殺してもいい。ロード・オブ・ザ・リングもそうだ」 これがファンタジー?冗談だろ的な言い方も、したらし

映画「君たちはどう生きるか」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第84回

生きるに値する世界だと思えますように 2023年公開映画「君たちはどう生きるか(The Boy and the Heron)」の指輪 文・〝美根〟 「賛否両論」「カオス」「難解」「今までの作品を思わせる描写」・・・ 口コミは口コミであって、実際観てみると全然違う!という経験も多くしてきたのに、やはり観る前に口コミを見てしまうし、自分でもこうして観た感想やらを書き留め、紹介している私です。 第96回アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞受賞した「君たちはどう生きるか」も、正

君たちはどう生きるかスピリチュアル的考察!

(※この記事は君たちはどう生きるかが公開された当時アメブロに書いたもののコピーです。) 私は本当にこよなくジブリ作品を愛しています。 めちゃくちゃ好きです♡ 先日「君たちはどう生きるか」鑑賞してきました。 ショッピングモールの映画館でしたが、見た後に速攻で帰宅して6時間爆睡しました。 私の場合、神社仏閣やパワースポットに行ったあとに眠くなるのと同じ現象がおきたわけですね。笑 それくらい高波動な映画であることは間違いないです。 でも、面白いですか?と聞かれたら「うぅ

ジブリ「君たちはどう生きるか」を消化できる人とできない人

第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞を受賞した宮崎駿監督映画「君たちはどう生きるか」だが、日本国内で絶賛する人と酷評する人の両極しかいないというジブリ映画としては大変珍しい現象が起きている。 本作はいつものジブリ映画だと思って休日に子供を連れて見に行ったら泡を吹くような映画となっている。駿やりすぎでしょってくらい駿ワールドのフルスロットル。渾身の右ストレートを喰らったような好きなモノ、やりたかったことを詰め込んだ映画となっているため、パクチー並みに好き嫌いが別れてい

【“アジア人差別だらけ”と批判のアカデミー賞!】アジア系は無視する白人俳優!~アカデミー賞ステージ上で公然と行われるアジア人差別と白人が行う「透明化」という差~

【“アジア人差別だらけ”と批判のアカデミー賞!】アジア系は無視する白人俳優!~アカデミー賞ステージ上で公然と行われるアジア人差別と白人が行う「透明化」という差~ ■“アジア人差別だらけ”と批判のアカデミー賞 2024年03月12日 ■「アジア系は『おまけ』扱い」日本人ハリウッド俳優が明かした“現地の実情”にSNS注目「闇が深そう」 2024/03/12『女性自身』 ■アカデミー賞で東洋人差別か エマ・ストーンとロバート・ダウニー巡り論争 ミシェル・ヨーは疑惑一蹴

【第96回アカデミー賞】長編アニメ映画賞は『君たちはどう生きるか』 ジブリ作品が21年ぶり2度目のオスカー受賞

第96回アカデミー賞授賞式が3月11日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、スタジオジブリ製作・宮崎駿(※崎=たつさき)監督作品『君たちはどう生きるか』が長編アニメ映画賞に輝いた。 スタジオジブリの作品が、同賞に輝くのは、第75回アカデミー賞の『千と千尋の神隠し』以来21年ぶり2度目となる(宮崎監督作品としては、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『風立ちぬ』に続く4度目のノミネートだった)。 宮崎監督が長編作品からの引退を撤回し、原作・脚

しまい波 ー『君たちはどう生きるか』

3日前に図書館で借りたこの本を翌日に返して、『君たちはどう生きるか』を映画館で観てきました。 2023年7月14日の公開から7ヶ月。今はもう、日比谷の映画館では一日一回の上映ですので、間に合うかどうか、すこしドキドキしながら出掛けました。 スクリーン6は小さな劇場で、3分の1ぐらいの席が埋まっていたのですが、たぶんこんな感じで、ゆるゆると毎日だれかが観にきているのでしょう。年齢層はなんとなく、同じ世代の人が多かったです。 * 監督の宮崎駿は、昭和16年(1941)生ま

映画日記~「君たちはどう生きるか」

久しぶりに映画に行きました。「君たちはどう生きるか」の最終日でした。このパターン多いです。終わり頃になって、慌てて行くという・・・、 「となりのトトロ」を初めて見たときは感激しました。その他も見ていますが、ジブリ映画に特別な思い入れはないのです。よくわかっていないから。 この作品の評判は分かれた、というか、★で3.5くらい(映画.com)というのは聞いていましたが、あまり先入観を入れずに見ました。  感想です。長くなるけど、思ったことを全部書きたいと思います。 注※内容に

Ask me why 『君たちはどう生きるか』が投げかけた問い

□はじめに このnoteは映画に対する考察と呼べるようなものではなく、ただの感想文だと思っています。 スタジオジブリ映画『君たちはどう生きるか』。私はこの作品を劇場で計4回視聴しました。 公開されて間もなく日本で2回、そして英語吹替とタイ語吹替をそれぞれ1回ずつ。 けれど、回数は重要ではありません。単に私がこの作品に心を動かされ、衝動に駆られるままローカライズにまで手を伸ばした結果というだけで、何度も視聴すれば偉いといった類のものではないとはっきり言えます。 私が惹か

映画「君たちはどう生きるか」、二度目の鑑賞で感じたこと

先月あたりからもう一度見に行きたいと思っていた映画「君たちはどう生きるか」を、夜の映画館で見てきた。 ちょうど仕事終わりで行けそうな時間の上映。スクリーン番号が1に近いほど客席数が多いなら、その映画館でいちばん客席数が少ない部屋だった。見にきていたのは十数人。観客の立場で言えば、隣席も前の席も気にすることなく、とてもくつろいで見ることができた。 この映画は封切り前にほとんど情報が公開されなかったから、夏に見たときはタイトル以外何も知らない状態だった。一度に処理できる情報量