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文学フリマ東京36レポート(1)

5月21日開催の文学フリマ東京36に出店のため上京した。年初の開業で蓄えを使い果たし、2月に胃腸を患い、這う這うの体なので東京行きは自重のつもりだった。だが、120部刷った新刊が会場へ宅配搬入されず、自宅へ届くという信じられないミスを犯した。東京には実兄が住んでおり、イベントの売り子を頼んでいた。自宅へ冊子が届いたのはイベント開催3日前。すぐ宅急便で配送すれば兄のマンションから会場へ直接搬入できる。とはいえ兄ひとりが自力で持ち込めるのはせいぜい50部までだろう(兄はスーツケースを持っていない。)そんなに売れることは見込めないが、念のため自分が30部ほどスーツケースで直接搬入することにした。その旨をLINEで伝え、50部をさっそく宅急便で兄へ送った。むろん旅の準備はしていない。髪の毛はボーボーで、歯科医でクリーニングもしていない。いまから美容院と歯科医の予約を取るのも億劫で止めた。
ミス発覚後の翌朝、もうひとつの冊子で脱字を2ヶ所見つけた。数日前明らかな事実誤認に1ヶ所気づき、正誤表を作成した。しようがないので正誤表を作り直した。作図した用紙を切り分けるために文房具店でカッターとカッティングボードを購入。50枚ほど作成し、クリアファイルに挟み、リュックサックへ入れた。旅の荷物は最小限に抑えた。だが、文学フリマにはエリーツの滝本竜彦と佐藤友哉がやってくる。既読本にサインをしてほしい。滝本の『NHKにようこそ!』(角川文庫)と佐藤の『ナイン・ストーリーズ』(講談社)をリュックサックに詰め込んだ。ワクワクが止まらない。とはいえ問題は体調と旅費だ。4月に市内の胃腸科で胃カメラを撮影し、ポリープがひとつ見つかった。その診断結果をまだ受け取っていない。今週来院予定だったが、勘違いで休診だった。検査前、緊急を要する場合は即電すると言われた。幸い電話はない。おそらく癌などの悪性ポリープではないと思う。素人の予断に過ぎないけど。来院は文フリ後にした。お次の問題は旅費だ。これは存在を忘れていた2021年に作った通帳が発掘されたことで解決した。口座から数万円卸し、定宿の予約を取り、旅の手筈は整った。
イベント当日の21日朝5時に起床した。最寄り駅から6時半の電車で出発。私鉄からJRへ乗り換え、8時台の新幹線こだま号へ飛び乗った。駅ホームの自販機で「うずらサブレ」を買い、車内でもぐもぐ食べた。品川駅までは2時間程度かかる。ポータブルプレイヤーを忘れた。イヤホンも忘れた。本は滝本と佐藤のサイン用の2冊だけだった。しようがないので売り物の冊子をぺらぺらと繰った。富士山はあいにくの曇りのため見えなかった。22歳のとき大検合格を富士山に誓った。見事合格した。それ以来富士山に願掛けするようになった。とはいえ見えない富士山には願掛けはできなかった。穏やかに無駄な時間が流れた。自分の隣はずっと空席だった。熱海で親子連れが座った。若い母親と小さな子供3人。母親はひとりずつ子供を座らせて弁当を食べさせた。子供たちが一生懸命に弁当をかっ食らう光景は清々しい。生命力を感じた。自分の朝ごはんはおにぎり2個だった。親子連れは終点の東京まで乗るようで自分は手前の品川駅で降りた。直で会場へ向かった。モノレールの流通センター駅には先に兄が待っていた。リュックサックとバッグふたつの出で立ちだった。並んで出店者入場した。設営準備にとりかかる。腹が減っていた。文フリにはカレー屋がいつも出店していた。今回も食べられるだろうか。いや忙しくて昼は抜きになりそうだ。駅で買ったうずらサブレは2個残っていた。12時文学フリマ東京36は開場した。

ー(2)へ続くー

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