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記事一覧
新しい書き手に(一)
自分が初めて小説らしきものを書いたのは1992年5月。16、7歳だった。「幻想」という原稿用紙6枚の掌編。筋書きは「可愛い女の娘」が描きたいひきこもりの高校生が想像どおりの絵が描けずに鬱憤を溜めて夜の路上で強姦するというしょうもないものだ。当時は大友克洋『ショートピース』『ハイウェイスター』(共に1979)に心酔し、おそらく土田世紀『未成年』(1988)の影響下にあったのだろう。いまだ三島由紀夫、
もっとみる5月と9月のイベント
今週の土曜は東大の五月祭、日曜は文学フリマ東京へ出没予定。日々文学フリマの準備に追われている。春の新刊は2点。東北と伊藤計劃の冊子だ。が、SNSではvtuberだ、VRだ、アニメ批評だと先端の文化を扱う本が注目されている。むろん弊誌は売上度外視の活動である。今回の印刷代は計6万円程だ。各頒価1000円。元は取っておきたい。
ところで特集のテーマでかなり難儀した。老後の預金を切り崩して資料を揃えてい
年末年始日記 2023→2024
あけましておめでとうございます。旧年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。始業・学業・生活など常日頃の生業お疲れ様です。気候不順な折り、体調くれぐれもご自愛ください。さて、簡単ではありますが、年末年始を振り返ります。ご笑覧ください。
12月28日(木)
早朝3キロ歩き、松屋でカルビ定食。精文館書店にて『SFマガジン』『ケヤキブンガク』『文藝別冊 総特集望月ミネタロウ』購入。ゲン
culture against apartheid
今朝『ソクラテスの弁明』再読を終えた。初読は1999年。24年ぶりだ。当時は通信制大学で学んでいた。西洋哲学基礎購読のレポートの課題図書だったと思う。担当講師は田之頭教授だった。教授は祖師谷キャンパスの夏期講習でギリシア語を勉強しないかと誘ってくれた。意欲はあったが受講しなかった。1999年アラファト議長は存命だった。同年10月アラファトPLO議長兼PA長官はパレスチナ支援調整会議出席。アラファト
もっとみるスキマ時間のなまくら流ずぼら派ブログ
日常的なツイッター利用に疑問を覚えた。自分はいわゆる「ツイッターくん」「報告くん」の典型だったのではないか。日常ツイートへの違和感の始まりは自己開示の羞恥心と共に、日常生活の崩壊があったと思う。かつての『世にも奇妙な物語』の白石麻衣主演回が思い巡る。田舎の冴えない事務員がSNSでキラキラOLを装い、広く人気者になるが、次第に虚偽虚飾がエスカレートして悲劇的な終幕へいたる怪奇譚。むろん拡大誇張のスト
もっとみるアニメルカとREBOXならびにいくつかの感慨
複合的な理由でツイッター運用を自重中だ。「コンテンツと向き合うため」「公人ではなく私人に留まるため」「英語学習のため」など挙げれば切りがない。日常ツイートしない効用は本が読める、テレビが観られる、アニメが観られるなど。
『ソクラテスの弁明』(岩波文庫)再読は佳境。残20頁程。印象的な文章は「それは無技巧に思いつくままに漏らされる言葉である」(p16)、「なかんずく私の最も当惑するのは、ただその中に
フィギュアのホスピタリティ
ブックオフ岡崎店へ行ってきた。先月の文学フリマ東京後、ブックオフ行脚がぶり返した。あまりに捲んで土岐市の久尻神社へ逃避行したほどだ。11/12とよたブックマーケットが開催された。ぜひ参加したかったのだけどその日は東京にいた。ブックマーケットの参加費は1500円。鞍ケ池公園の一区画を借り受け、古本屋や同人誌の販売ができる。今年4月の豊田三越では一箱古本市が行われた。こちらは参加費500円で蜜柑箱一箱
もっとみる文学フリマ東京36レポート(1)
5月21日開催の文学フリマ東京36に出店のため上京した。年初の開業で蓄えを使い果たし、2月に胃腸を患い、這う這うの体なので東京行きは自重のつもりだった。だが、120部刷った新刊が会場へ宅配搬入されず、自宅へ届くという信じられないミスを犯した。東京には実兄が住んでおり、イベントの売り子を頼んでいた。自宅へ冊子が届いたのはイベント開催3日前。すぐ宅急便で配送すれば兄のマンションから会場へ直接搬入できる
もっとみる陸の孤島・豊田市でミニコミを出すということ(『模索舎月報』2009.12)
世界のトヨタ、だが豊田は陸の孤島と揶揄され、頑張っているが文化不毛の地・名古屋よりもっと酷い実益の企業城下町ときた。
私が"文芸アンダーグラウンド宣言"という少々大げさな創刊の辞を掲げた「メルキド」は、東京から帰郷した27歳にもなって学生風情のまま、およそ2年後の2004年7月に*さんという岐阜のトヨタ系会社員の男性とともに、豊田で発行した。
「メルキド」という命名の由来は、そもそも早稲田文学新人
高橋源一郎と阿部和重の未来
来夏刊行予定の新書の準備を進めている。初単著なので要領を得ない。とはいえ同人誌だから気楽なものだ。今日は第一章の冒頭に追記した。勢い任せの文章になった。後日精査しよう。
ダブリンに生まれ、ヨーロッパを流浪したジェイムズ・ジョイスは「失郷者」だという。企業城下町の豊田に生まれ、東京で挫折した私は同人サークルの初めての文章を「失郷者たち」と銘打った。郷土愛を抱けず、恋人を持てず、甲斐性なしの私にうっ
記録せよ、と彼女は言った
2023年1月12日
元旦のトルストイ「イワンのばか」から小説をほとんど読み終えていない(同人誌のゲラなどは除く)。取り組んでいるのは泉鏡花「龍潭譚」とディック『時は乱れて』。両作は対照的な文体だ。かたや雅俗折衷文体の観念小説であり、かたやアメリカの風俗をふんだんに取り込んだSF。その間論考は三点(平倉圭『ゴダール的方法』序章、三千周介「なかやまきんに君の記憶喪失」ぬかるみ派、河中郁男「流れの外に