【ボカロ紹介】ボカロで性の在り方について考えさせられるとは
というタグがnoteで募集されているのを見て。
「勝負曲」とはちょっとニュアンスがちがうかもしれないけれど
ここ最近グッときた曲を、せっかくだから紹介します。
※個人的な解釈が含まれます。公式な見解ではないことをご了承ください。
曲名【ヴィラン】
ボカロPであるてにをはさんが作詞作曲。
歌うのはボカロ曲の名曲「シャルル」などを奏でたボーカロイドのflower。
新しく何かを知るきっかけというのは、ほとんどが偶然だと思うのだけれど
これも例から漏れませんでした。
私の好きなコンテンツ、「ツイステッドワンダーランド」(ディズニーのヴィランモチーフのキャラクターたちが登場するゲーム)の二次創作動画で使用されていたのがきっかけで。
最初は具体的に歌詞を認識しておらず、メロディに好感を持っていました。
音楽に明るくないので、申し訳ないことに「ここがこう…」と細かい説明はできないけれど、とにかくそれをきっかけに、本家の方の動画も視聴することにしました。
検索して、真っ先に表示されるサムネイルは、この(↑)儚げな少年のイラスト。
パッとみた第一印象では「わぁ~美少年!」と不純な気持ちが湧きまくりだったのだけれど…
よく見ると
頬に痛々しい応急処置の跡。
水色のメイク?はまるで唇から出た血と涙のよう。
さらに頭を抱えているという動作。
なのに、彼の口元は笑っている。
どうしてそんなちぐはぐな状態に?
関心を持つもちろん、そのイラストからにじみ出る切なさに既に引き寄せられました。
イラストを描いたのは、ねここさんという方。本当にありがとうございます。
動画を再生すると、第一声が
「きっと手を繋ぐだけでゾッとされる」
という歌詞と、顔を覆う少年。
いやいや…、どうしてそんな…。
いじめにあっているのだろうか、それとも恋の歌?
そもそも、「ヴィラン」とは「悪役」という意味だけれど
こんなに苦しそうな、むしろ被害者っぽそうな貴方のどこが悪役なの?
…と初っ端からおせっかいおばさんの如く気になってしまう展開。
しかし、一通り動画を視聴して、さらに歌詞を読み返して、その意味がわかりました。
これはきっとトランスジェンダーの恋の哀歌なのだ
特にそれを伝えてくれたのは、サビの部分。
Mr.Crazy Villain Villain
夜行性の花弁
違う服着て君の前では男子のフリする
男子のフリ…ということは、本当の彼…いや彼女は「男子」ではないのでしょう。彼女の着ている、一般的には男子生徒が着るはずの学ランが、その事実を隠し続けていることを物語っています。
序盤の「きっと手を繋ぐだけでゾッとされる」というのはきっと
「同性の友達」として繋がっている「男友達」に抱いた、恋心をあらわしたもの。
出会ったときからずっと「男友達」に見せていた自分は本当の自分ではないけれど、それを見せてしまったら離れていってしまうだろう…。
この歌詞を含めた様々な箇所で
そんな葛藤が、痛々しく伝わってきます。
イラストでは、途中、赤と青が反転した信号機
つまり「青(安全)」が「とまれ」で「赤(危険)」が「すすめ」となっている信号機があり、それも「全てを壊してしまわないように、行動を起こすな」という自分へのメッセージなのではないか…。
この曲名はなぜ「ヴィラン」なのか
さらに辛いのは、なぜこの曲名が「ヴィラン」なのかを考えたとき。
先ほどのサビは、こう続いていました。
拝啓 Dr.Durand-Durand
迎えにきて下さい
顔も知らない誰かにとって僕はもうヴィラン
Dr.Durandとは、「バーバレラ」という漫画・映画に登場する、世界を壊そうとするヴィランなんだそう。(Wikipedia調べ)
彼女は「男と女」「男は女と、女は男と結ばれる」という強固な一般論を壊してほしかったのかもしれない。
でも、こんなことを考える自分は…
「男」「女」どちらにも分類されない自分は…
一般的な恋ができなかった自分は…
顔も知らない誰かにとって、つまり世間や社会にとっては、悪者であると…。
感想:切ない、つらい、でも聴いてほしい
…こんな辛いこと、あります……??
恋愛感情とか、自分の望む立ち振る舞いとか、一般には社会で自由に認められていいはずのものすら、認められなくて。
それを近しい人に相談したくても、したら自分の存在ごと拒否されそうでできなくて。
本当はそんな世界いやだ!って思っているけれど、どうしようもできなくて、自分が世の「悪役」であるんだと受け入れてしまっている…。
特に、ラスサビでは主人公が学ランをなびかせながら
先ほどのあべこべな信号をマイクにして
大きな口で笑って歌っているのです。目元に涙のマークを残したまま…。
私自身はトランスジェンダーにも、同性愛者にも該当しない、多数派な存在なんですが。友達には少なからず、色んなかたちの性的マイノリティーの人がいて。
彼ら、彼女なりの苦しみの話を聞くこともあるし、それはとても辛いことなんだと伝わってはくるんだけれど、申し訳ないことに全てを自分事のように受け止めきれるわけではない。
それに、私はたまたまそういった友達がいたけれど、中には「自分の周りにマイノリティがいたことはない」という人もいるはずだし。
まして、未だにマイノリティの彼らを揶揄したり差別したりする人もいる。
人というか、国全体がそんなかんじだったりする…。
これまでのはあくまで私の解釈なので
この曲が本当に伝えたいメッセージとは違うかもしれないし
マイノリティ当事者でもないので
彼らの気持ちを代弁できるわけでもないけれど
この曲に少しでも多くの人が興味を持って、性的マイノリティの問題はもちろん、今の社会の「性」の偏った在り方ついて気づいてくれたらなぁ…
未だに多様な性やパートナーシップ制度を認めない政治家のお偉いさんたちも、この曲を聴けば良いのに…(聴いても意味がわからないかもしれないけれど)
なんて、思ったりしています。
今日のnoteはさらっと書くつもりだったのに、
思入れのある曲だったせいか想像以上の長文になってしまいました…。
気が付いたら執筆から1時間以上。好きなものについて書くと時間が過ぎるのが早い…。
これからも、たまには好きなもの紹介したいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
良かったら、上のリンクから視聴してみてくださいね。(歌詞もリンクに書いてあります)
野乃
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