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400字程度で書かれた小説たち。ライフワークであーる。 2020年4月11日より2023年12月31日まで 「なかがわよしのは、ここにいます。」(https://nkgwysn.…
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#日記代わり

【400字小説】トレー

【400字小説】トレー

不思議に思っているのが、
水や空気を固めて持ち運んだりできないこと。
なぜ手のひらに収めてしようとするのに
できないんだろうって、ハヤオは考えちゃうよね。

ジローは当初、面白おかしく
ハヤオの哲学的疑問に対して
ウンウンと頷いていたのだけれど、
さすがにうざったくなっちゃった。

アルバイトで週に3日も会って、
その昼食中ずっと哲学されたもんじゃ、
たまったものではない。
今日もバイトの賄いをお

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【400字小説】頭

【400字小説】頭

難解なレディオヘッドが好きな19歳のマキコには、
まわりにそんな友だちはいなかった。
聴き始めたのは父親の影響で
『クリープ』に強烈な衝撃を。
中2の時だから早熟だったと言える。

父からCDを借りるのが照れ臭くて、
Spotifyが素晴らしいことを
家族にプレゼンして、加入にこぎつける。
それから全アルバムを視聴、まんまと泥沼に。
近くのTSUTAYAが潰れたから
サブスクにしておいて良かったな

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【400字小説】五輪

【400字小説】五輪

長野五輪、他人事で済ませていた
ヨシイは、長野県民なのに。

1998年、開催年だけは言える。
でも、誰が活躍したのかは
リアルタイムでは知らなかった。

あまのじゃくでテレビも持っていなかった、
当時、一人暮らし。
NHKの受信料を徴収されるのを拒んでいた。
実際、テレビ見てなかったんだもの。
それで徴収に来るおじさんと
喧嘩になることがあって、
仕方なく彼女のキヨミヤが間に入って、
白黒テレビ

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【400字小説】棒

【400字小説】棒

昨夜、深い2時までSTAND FM.聞いちゃって
頭がボーッとしている。
気晴らしのために聞いていたのに
やめられなくて、逆効果。

睡眠が大事なのは身を持ってわかっているつもり、イズミ。
イケボに吸い込まれて聞き入り、
最後に時間を確認した
1時58分以降の記憶がない。

寝落ちしてしまって、猫の《ボーちゃん》に
起こされた、朝、5時。
もうスタエフはほどほどにしようって心に決める。

安眠棒っ

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【400字小説】夕方

【400字小説】夕方

大学のジャズ研究部に入ってからというもの、
スピリチュアル・ジャズにハマってしまった。
そんなヤナギダはサックスを50万円で買った、
2年生の夏に、バイトでコツコツとお金を貯めて。

なかなかのイケメンだったが、
恋人ができなかったのは当然だろう。
暇さえあれば音楽のサブスクリプションを
聴いていたからだ。

ところが気まぐれで友人と
夏に海に行った際、逆ナンされて、
まんまと恋に落ちて、夜の営み

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【400字小説】林

【400字小説】林

林のなかでハヤシくんがしていたのは不法投棄。
ブラック企業で働かされているハヤシくんに
とっては断りがたい仕事。
言いなり、投げやり、結局は思いやりが自分に足りない。
廃タイヤを軽トラックから何十本と下ろして、投げ捨てる。

入社して8ヶ月。
体重は12㎏痩せた。
蝕むように削られるメンタル、
思いっきり食べることだけが
ストレス発散方法。

相当食べているのに、太るどころか、
転がるように痩せて

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