マガジンのカバー画像

ショートショート

4
運営しているクリエイター

記事一覧

[小説]触覚伝達デバイス(ショートショート)

[小説]触覚伝達デバイス(ショートショート)

電器屋の店頭に踊る怪しい文字に目を奪われた。

“「触覚伝達デバイス」今なら無料お試し実施中!”

スーツを着た営業マンらしき男に話を聞いてみた。
どうやら、この装置を身につけると、離れた相手に“触覚”を伝えることが出来るらしい。
赤い色をした手にはめるグローブと、全身スーツ。
それに青色のグローブと全身スーツ。
二組で一セットのようだ。

赤グローブを身につけて赤のスーツを触ると、その感触が、青

もっとみる
[小説]青爪先 爪山四郎の奇談(ショートショート)

[小説]青爪先 爪山四郎の奇談(ショートショート)

※途中、怖い・痛い表現があります。

ここに青爪先 爪山四郎
(あおつまさき つめやましろう)
という男がいる。

青爪先 爪山四郎の爪先は、青い。

青爪先 爪山四郎の爪山は、白い。

爪山四郎は世の中の何もかも「つまらない」と思っていたが、自身の綺麗な色の“爪”だけは唯一の例外だった。

爪の中でも特に、青と白の境目のグラデーションが好きだった。

氷雪のように冷たく淡い白から、海のように深い

もっとみる
[小説]ひみつ空間ロデオ(ショートショート)

[小説]ひみつ空間ロデオ(ショートショート)

散歩中、気になる喫茶店を見つけた。

看板に「ひみつ空間ロデオ」と書いてあった。
入り口にはポップな笑顔の馬のオブジェがあり、その馬が咥えている看板にそう書いてあったので、店名だろうと察した。
またその馬はコーヒーカップを両前足で挟み込むように持っていたので、喫茶店であろう事も分かった。

ちょうどいい時間だったので入ってみることにした。何より、この店の何が「秘密」なのか、とても気になった。

もっとみる
[小説]嘲笑いのニャンス(ショートショート)

[小説]嘲笑いのニャンス(ショートショート)

上司に叱られた。
彼は自席にどかっと座り、足を前に乱暴に投げ出していた。
私はその横に立ち、手を前に結んで下を俯いて話を聞く。

主に言葉遣いや態度について指摘されているようだった。指摘された点には覚えがあり、上司の仕草に萎縮しつつも、内容には反省しながら耳を傾けていた。

でも、“あの言葉”を聞いた瞬間から、上の空。彼の言葉が、右耳から左耳に抜けるように、流れてく。

「君の言葉には嘲笑い(あざ

もっとみる