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#詩
【400字小説】位置
フロアに流れるパトリス・クインの
極めて上品な歌声に酔いしれるオワリは、
今夜を最後に酒で酔わないことを
皆の前で明言。
早速「いくら賭ける?」とか
茶化す声が終演後のライブハウスに飛ぶ。
「太ってるっつっても、オワリは
そんなでもないじゃん!」と矢継ぎ早に。
言い返す隙がないほどに反対の声が飛び交う。
皆、楽しい飲み仲間を失いたくないらしい。
バンドで演奏することはもちろん楽しかったのだが、
【400字小説】水溶性
雨がカラカラ降ってる。
「東京って砂漠なの?」と
ミイコはひとりで呟いて、誰も居ない部屋で。
恋人はもともといない。
8年もいない。
YouTubeでヨガをやろうとスマホを持つ。
でも突然イラついて、それを壁に向かって投げた。
マイルス・デイヴィスのポスターが破れかけてる。
心は壊れかけのRadioな世代。
もうとっくに結婚もできないだろうし、
諦めたくはないが恋人だってできないだろうし。
に
【400字小説】軍配
今時の小学生は相撲を取らない。
ゴジョーが幼かった頃、学校に土俵があったものだけれど、
怪我の元になるからって、いつの間にか廃滅。
それが寂しかったゴジョー。
だから体育の授業で子どもたちに相撲を教えたいと
職員室会議で提案したのだけれど、肩透かし。
「いい提案だけれど、こんなご時世じゃね~」と
正攻法でかわされて。
つっけんどんに突き返されなかっただけマシか。
ご当地力士・縞乃山は三役常連だ
【400字小説】医学
「こんな仕打ちってあるかよ」とノゾミは
認知症と診断された父のことを思って泣いた。
コロナ禍に大腸がんになって摘出したと思ったら、
1年後に肺にがんが転移して、また手術。
痛い痛いと言っていた術後の
父の弱々しさを見なかっただけ良かった。
そして、やっと体調が落ち着いてきた矢先の今回。
「これからはMDの時代だぞ」と
たった5年前に言っていた頃の天然さとは
比べ物にならないくらいの重量感で、
現