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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2020年10月の記事一覧

イソップ寓話集

イソップ寓話集

時空の隔て イソップ(英語名)は、前6世紀のギリシャの寓話作家でギリシャ語名はアイソポスと言います。幼いころ誰でも耳にした寓話のいくつかはイソップにより語られたものでしょう。

 日本へは16世紀末にキリシタン宣教師によってイソップ寓話集のラテン語版がもたらされ、1593年(文禄2)、「イソポのハブラス」(天草本伊曽保物語)として出版されたものが翻訳物としては最初とのことです。その後、江戸初期以来

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絵のない絵本 (アンデルセン)

絵のない絵本 (アンデルセン)

 普通よく手にする本とは全く感じの違ったものを読んでみました。
 私も遥か昔、いくつかのアンデルセンの童話は読んだのですが、しばらくぶりのアンデルセンです。

 形式は、若い絵本作家に月が語る33の短編集です。
 内容は、童話というより、(童話的な書きぶりではありますが、)アンデルセンの体験に基づいたエッセイ集のような趣きがあります。
 心優しい話もあれば、私が読んでも結構シビアなものもあります。

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君主論(マキアヴェリ)

君主論(マキアヴェリ)

プレゼンテーションとしての「君主論」 「君主論」は、1515もしくは1516年、マキアヴェリが政治生活への復職の期待をこめて、フィレンツェの最高指揮官職に昇ったロレンツォ・デ・メディチに献呈したものと言われています。
 いわば、彼自身の売込み企画のプレゼンテーションツールでもあったわけです。
 そういう観点からこの「君主論」を見てみると、プレゼンテーションとして非常によくできた分かりやすい構成にな

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数学的思考 (森 毅)

数学的思考 (森 毅)

 先に芳沢光雄氏の「数学的思考法」という本を読みました。
 今回の森毅氏の本は、タイトルとしては「法」が取れただけの一文字違いなのですが、取っつきやすさという点では大いに差がありました。

 この本を理解するには、ある程度の高等数学の知識と最低限の数学史の素養は不可欠です。(私の場合、その双方とも不足していたので難渋しました)

 ひょっとすると数学の専門家からみると、お二人とも本質的には同じ趣旨

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晩年に想う (アインシュタイン)

晩年に想う (アインシュタイン)

晩年に想う (1) (p37より引用) あらゆる個人が、自らの内に潜んでいるかもしれない天与の才能を、発展させる機会をもたねばならない、ということです。このようにしてこそ初めて、個人は正当に享受すべき権利のある満足を得ることができます。またそのようにすることによってのみ、共同社会はもっとも豊かな繁栄を達成することができるのです。・・・
 我々が個人や諸集団のあいだの差異に寛大であるばかりでなく、ま

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数学的思考法 (芳沢 光雄)

数学的思考法 (芳沢 光雄)

必然の「ひらめき」 以前大変お世話になった(今でもお世話になっている)方が紹介されている本なので読んでみました。
 実は、私も従来からこの手のテーマに関心をもっていたので、森毅氏の「数学的思考」という本を読もうと思っていたところだったのですが、こちらの本の方がいつも行く図書館にあったので・・・

(p58より引用)・・・「運がよかっただけです」というコメントになるのだが、実際には日頃から特段の試行

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福翁自伝 (福沢 諭吉)

福翁自伝 (福沢 諭吉)

 福沢諭吉と言えば、100人のうち100人、人間の自由・平等・権利の尊さを説いた「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」という超有名フレーズを思い浮かべると思います。

 このフレーズで始まる「学問のすゝめ」は、諭吉が壮年期に著した十数分冊からなる著作で、一説によると340万部以上売れた当時の大ベストセラーだったようです。

 今回読んだ「福翁自伝」はその諭吉の晩年の著作(明治三十二

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氷川清話(勝 海舟)

氷川清話(勝 海舟)

方針を固定するな 幕末から明治にかけて活躍した勝海舟の談話を取りまとめたものです。
 今流のまさにBlogのような体裁・内容で、海舟の率直な思想・評論が面白く語られています。

 巻末の解説にもありますが、世に出ている「氷川清話」は吉本襄によるものが流布している、ただ、その内容は吉本襄により(彼のスケールで)勝手にリライトされているところが多く、それの是正版でもあるとのこと。その是正箇所を本文の注

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あらすじで読む日本の名著 (小川 義男)

あらすじで読む日本の名著 (小川 義男)

 買ってまでして読もうとは思わなかったのですが、図書館の書架でたまたま見つけたので手に取りました。
 賛否両論(否の方が圧倒的に多いのですが、)ある「あらすじもの」です。(私にとっては、先に「世界の名著」という本を読んでほとんどついていけなかったリベンジでもあります)

 論説文とかであれば、その論旨をコンパクトに理解するという目的での「ダイジェスト版」はそれなりの意味があると思います。しかしなが

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日本史世界史同時代比較年表(楠木 誠一郎)

日本史世界史同時代比較年表(楠木 誠一郎)

 歴史というと時間軸を基本に整理されるのが通常で、中学高校においても、基本的には過去から現代という “時間軸” の流れに沿って教えられています。
 が、「○世紀の世界」とかという “空間軸” での切り口で、その当時の世界地図(世界史地図帳)を俯瞰する(同時代の別空間を一覧する)と、意外に思うことや改めて気づくことが結構あります。
 たとえば、紀元前、欧州と比較した時の西アジアの先進性とか、近代の米

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世界の名著(河野 健二)

世界の名著(河野 健二)

 「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか ニ、ニ、ニーチェかサルトルか みーんな悩んで大きくなったー♪」
 この本を読んでいる最中、何度もこのフレーズが頭の中で流れていました。ご存知の方は少ないでしょうが、遥か昔(1976年(昭和51年))、一世を風靡した野坂昭如氏のサントリーのCMソングです。

 ともかく誰でも(タイトルぐらいは)知っている超有名本の紹介集です。
 が、哲学系の著作の解説は、私にとっ

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論語の読み方(渋沢 栄一)

論語の読み方(渋沢 栄一)

総論 まずは編者・解説が著名な地球物理学者である竹内均氏であることが(私にとっては)驚きの本でした。
 竹内氏は1981年大学を退職された後、科学雑誌Newtonの創刊者・編集長として、難解と思われる科学を広く一般の読者に身近なものとすることに尽力されました。

 その竹内均氏の手によるためかもしれませんが、内容は非常に平易な印象です。ひとつひとつの項について詳細な解釈が記されているものではありま

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私の個人主義(夏目 漱石)

私の個人主義(夏目 漱石)

 今から15年以上前のBlogの再録です。

道楽と職業 今から20年以上前の学生時代に読んだ本です。
 今までも何度か読み直したいと思っていたのですが、ようやくリバイバルです。

(p19より引用) 自分のためにする事はすなわち人のためにすることだ。・・・それをちょっと数学的に言い現わしますと、己のためにする仕事の分量はひとのためにする仕事の分量と同じであるという方程式が立つのであります。・・・

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不道徳教育講座(三島 由紀夫)

不道徳教育講座(三島 由紀夫)

 三島由紀夫氏としては珍しいエッセイ集です。
 昭和33年(1958年)「週刊明星」に連載されたものとのことです。当時、三島氏は34歳。壮絶な最期を遂げるおよそ10年前の作品です。

 私は三島氏の作品(小説)はほとんど読んでいないので、氏に対しては極々一般的なイメージしか有していません。小説の面では、端正な厳しい筆致の作家だろうと漠と思っている程度です。
 したがって、このエッセイに映される三島

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