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特許法32条 特許を受けることができない発明

 特許法32条は、実務上は殆ど接することのない拒絶理由と思います。

 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生(公序良俗等)を害する発明に特許を与えると、公序良俗等を効果的に害することになります。特許法32条は、このような発明は特許しないことにして、日本の公序良俗が損なわれるのを防止することとしています。

したがって、公序良俗等を害するおそれがある発明は、公益の観点から、特許を受けることができません(32条)。この「公序良俗等を害するおそれ」は、「明らかに」「害するおそれがある」必要があります。

 審査基準には、特許を受けることができない発明の例として、
(1)遺伝子操作により得られたヒト自体(2)専ら人を残虐に殺戮することのみに使用する方法、が挙げられています。
 以前は、紙幣偽造装置とか、金塊密輸用チョッキとかの「明らかに該当する」ものが32条に該当するとされていました。審査基準の記載も時代の進歩に伴って進歩していると思われます。

審査基準によると、公序良俗に反するとされる例は以下の通りです。

a 不特許事由に該当する発明の例
 例1:遺伝子操作により得られたヒト自体
 例2:専ら人を残虐に殺戮することのみに使用する方法
b 不特許事由に該当しない発明の例
例1:毒薬
例2:爆薬
例3:副作用のある抗がん剤
例4:紙幣にパンチ孔を設ける装置 (真貨である紙幣の変造等による犯罪に用いられるとは限らない。)

この規定は、TRIPS 協定27条に沿ったものです。具体的には、TRIPS 協定27条(2)は、加盟国が「公の秩序又は善良の風俗を守ること(人、動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護し又は環境に対する重大な損害を回避することを含む。)を目的として、商業的な実施を自国の領域内において防止する必要がある発明を特許の対象から除外すること」を許容しています。しかし、同条(2)ただし書は、「その除外が、単に当該加盟国の国内法令によって当該実施が禁止されていることを理由として行われたものでないことを条件とする。」と規定しています。

このため、例えば、国内法令では使用できない装置(電化製品など)に係る発明であっても、実施は制限されますが、特許権は登録されうるといえます。

・特許法32条

(特許を受けることができない発明)
第三十二条 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

●参考情報
特許・実用新案審査基準 第5章 不特許事由(特許法第32条)

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