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絵師が自分の絵を売るにはどうすればいいのか

ここでは最低限、過去記事

に記載がある準備や心構えが出来ている人で、フリーランスあるいは趣味でも「会社等に所属せず代理人もつけていない」個人で動かれている人を想定しています。

また、ここでは芸術としての絵ではなく、あくまで相手が法人や商業利用をする目的で購入させることを想定しています。

どちらにしても現代日本では然るべき芸術の世界に籍が無いなら、芸術を評価されて絵が売れることはありません。

現代日本では「絵は売れないもの」

会社の面接で行われる質問
「ただの水道水を1杯1万円で売るにはどうすればいいのか」
というものがあります。

よく、流行りに乗りたいけど乗れてない会社がやりがちですね。

まず、見て頂いている方の立場は分かりませんが総じてあなたの絵は「日本での水道水以上の価値はない」と思っていいです。

「私の絵が水以下だと!?」と怒り罵る方もいらっしゃるでしょう。それはごもっとも。
しかしその前提に立たないと、市場を理解することは難しいです。

現代日本では絵はいくらでも誰でも生成AIや「いらすとや」さん、あるいはフリー素材で賄うことができます。

個人利用ならば有名作品であっても、いくらでも見たり手に入れることができます。
なんならその有名作品を絵師に頼んで模造したらむしろ犯罪です。

このように、まさに湯水のごとく絵は瞬時に誰でもタダで手に入る時代です(利用規約とか商用利用権とかそういうのはここではおいておきます)

そう、絵師の皆様方は常に「日本でただの水道水を1杯1万円で売る」営業を求められているわけです。

私、SNSで10万人フォロワーいる絵師だけど?それでも価値がないというのか!?

絵師の中には、1枚20万円で売れたとか、SNSで10万人フォロワーがいるとか、とにかく「自分の絵は価値がある」と思い込んでいる人がいます。
これも、見方を変える必要があります。

絵の価値の9割は付加価値でできています。

大昔の目の肥えた貴族だけが芸術を楽しんだ時代ならいざ知らず、今のお金を出す人は貴族ではなく無学な一般大衆です。

大衆は絵の芸術性など知りませんし知る必要も感じていません。だから絵がどんなに優れようが関係ないのです。(※あくまで商業的には、です)

例えばSNSで10万人のフォロワーがいる人が描いた絵は、商業的に見ると絵そのものに価値はあまりなく
「10万人のフォロワーを持つ人が描いた」という点に高い価値を見出されています。

10万人フォロワーがいれば、質が確保されるだろうとか、あるいは沢山の人に見てもらいやすい、宣伝に使いやすいなどの思惑があるかもしれません。

いずれにしても、絵そのものではなく、「10万人のフォロワーを持つ人が描いた」点に価値が寄ってきます。

中には、純粋に絵が好きで何十万円と出す人はいるかもしれません。しかし相手が商業目的の法人なら、そう考えることは稀です。

画商の世界でも、残念ながら目の肥えた人は購入者にそう多くありません。
なぜコピー描写されたピカソの絵は、本物のピカソの絵の億分の1の価値もないのでしょうか。画材も技法も技術もほぼすべて同じに造られていて、鑑賞するだけなら、少なくとも一般人の目では真贋すら分からずどちらでもいいはずです。

それはピカソの絵が優れているのではなく、ピカソが描いた絵だという点に価値があるからです。

ようは絵の来歴、過去、ストーリーなどに高い価値が発生していて、絵そのものは価値がないのです。

もしこれがクルマなら、まったく同じ性能の品でも同じ価値を持ちます。というかクルマというのはそうやって作られています。

最初の試験車だけが価値がありそれ以外は値付けしないと1円。ということはありません。絵はそうではありません。絵の価値は絵そのものではなく、付加価値によるものだからです。

価値がないものを売るための技術

なぜピカソの絵が高いのか。それは来歴やバックグラウンドに高い価値があるからです。

投資家や購入者は、多くの場合ピカソの本物であるということを自慢できたり、あるいはより高い価格で売れるから購入します。

ただの水を100万円で売るとしたら、そこに宗教性や希少性、ストーリー性を持たせてレアリティを持たせることができたら売れるかもしれません。
そうやって成功したのが石やツボを何十万円で売る宗教です。

絵でそういった騙した販売をしろということでは決してありません。
ただ、絵を売るというのは、無価値な石に値段をつけて売ることを意味しているのは確かです。

もちろん絵の質によって値段は上下することもありますが限界があります。
しかし幼稚園児が描いたような絵が何十万円と値付けされることはあります。

なので質以外の何かを付加して、あなたは絵を売る必要があります。

何が付加になるのか

こちらに記載した通り、絵の購入者は何等かの目的があり、目的に沿った内容を最も適格に熟しているものが選ばれます。

もし狙っている案件がすでにあるなら、案件ごとにその案件に最も合致している絵は自分のものだ、と過去の実績などを示しつつ相手に提示します。

この場合、付加価値となるのは「過去の実績」や「案件への条件合致」です。
だからこの場合、最も自分で上手いと思った絵を提示するのではなく、相手が求めているジャストな内容を提示し、時と場合によっては自分の最高傑作ではなく、あえて画力やレベルを劣化させて提示させる必要もあるでしょう。

では上記と異なり、案件提示がなく自分から大衆に向けて販売するにはどうすればいいのか。
これは実は非常に難しいです。やっていることは画商に近いからです。

一般的にこのやり方は、あなたの絵に投資的付加価値がないとできません。
ようは「この絵を持っていることで自慢できる」「将来的により高い価値で他の人に売ることができる」という条件が必要です。

だから元から知名度が高い芸能人の下手な絵は、無名の最高に上手い絵よりも価値がずっと高くなります。

簡単に言えば「あなた自身の価値を高める必要がある」となります。
あなた自身の価値は、別に絵じゃなくてもよいのですね。

もっとミニマムな世界でも、例えばSNSで「憧れの絵師」になること、なるためには沢山の賞を得たりSNSでバズったり、ピクシブあたりで毎回上位でも構いません。

より多くの人から「憧れ」を受けると、その分だけあなたの価値は上がります。

ただミニマムな世界では、その界隈の外では無名無価値となってしまうことがあります。

このギャップから「私はXでフォロワー20万人いるのに、なんで企業は私を選ばないの?」ということも起きます。
Xに関連しない仕事だったなら、その絵師さんの絵の価値は途端にゼロに戻るからです。

身近な付加価値

案件を探したり、画商の真似事をするのは、いささか高すぎる目標だ。
そういった方、特にSNSでミニマムで絵を販売している半分趣味みたいな方はどうすればいいか。

まず手っ取り早いのは、そのSNSやコミュニティ相手だけに商売するならそのSNSでのフォロワーや名声を高めればそれだけでも付加価値になります。

絵が上手い必要もなく、絵でフォロワーを集める必要も究極言えばありません。(下手ならさすがに売れないと思いますが)

次にやりやすいのは「ターゲティングと需要予測」です。

簡単に言えば相手のことを考える。に尽きます。

絵は売れない時代ですが、買う人もいるのは事実です。
買ってでも絵が必要な場所はどこか探ります。具体的に生成AIやらコピー、既存のイラストやフリー素材が使えないけど絵が必要な場所です。

そんなところあるのか、と思いますが例えば自治体刊行の観光案内冊子とか、教科書とか、生成AIで出力されないような絵柄が必要な場面などです。
例えば週刊誌の漫画は生成AIで作ることは難しいでしょう。漫画家が手書きする必要があります。

重要な書類や提案書を作るときの図解を交えたイラストも、都度作成する必要があるかもしれません。

こうした「絵をその都度描かないとならない場面」を想定し、それに合わせたポートフォリオと提案資料を作れば、注文は増えるかもしれません。

以上は、あくまで例です。

実際に、絵の市場はすべてを生成AIや既存のイラストで賄うことは現実不可能です。
どうしたら自分の絵が売れる余地があるのか。考えるだけでもターゲットは明確にできるかもしれません。

あなたの絵の価値は高くありません。
しかしあなたの価値は無限大です。

絵があなたの価値になるのではなく、あなたが絵の価値を生んでいるのです。


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