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AIコンペ運営企業が考える「AI・データ分析人材」求人の書き方tips38

Nishika株式会社で事業開発を担当しております角本洋介と申します。かんたんに3行で自己紹介しますと、銀行業界(FFG)→人材業界(Indeed)→データサイエンス業界(Nishika)というごちゃごちゃしたキャリアやってます。人材業界でコンサルタントをやっていたときはIT系ポジション中心に求人原稿をばきばき書いておりました。

ちなみにNishikaは「AI・データ分析コンペティション(※)」の運営やAIモデル開発などをやっているデータサイエンススタートアップです。
※データサイエンティストなどがAIモデルの精度をオンライン上で競い合うプラットフォームです

この度、AI・データ分析人材特化型求人サービス"Nishika Connect"の正式ローンチに伴い、数千名のAI・データ分析人材をユーザーとして抱える弊社が「彼らが思わず応募したくなる求人票の書き方」をまとめてみました。

本記事の主旨は「AI・データ分析人材を採用している企業の採用担当者」の方をターゲットとして「当該職種への理解を深め、円滑な採用活動に繋げること」としております。巻末に"AI・データ分析人材求人作成チェックシート38"のダウンロードフォームがありますので、適宜ご活用いただけますと幸いです。

なお、ここでいう"AI・データ分析人材"は以下の職種と定義しております。該当される場合は是非読み進めてみてください。

データサイエンティスト、データアナリスト(マーケター・経営企画等含む)、機械学習エンジニア、データエンジニア、データアーキテクト、BIエンジニア、プリセールス、プロジェクトマネージャー、コンサルタント

■AI・データ分析人材の採用うまくいってますか?

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# 難しいと感じている担当者が多い

応募者のスキルの見極めも難しいこともあり、エンジニア採用と同様に採用の難しい職種と言われています。弊社が日々行うインタビューの中でも「そもそも母集団形成からままならない」という方も多い印象です。

# AI人材マーケットについて

また、根本要因としてAI・データ分析人材不足は年々深刻化すると考えられており、経済産業省の「IT人材受給に関する調査(2019)」によると、AI人材の不足数は以下のように推移すると予測されています。

2020年:4.5万人
2025年:9.7万人
2030年:14.5万人
「IT人材受給に関する調査(2019)」経済産業省

DXの進展や、AI・IoTの社会実装が進むにつれて、国内のAI・データ分析人材の需給ギャップはますます拡大していき、採用担当者としてのミッションもより重要度・難易度を増してくるわけです。

■候補者の目線に合わせた「不安解消」と「期待」をフォロー

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# 応募をためらわせる最も大きな要因は「説明不足」

これは「スキルマッチしているのか(不安)」と「何が学べるのか(期待)」という点について、AI・データ分析人材の目線に合わせたケアをできていないことと言い換えられます。

どの職種でも同様ですが、AI・データ分析人材にはこの業界・職種特有の「不安」「期待」があり、この不安と期待に対する"彼ら彼女ら目線のフォローのない求人票"に対して、応募ボタンを押すほどの強い関心を持つことはありません。

■自社で募集するAI・データ分析人材をちゃんと定義できてますか?

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# AI・データ分析ポジションの解像度

AI・ビッグデータ・データサイエンスなどのバズワードの到来と共に、関連職種が広義化し曖昧になってしまいましたが、職種に対する認識を解像度高く持っておくことは採用担当者として重要です。

例えば、"機械学習エンジニア"というタイトルの求人の業務内容が「機械学習のためのデータ抽出基盤構築」という"データエンジニア"的役割だった、などといった求人も散見されますが、こういったずれた求人はデータサイエンス領域に対する知見のなさを感じさせ応募率低下につながるため、解像度高い認識を持ちましょう。

# じゃあ正しい定義は?

業界内でも各社表現が異なる傾向もありますが、のちに説明する業務内容とも密接に関係してくるので、以下の通り改めて整理します。なお、データサイエンティスト=アルゴリズムエンジニアと読み替えるケースなどありますが、基本的には以下のような大枠の認識を持っていれば問題ありません。

【データサイエンティスト】機械学習や統計のモデル構築を担当。広義な意味で使われることも多く、モデル構築にとどまらない様々な業務を担当する場合もある。
【データアナリスト】検定や効果検証といった統計的手法を用いて施策の効果分析・原因分析を行い、ビジネス側の意思決定を支援。マーケター・経営企画担当など。
【機械学習エンジニア】機械学習モデルの構築とともに、モデルのシステムへの実装・運用を行うエンジニア。機械学習モデルを構築する基盤(実験環境)の実装も担当。
【データエンジニア】データの集計・抽出の仕組みを実装するエンジニア。大規模データの負荷分散処理やデータの自動更新の仕組みなどを実装。
【データアーキテクト】集計・抽出すべきデータの企画・設計や、データの管理方法・ルールを決定する役割。
【BIエンジニア】Business Intelligence(BI)によりデータを可視化する。BIツールと呼ばれるツールを用いることが多い。見るべき数値(KPI)を可視化するだけでなく、数値自体を定義する必要もあり、ビジネスの理解も求められる。
【プリセールス】顧客の対面に立ち、抽象度の高い顧客要望をデータ分析の課題に落とし込む。顧客の要望を理解することが最重要だが、現実的・具体的な分析課題に落とし込むため、データサイエンスの知識も必要。
【プロジェクトマネージャー・AIコンサルタント】データ分析プロジェクトを成功させるための進捗管理、顧客コミュニケーションを主に担当。

なお、複数業務を一気通貫で担当する人材を募集する場合は、最も広義な表現である"データサイエンティスト"とするのが一番無難と思われます。

■やっぱり最重要な「業務内容」

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ここから大項目ごとに詳細に説明していきます。

まず、業務内容は「スキルマッチしているのか(不安)」と「何が学べるのか(期待)」をケアする部分であり、当たり前ですが最も重要な項目です。後述の技術スタックも同様の機能がありますが、文章にのせたふくよかな表現が可能なため、ポイントを押さえて丁寧に記載しましょう。

# 担当するプロダクト/データについて

「C向けの○○プラットフォーム」「自社保有のCRM・POSデータ分析」などが該当します。

・トラフィック、ユーザー数、予算はデータ量を想像させるメリットがあるため書ける範囲で書く
・複数あるときはおおよその割合書かれてるか
・企画段階から参加するのか、別の部署が決めた仕様に沿って開発するのか
・分業されておりシステムのいち機能の開発を担当するのか

# プロジェクトのどの工程に携わるのか

主にビジネス・サイエンス・エンジニアリングにわかれます。ここは職種名とも密接に関係してくるところですが、同じ職種名でも企業毎に担当領域が異なり、AI・データ分析人材の関心が最も強い項目のひとつであるため、しっかりと記載しましょう。

ビジネス
・課題抽出・企画提案
・プロジェクト推進・マネジメント
・ドキュメンテーション
・プレゼン
サイエンス
・分析設計
・集計、可視化
・機械学習・統計モデリングの技術選定
・モデルのチューニング、評価
エンジニアリング
・機械学習実装
・データクレンジング・データ正規化・データ標準化
・分析基盤設計、開発
・分散処理・クラウド
・システム開発・設計

# 業界についての説明

AI・データ分析人材の方は自身の仕事が世の中にどう影響を与えるのか、という点を意識的にみている傾向があります。業界におけるそのポジションが与えるインパクトをわかりやすく表現しましょう。

# 現在チーム人数、構成など

こちらはどの職種においても重要ですが、現在のメンバー規模などを記載し、求職者にこの会社で働く上でのイメージを持たせましょう。
例)役員管轄のもとリーダー1名・メンバー5名の計7名のチーム体制です。

# コミュニケーションについて

ご時世的に在宅勤務とする企業が多く不安に感じている求職者は多いため、必ず記載しましょう。以下が例です。

・バーチャルスペースなど使って密に連絡を取り合っているで、出勤時と同等のコミュニケーションを実現しています
・入社後3ヶ月間メンターがつくため、在宅勤務でも安心して入社いただけます
・月水金でチームミーティングがあり、問題点やプロジェクトの進め方を共有しやすい仕組みがあります

例には載せていませんが、特にフルリモート時でのオンボーディング方法などは特にケアすべき項目です。必須ではありませんが、求職者が特に不安を感じやすい"コミュニケーション"へのケアは、不安解消と共に従業員に対する誠実な印象を与え、応募率アップに貢献します。

# 自社案件?受託案件?

エンジニア求人と同様に気にされる部分かと思いますので、丁寧に記載しましょう。ただし、AI・データ分析人材から見る受託と自社の認識は、エンジニアのものと相違がある方が多いため、その点ご留意ください。

自社案件
メリット:少数のプロダクトに腰を据えて取り組める
デメリット:幅広いデータやドメイン知識を得ることができない
受託案件
メリット:幅広いデータやドメイン知識を得ることができる
デメリット:少数のプロダクトに腰を据えて取り組めない

メリット/デメリットはそのまま逆となりますが、自社案件に人気が集中するエンジニアと異なり、受託案件を希望する人材も比較的多いため、受託案件をメインとする企業の場合は「業界・会社に縛られず幅広いデータやプロジェクト工程に触れられる」というメリット部分を強く訴求しましょう。

# 受託or自社の割合、客先業務の有無

受託と自社、両方の業務が混ざる企業様も多いと思いますのでその際は目安を記載しましょう。また、客先での業務があるのか、常駐するのか、なども明記しておいた方が応募後に認識がズレていたというケースが減ります。

# プライム案件率が高ければ記載

そもそもデータサイエンス業界はシステム開発のような多重請構造にはなりづらい傾向にはありますが、やはり「プライム案件」はパワーワードです。入れて損はありませんので記載しましょう。

■注目度高い。技術スタック。

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業務内容と同様「スキルマッチしているのか(不安)」と「何が学べるのか(期待)」をより端的にケアする項目です。

採用担当者なら媒体の違いやATSの違いでアウトプットは大きく変わりませんが、技術職にとっては技術スタックはパフォーマンスに直結します。また、「スキルマッチしているのか(不安)」を解消する材料であり、「何が学べるのか(期待)」そのものでもあります。

求職者の注目度が高い項目のため、詳細な記載を心がけましょう。なお、受託中心の会社で技術スタックが定まらない場合でも、クライアントの傾向や割合などの表現でできるだけ記載しましょう。

# OS、DB、言語、ライブラリ、ツール

求職者はこの項目を熟読し、自身の経験したことのあるスキルと今後触れていきたい技術を確認することで、「不安」を解消し「期待」を感じる項目です。

OS、DB、言語などは書かれるケースが多いと思いますが、よく利用される機械学習ライブラリやツールなども含めて極力詳細に記載することをおすすめします。

# 取り扱うデータについて

本項目はAI・データ分析人材特有のものであり、技術スタックの中でも最重要です。「画像データを主に扱います」などの書き方ではなく、以下のような解像度の高い表現がおすすめです。

・どういった種類のデータを扱うのか(自然言語?画像?構造化データ?)
・データの内容はどういったものなのか(構造化データならCRM?POS?Web?広告?
・タスクはどんなものなのか(画像データなら分類タスク?生成タスク?物体検出?)

※ただし、面白いデータにたくさん触れたいのがAI・データ分析人材の特徴でもあります。細かく記載するのは重要ですが、書き方によっては得られるスキルの幅が狭いと感じられる可能性もあるため、限定しすぎた表現にならないよう注意が必要です。

要件はいくつか注意するポイントが

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# 必須要件の内容は注意しましょう

必須要件は「言語」「ツール」「ライブラリ」などで極端に限定した記載をする場合は注意が必要です。

例えば、自社のデータ分析部署にて一般的に使われている言語が"R"である場合、必須要件に"R"と限定するのが正しいのでしょうか。

採用の状況にもよりますが、「母集団形成が十分すぎる」という状態以外では「Python、R」と書き、Python技術者を選考に進めることも検討したほうが良いケースが多いです。

理由としては、一定のエンジニアリングスキルがあれば他言語であっても2~3ヶ月程度の学習期間で元来のパフォーマンスを取り戻すことができるケースも多い反面、基礎的な数理統計能力などの数学的素養は短期間での習得は難しいためです。

また、AI・データ分析人材の業務は予測などが多く、エンジニアリングのようにアウトプットがシステムに直接乗らないケースも多いので、そもそもエンジニアほど技術選定が重要でないことも多いといえます。

よって繰り返しになりますが、本来ターゲットになり得る優秀な候補者を意図せずスクリーニングしてしまっている可能性があるため、言語やツール、ライブラリなどの自社の選定技術を元に必須要件を設定する際は注意しましょう。

# 実務未経験者の採用

結論から言うと、エンジニアよりも実務未経験者の活躍可能性は高いため、ジュニアクラスの採用に限り積極検討をおすすめします。

というのも現在は、データ分析コンペティションサービスなど実践的な経験を積める環境は整っており、以下のような業務内容だと検討可能性はより高まります。

・分析設計、集計
・可視化
・機械学習・統計モデリングの技術選定
・モデルのチューニング、評価

特にコンペユーザーは技術習得に対するマインドが強く、能動的な成長余地も大きい傾向があるため、応募時点で「実務経験」を必須要件にしない選択も検討できると思います。

なお、未経験者のスキルをどう測るの?という部分については、各社行うスキルチェックの他、手間味噌ではございますが、弊社サービス"Nishika"のようなコンペティション連動の求人サービスを活用するなどの方法が理想的です。

■以上を踏まえてタイトルを決める

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以上を踏まえてタイトルを決めます。ネット上に求人は無数にあり、そもそも求人原稿を閲覧してもらうこと自体が難しいため、そのポジションの特徴を端的に表現したタイトルを作成しましょう。

(なお、個人的に奇をてらう形でCTRを高めるタイトルは、むやみに求人閲覧数を増やすばかりで、本質的なマッチングや採用成功に対するポジティブに影響しないため、)

・担当するプロダクトorクライアントがわかるか
・具体的な業務内容が端的に書かれているか
・業務内容とマッチした職種が書かれているか
・40文字以下
・その他特別にアピールしたいこと

「担当プロダクトorクライアント+業務内容+職種」というフォーマットでいくつか例を作成しました。

・美容メディアのサイト分析基盤構築を行うデータエンジニア
・自社開発プロダクトのデータ収集設計・管理を担うデータアーキテクト
・大手金融会社のDXを課題抽出から提案するAIコンサルタント
・弊社マーケティングチームにデータサイエンスを実装する一人目のデータアナリスト

■福利厚生・待遇はスキルアップ項目が重要

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# アウトプットの場

身につけたスキルをプレゼンする機会やコンペティション勉強会などエンジニアと同様に日々自己研鑽に励む方が多いのがAI・データ分析人材です(Nishikaでも有志でのコンペ会や最新論文共有会をビジネスメンバーを含めて行っています)

なお、弊社ユーザーインタビューによると、全社的に行われる半強制参加の研修会などは抵抗があるという意見もあります。あくまで有志で好きなテーマを好きなタイミングで開催するといった環境や風土がその企業にあるのか、という部分が重要とのことです。

# スキルアップに関する会社制度

極端な例だと、「業務時間中のデータ分析コンペの参加を許容する」などいった待遇もありますが、学習する環境が整っていることはAI・データ分析人材にとって非常に強い訴求になります。

書籍購入制度や資格補助などがある場合は、できれば「年間○○万円まで」「該当資格」といった詳細を記載しましょう。

# 有名な人材が在籍しているか?

エンジニアと同様に、界隈で有名な人材が社内にいるという点は採用上の強みとなります。「某コンペティションサイトのMasterクラスが在籍している」などといった情報はご本人の許可を得た上で積極的にアピールするのがおすすめです。

■その他

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AI・データ分析人材に限りませんが、応募率にポジティブな影響を与えるため、忘れずに記載したい項目をいくつかピックアップしました。

#トレンドを示すキーワード

最新技術への強いアンテナを持つAI・データ分析人材にとっては、やはり訴求力があるので「Fintech、IoT、VR、D2C」などのキーワードを使える場合は適切に差し込むのがおすすめです。

# 年収レンジは小さく

数字を見る際は悲観的にボトムから見てしまうのが人間です。年収レンジは極力小さくしましょう。

目安としては、最大レンジでもボトム×1.5がトップとなるように設定しましょう(500~750万円、800~1200万円など)明確に分けられない場合は、必須要件に差をつけジュニア求人・シニア求人などと複数求人出稿しましょう。

# ビジョン・ミッションなどの記載は控えめに

こちらは賛否別れる部分ではありますが、求人を閲覧する段階でユーザーの欲しい情報は主に業務内容や条件面などが中心です。

後述しておりますが、文量過多は求人閲覧の途中離脱を招くため、スクリーニングの目的以外ではビジョン・ミッションを強く伝えるのは控えめが無難です。

# 文字数は2000~3000字程度が適切

1分間に人間が読める文字数は多くても1000文字程度と言われており、求人票のような流し読みコンテンツの場合、2~3分で読み切ることができない文量を超えると読み飛ばしや離脱の可能性が途端に上がります。

原稿全文をしっかりと読んでもらう方が結果的に貴社のアピールが伝わりやすくなるため、極端に長い説明を控え端的にそのポジションに就くことのメリットを訴求することをおすすめします。

■おわりに

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長文になりましたが、ご高覧いただきましてありがとうございました。

データサイエンティストや機械学習エンジニアをはじめとしたAI・データ分析人材は、エンジニアと同様に採用担当者からすると技術職特有の捉えづらさがあると思います。

また、的確な求人票の作成は「現場」と連携した人材要件定義というコミュニケーションが不可欠であり、その点も難しさを助長します。

そういった取っ付きづらい部分が多い本職種の採用ですが、本記事に記載した要所を押さえることで、比較的容易にAI・データ分析人材に刺さる原稿作成が可能です。

本記事の項目をチェックシート形式にしたものを下部フォームからダウンロードいただけますので、積極的にご活用いただき「AI・データ分析人材」の心を掴む求人票の作成にお役立ていただけますと幸いです

【チェックシートダウンロードはこちら↓】

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※チェックシートでは技術スタック項目を中心に本記事に記載していない詳細な項目がございます
※DLすると求人サービスを無料導入しませんかのお伺いが飛ぶ可能性がありますのでご留意ください

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