【小説】聡子とサトコ-1
空気が青くなっていく時間。駅を出てから買い物袋を下げて同じ方向を歩く勤め人達の波。信号待ちのうっとうしい時間。電動自転車に子供を乗せて走らす母親達。母親達はとりわけ皆余裕もなく面白味のない表情。そんな表情ひとつ見るだけで気分が滅入っていく。聡子が一日で一番嫌な時間だった。
保育園の入り口で会う母親には「……こんにちは」能面のような顔と口調でおざなりな挨拶をされる。ふん、こんなものだよね、と聡子は重い気持ちで独りごちる。皆誰も私に会っても、弾む話もないし用は無いって感じだよね