德永 紘一/德永農園
バンドマンから農業へ!ラジオパーソナリティーと夢が実現
■プロフィール
音楽の専門学校を卒業後、バントマンからアパレル店の店長、IT企業の会社員まで、さまざまなアルバイトや職業を経験。
2009年、大牟田市の農園で柑橘の収穫アルバイトをするうちに、仕事ぶりが認められて入社。ベビーリーフ、リーフレタスの水耕栽培などの新規事業を立ち上げる。
3年間勤めた農園を退職して、2012年6月、德永農園を設立し、農薬や化学肥料を使用せず、30〜40品種の露地野菜の生産を始める。2016年からは八女市のコミュニティラジオ局「FM八女」でパーソナリティをつとめるようになったことがきっかけとなり、地元イベントでの司会やミュージシャンとしての出演の機会が増える。
2018年には、大手新聞社が主催する「毎日農業記録賞」にて優秀賞を受賞。他にも子供たちと一緒に育てた野菜を大牟田動物園の飼育動物たちに食べてもらう「そだてる あにまる べじたぶる」という食育企画をはじめ、子ども食堂などへの食材の提供や農業を通じた高齢者のリハビリや引きこもりの人の自立支援・社会復帰といった農福連携の活動にも力を入れている。
2023年8月からは福岡のFMラジオ局FM福岡で、農をテーマにした番組『農家のラジオ』をスタート!スポンサー探しから番組の企画や出演者交渉まで全般にわたって関わるなど、農家の枠を超えてマルチに活躍中だ。
■農業を職業にした理由
プロのミュージシャンを目指してさまざまな仕事を経験したが、夢が叶わず、地元の企業に就職。葛藤を抱えながら仕事するうちに体調を崩し、退職に至る。病気の療養中に祖母の家庭菜園を手伝ううちに、野菜作りに興味を持つようになる。
2009年には、地元の大きなミカン園で収穫アルバイトを経験したことが縁で入社し、柑橘類の栽培の手伝いや、葉物野菜の水耕栽培の事業を任されるようになるが、東日本大震災や祖母の入院をきっかけに、責任持って自分が育てた農作物を食べてもらいたいと独立就農を志すようになる。
2012年当時は、新規就農を目指す人向けの情報や支援制度も少なく、農業委員会を何度も訪ねて、農家として認められるには「3,000㎡の農地が必要」だけれど、「農地のやりとりは農家にしか認められない」と言われて、半年間かけて親戚や近隣から耕作放棄地をかき集め、德永農園を設立。
「他の生産者と同じことをしていては生き残れない」という考えで、珍しい野菜や背景にストーリーがあるものを中心に少量多品目で栽培している。かつて、マルシェに参加を申し込んだ際、主催者から「農家はオシャレじゃないから」と出店を断られたことに発奮して、従来の農家のイメージを払拭するような農家を目指して、作業中も日焼けへの対策をはじめ、イベントでの販売時は、衣装や商品の陳列にも力を入れている。
■農業の魅力とは
マルシェの主催者から「農家はオシャレじゃない」という理由で出店を断られたことがきっかけとなって、一般的なイメージを覆す農家を目指すようになりました。
ミュージシャン(エンターテイナー)を目指していたこともあって、販売時に「あなた本当に農家してるの?」と、ギャップに驚かれるのが、自分の喜びにつながっています。
就農当初は、両親に高い学費を払ってもらって音楽の専門学校を卒業したり、アパレルの販売をしたり、IT企業に勤めたり、自分の人生は無駄ばかりだと思っていました。
しかし農業に出会って、ラジオのパーソナリティーを始めたことがきっかけで、「お野菜農家の德永」が多くの人に知られるようになり、イベントに招かれて歌ったり、700人の観客を前にした舞台での客演や、講演などの機会に恵まれるようになりました。
最近は地元高校のホームページのコンテンツ管理や更新などの仕事も受けるようになっていて、農業を始めたことで、これまで人生の無駄だと考えていたことが全て昇華されて夢が叶ったと思っています。
農業のスタイルは人それぞれで、栽培に専念することも、農業と何かを結びつけて新たな価値を生み出すことも、どちらも素晴らしいと思っています。 軸足を農業に置きつつ、誰もやってこなかった自分だけの新しい農業の形を目指しています。
■今後の展望
家族も応援してくれていますが、畑作業や販売は、だいたい私1人で行っています。
2016年から出演していたコミュニティFMを卒業し、2023年4月からは、広域エリアで聴いていただける民放局で新しい番組を始める予定なので、今後は法人化して雇用も視野に入れて考えています。
農業には「稼げない、危険、カッコ悪い」と3Kのイメージがありますが、やり方次第で食べていけますし、活躍の幅を広げていくことも可能です。
新規就農で苦労した経験があるので、農業を新たに始めたい人の応援をしたいと思っていますし、私と同じような悩みを抱えている人の相談相手にもなりたい…。
農業は、しっかり取り組んでいる人には、いつか必ず結果が伴うと信じていますし、私のようにさまざまな夢を叶えることもできます。「農家になりたい」「農業をやっていて良かった」「農業が楽しい」という仲間を1人でも増やし、"農業の新しい当たり前"を模索していきたいのです。
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