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【400字小説】夕方

大学のジャズ研究部に入ってからというもの、
スピリチュアル・ジャズにハマってしまった。
そんなヤナギダはサックスを50万円で買った、
2年生の夏に、バイトでコツコツとお金を貯めて。

なかなかのイケメンだったが、
恋人ができなかったのは当然だろう。
暇さえあれば音楽のサブスクリプションを
聴いていたからだ。

ところが気まぐれで友人と
夏に海に行った際、逆ナンされて、
まんまと恋に落ちて、夜の営みも変わった。

年上の彼女に連れられてクラブへ行くように。
それがヤナギダとテクノ・ミュージックの出会い。
スピリチュアル・ジャズでしか感じられなかった
自由と恍惚感をテクノから得ることができた。

ジャズと違ったのは、
スピーカーから飛び出す低音の
規則正しいリズムを
空気の振動と共に感じられたこと。

毎週末、夕方になると早くクラブに行きたくて
ウズウズしたのは、セックスの前戯の
それと変わらなかった。
サックスは大事に押し入れの奥で埃を被っている。

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