見出し画像

「やっちゃいけない」事を進めるICT教育計画。子供を守れない思想バグ。

タイトル画像:はしゃぐ子供、落ち込む子供、のイラスト

1人1台のPC、教室にネット環境を、という教育改革の話があちこちで行われてます。

この先予想される決定的に「怖い事」に誰も気付いてないような気がして、不安しかありません。

不安は誰でもある、でも明るい未来のために頑張ろう!的なご意見も見ます。

でも、ここまで予見される危険を誰も対策してない組織や仕組みが頑張っても、子供たちの安全を担保できますか?とますます不安になるばかりです。

今回、あまりに不完全な計画の数々に、かなり忖度しない言葉で意見を整理してみます。

極端な例に感じますか?

子供に最先端のマシンガンを教育に良いから、と渡したとします。1人1台。

先生たちもマシンガンを教室に入れるのは初めて。講習会なども開かれます。

有識者会議などもあちこちで開かれ、マシンガン導入による明るい未来をみんなで話し合ってます。

不安を訴える意見も出ますし、実際お試し導入で事故も起こります。でも、文科省の偉い人、マシンガンメーカー、割と派手なデジタル系のクリエーターなどの声に誰も反対を出せず、なし崩しに導入がどんどん決まります。

現場の先生は、慣れないマシンガンの取扱説明書と運用マニュアルに四苦八苦して、専門家のレクチャーを受けながらなんとか導入します。もちろん安全対策を子供に伝えることも忘れません。

しかし、子供の方がマシンガンの知識が豊富だったりします。注意喚起をいくらしても、子供達が勝手に使い始めます。

まずきっと大惨事がすぐに起こるでしょう。

マシンガンをPCに置き換えて読んでみてください。

なぜPCをマシンガンに置き換えたか?

----

マシンガンも、ある目的を持って作られた機械です。欧州の警察などでも採用されていて、「平和の維持」のために導入されています。

一方、それを使って他者の権利を侵す行為に及ぶ者もいます。もちろん戦争にも有効に使われます。

----

ここまで極端に感じられたかもしれません。この説明文ですら、PCに置き換えられるのです。

しかもPCの方がタチが悪いことに、免許も要らず、一見便利な「だけ」に見えるので、ある意味野放しで普及だけが急がれてる現実があります。

直接的な攻撃の道具とはもちろん違います。(MacBookの角で殴られたら危険ですが)

でも、使い方をそのように向ければ、社会的に人を危険に導ける道具でもあるのです。

何も対策のないPCは悪いことし放題

以前記事を書きました。

PCは学習に便利な面がある一方、サボることにも便利です。

後者の側面はすぐに使い方として広がります。そのため、後者の使い方をシャットアウトしない限り、「サボる事をしたい生徒はサボる」のです。

そのあたり記事にしました。

悪い事をする子供がいない理想的な世界は無い。悪い事ができる要素があれば必ず悪い事は起きる。

みんなが悪い事をしない世界。そんなものありません。

私も楽しい機械を渡されたら、自制が効かずに遊び倒してしまっていたかもしれません。

できる=やる、という子は必ず出てきます。

記事で週刊プレイボーイの事を例に挙げました。この雑誌は硬派な意見も載ってますが、セクシーなページもあります。硬派な意見が教育に役立つということで、生徒にセクシーなページは見ないように、と渡したら何が起こるか自明です。

PCは機械だけなら何もコンテンツが入ってないと認識されているようですが、責任放棄も甚しい。

ネットに繋がる環境とセットだと、ありとあらゆる教育に悪いコンテンツがセットされているのと同じです。

雑誌なら渡した範囲で済みます。でも、pcは無限に悪いコンテンツを引き寄せることができます。たった一つのキーワードを入力して検索をするだけのアクションで。

今回意見を言いたい施策は、設計思想が間違っているのです。

殺傷能力の高いツールをノーコントロールで渡す愚かさ

PC+ネット、というサービス全体は、リテラシーによっては大変危険な使い方ができます。

ポルノ、詐欺、集団での脅迫、侮辱行為、ギャンブル、際限のない利用。他人の権利を侵すことも簡単です。

世界中で使われているでは無いか、と思われるかもしれませんが、使っている人は自分でコントロールする事を求められて、それを承知で導入しています。

当然利用には自分の責任がつきまといます。それよりも利便性が上回っているので成立している「分かっている人が使える」世界です。

分かってない人に無条件で渡して、事件が起こった、と騒ぐのはあまりにも無策で低水準の運用に見えます。

子供はわかっていない、という前提が必要

そもそも、欲望と抑制、社会的な正しい振る舞い、が完全では無いのが子供です。

それを学ぶこともまだ途上なので、義務教育を受けている立場です。

そこに、

・面白い無制限のコンテンツ
・扇情的なキーワードですぐに見つかるコンテンツ
・社会性に未成熟なのに匿名に見えるやり取り手段
・自制しないといつまでも楽しめる仕組み

を渡したときに起こる「悪いこと」が見えてないのに渡すのは、子供を傷つけるだけです。

悪い事は必ず起こります。

大人が準備しなくてはいけないのは、実態を無視した理想ではなく、今そこで成長している子供達を危険に晒さないための深い検討と対策です。

社会性が乏しく自制心もまだ発達途中の子供達の前に、誘惑をぶら下げて、それより一時的な魅力に乏しく映る教育だけやりなさい、という姿勢は、あまりに実態を分かってないと言わざるを得ません。

どうすべきか

ありとあらゆる「悪いこと」をまずは想定すべきです。

世の中には、そのようなことが出来ないように考えられたサービスですら、そこを突破する「悪い人」がいるわけです。

欲望に対して子供たちはストレートです。仮にそのような抜け道の情報が出れば、あっという間に広がり止める事はできません。

それが一旦起きれば、正しい使用者の権利が侵されることになります。

想定は徹底的に悪い事をしたい側の目線で洗い出す必要があります。それでも抜け道は残る危険があります。でも、それをやるしか無い。

それに基づき、その道を一つずつ塞いで行く。

PCはなんでもできる=何もできないようにもできる

記事でも書いた事です。

回転寿司の注文パネル、コンビニのマルチサービス端末は、中身はPCと同じですが、そこで動画サイトの動画を見ることはできません。

当たり前のように「目的以外ができないように設計」して使うわけです。コストをかけて。

そこをやらずに渡して「悪いことが起きた!」と騒いでいるとしたら、その設計者はクビになるでしょう。

それをやってるのが今の政策。

どうすればいいのか

記事では、5分ほどでどうすればいいのか、を書きました。深く検証などせずとも、最低限守るべき事は在野のサービス設計者なら誰でも出せます。

もちろん、深い検証を行った設計はすべきですが、この5分の思いつきすらできない組織がこの政策を推進している、という自覚を持つべきです。

現場に押し付けるな

マシンガンを配って現場に「気をつけて使うように」で終わりにしてる図が見えます。

現場でのコントロールは無理です。コントロールされたツールを渡すべき。

それでも悪いことが起きる恐れがあるのがこの世界。フィードバックをもらいながら計画もメンテナンスしていく必要があります。

PCの要求スペックなどどうでもいいのです。

それを持って何を「させたらいけないか」の設計ができない人が、PCを配布する権利はありません。

面白く無いマシンになるのでは?

自由なことができないツールは面白く無いマシンになるのでは?と心配されるかもしれません。

面白く無いのは、運用する教育というコンテンツが面白く無いからです。そこを面白くする努力をツールに委ねるのは間違っています。

ゲームが面白いのはゲーム機が面白いから、というわけではありません。大人が寝ないで必死で考えたから面白いのです。大義名分があれば面白くなくていい、と教育を考えてるとしたら、必ず面白い方に子供は流れます。

面白く感じる教育を作るべきです。

何度も書きますが、子供はまだ「未完成」と考えることが普通の「ユーザー像の想定」

サービス設計者は、ユーザー像の徹底的な検証を行い、そこに合わせたサービス設計をします。

子供という、社会性も個人も未成熟な存在を理解して、最適設計をするのは当たり前。

それをしてないのが今の政策、と感じてます。

今すぐ現在の投げっぱなしのやり方を中止して、適切な設計に立ち戻るべき、と考えます。

かなり抑え目に書いたつもりの文章ではありますが、どうか心ある人に届きますように。








この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

まだまだ色々と書きたい記事もあります。金銭的なサポートをいただけたら、全額自分の活動に使います!そしたら、もっと面白い記事を書く時間が増えます!全額自分のため!