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ありがとう、おさるさん


月曜日の夜、僕の携帯に電話がかかってきた。

??「おう、久しぶり!俺明日から4日間、研修で東京に行く事なったし、飲みに行かへん?」

僕は本当に久しぶり+電話がかかってくるイメージのない相手だったので驚いた。

この電話の主は

高校ラグビー部時代からの友人

おさるである。


文字通りサルみたいな見た目をしているので、みんなからおさると呼ばれており、近年はEXILE、LDH会長のHIROさんに似ている。

数年前に結婚し、今や二児のパパである。

会うのは約2年ぶりで、当時の事はこちらのnoteに書いている。

おさるという人についてはこのnoteに全て書いてあり、今回の前に出来るなら読んで欲しかったりする。

ただ一応ざっくりと説明すると

おさるはラグビー部の中でもかなり変わった人で、正確には変わっていってる人である。

どんどん進化していってるのだ。

元は中学生徒会長で高校時代も成績優秀、真面目な人だったのだが、いつの間にか

飯の食い方が天下一武道会の時の悟空みたいな食い方になったり

常に鼻くそほじるかゲップしてる状態だったり

ラインのやり取り無茶苦茶だったり

かと思えば一人称が急に俺から僕に変わったり

元々めちゃくちゃ若く見えるタイプで中学生みたいだったのに、ここ数年急激に老けだして顔だけ50代ぐらいになったり

色々忙しい人なのである。

同じラグビー部の友達で「変人」と呼ばれてる奴がいるが、状況によっては変人よりも変な時があると僕は思っている。

そんなラグビー部の隠れ変人、おさるが東京にやって来るらしい。

僕はすぐ予定を確認し、木曜日の夜に二人で飲みに行く事になった。

僕はおさるからの電話を喜んだ。

東京に行くとなってすぐ連絡をくれるのは、やはり嬉しいものである。

おさると会うのは約2年ぶり。

なかなか久しぶりである。

2人で飲みに行くなんて何年ぶりだ?

え〜と。

え〜と。

え〜〜

あれ?

もしかして、、、

おさると2人で飲みに行った事ないんじゃ、、、


僕とおさるは出会ってから20年以上経っているが、まさかの2人で飲んだ事が無かったのである。

37歳になってから初のサシ飲み。

大丈夫なのだろうか。

しかも相手は常に進化中のおさるである。

僕はやや不安な気持ちで当日を迎えた。


当日。

僕達は19時に恵比寿駅に集合した。

店はもんじゃ焼きの店を予約した。

おさるからすればせっかくの東京なので、東京と言えばもんじゃ焼きじゃないかと思ったからだ。

ちなみにこの店は僕が東京に来た初日、コマンダンテの石井ちゃんと来た店で、初日という事もあり中々思い出深い店でもある。

あれからもう2年か。。。

あの時は希望で溢れてたな。。。

僕は涙をそっと拭き、おさるが待つ駅の改札へと向かった。


ホームからエスカレーターで上がり、改札が見えてくる。

改札の外はかなりの人が行き来している。

僕はおさるを探した。

!?

いた。

黒のTシャツにグレーの半ズボンを履き、手ぶらで佇む

まるで夏休みの小学生の様な格好をしたおさるが。

おさるはこれでもかといぐらいラフな格好をしていた。

おさるは元々、遠くから見ると相当若く見える。

ラフな格好と元々の性質を組み合わせた結果

おさる〜ぼくのなつやすみver〜が誕生していた。

僕はおさるに近付いていく。

近くなってくると顔がだんだんとしっかり見えてくる。

!?

お、おさる、、、

顔が、、、

そう。

おさるの顔は

もはやLDH会長HIROさんそのものになっていた。


近年、どんどんHIROさんに似てきてたが、急激な老け具合によりHIRO化がさらに加速し、とうとうHIROさん本人に並ぶとこまできたのである。

HIROさん本人のHIROスピードを1とすると、おさるのHIROスピードは現在10ぐらいある。

つまりおさるは本人の10倍の速さでHIRO道を突き進んでいるのだ。

このまま行くと近い将来おさるはHIROさん本人を抜き去るだろう。


抜き去るってどういう事?


とにかくおさるの顔は完全にHIROさんと化していた。

顔はHIROさん、それより下は小学生。

何だか首から下を付け替えたようなアンバランスさを感じる。

そんな事を考えながら僕はおさると合流した。

僕「おう!」

おさる「おう!」

2年ぶりの再会である。

おさるは「おう!」と言った後、続けて

「ごめん!ちょっと仕事の電話せなあかんねんけどしていい?店に向かって歩いてって!俺電話しながらついて行くから!」と言った。

僕達は店に向かって歩き出した。

おさるは真剣な表情で電話をしている。

僕は無言で店を目指して歩く。

ひたすら歩く。

おさるはひたすら電話している。

しばらくその状態が続き、僕は思った。

まだ「おう!」しか話してへんなあ。。。


え、これ、どういう状況?

久しぶりに会って、2文字て。

いや、全然いいねんけど。

もちろん仕事の電話、しゃあないねんけど。

何かいきなり変な状況なってるで。

さすがおさるやで。


僕は期待と不安が入り混じったまるで何かの決勝戦前の様な心境で店に向かって歩いた。

横からおさるの電話が聞こえてくる。

「はい、はい、そうですね。」

「うんうんうんうんうん」

「うん、申し訳ないのですが、やってもらっていい?」

「おうおうおうおうおうおう」

「ほう、左様でございますか」

僕は思った。

誰と話してんの!?


え、これ、相手誰!?

何か敬語とタメ語がグッチャグチャなってんねんけど!

え、相手1人やんな?

どんな立場の人なん、これ!?

上司であり部下であり友達でもある、そんな人!?

何その関係!?

あと「おうおうおうおうおうおう」って

円陣組んでんの!?

電話越しで円陣組んでる?

リモート円陣!?


店に到着したのだが、おさるの電話が終わらないので、僕だけ先に店に入る事にした。

ちょうど予約時間だったので店員さんに到着を伝えるためである。

僕は店に入り店員さんに、もう1人は今外で電話をしていてもうすぐ来る事を伝える。

席に案内され、僕は1人座った。

まあすぐ来るだろうから、ビールは来てから頼む事にした。

テーブルでじっとおさるを待つ。

、、、


、、、


、、、


来ない。

おさるが来ない。

時間にして10分ぐらいだろうが、物凄く長く感じる。

まさに悠久の時。

僕はいつ終わるか分からない永遠の様な時間を過ごした。

そしてたまらずビールを先に注文した。

1人グビッとビールを飲む。

たぶん気のせいだが、周りの

「え、あの人、まさか1人もんじゃ!?」という視線を感じる。

頼む、おさる早く来てくれ、、、

と、その時。

ガチャ。

店のドアが開いた。

来た!

僕は急いで顔をあげる。

しかし残酷な事に店に入ってきたのは、全然違う大学生だった。

大学生は店員さんに言う。

「あ、先に予約してる友達が入ってて」

店員さんは咄嗟に僕の事と勘違いして「あ、あちらの」と1人ビールを飲む僕の方を見る。

大学生は「え、あ、いや、違います」と戸惑う。

口には出していないが「いや、誰!?」という想いが溢れ出ている。

僕は「勘弁してくれ、、、」と思いながらビールをグビッと飲んだ。

するとガチャとまたドアが開いた。

やっと来た!

僕は急いで顔を上げる。

しかし残酷な事に店に入ってきたのは、全然違う大学生だった。

大学生は店員さんに言う。

「あ、先に予約してる友達が入ってて」

店員さんは咄嗟に僕の事と勘違いして「あ、あちらの」と1人ビールを飲む僕の方を見る。

大学生は「え、あ、いや、違います」と戸惑う。

口には出していないが「いや、誰!?」という想いが溢れ出ている。

僕は「勘弁してくれ、、、」と思いながらビールをグビッと

いや、もうええわ!!!

何で2連続やねん!!

何で同じ展開、繰り返すねん!!

涼宮ハルヒのエンドレスエイトか!!

どんな偶然や、これ!!

あと店員さん!!

大学生の友達がにっしゃんなん普通に考えておかしいやろ!!

と、その時。

ガチャ、店のドアが開いた。

すると、そこには

顔はHIROさん、下は小学生の男が立っていた。

おさるである。

おさるは何故か両腕をだらんと伸ばし、顔を下に向けた状態で入ってきた。

僕はそれを見て「いや、何で目を見開く前の貞子の姿勢やねん、、、」と思った。

おさるは店員さんに「あ、いいっすか?いいっすか?」と言っている。

僕はそれを見て「いいっすか?って何!?店入っていいっすかって何や!?」と思った。

わけのわからなさここに極まる、である。


おさるは僕の前に座り、ビールを頼み

僕達はようやく乾杯をした。

おさるが「久しぶりやな!」と言う。

出会って30分以上経ってようやく1発目の会話が出来た。

とりあえず料理の注文をする。

もんじゃ、サラダ、山芋のわさび和えを頼む。

料理がくるまでビールを飲みながらお互いの近況を報告する。

おさる曰く最近色んな人にHIROさんに激似と言われるらしい。

確かにおさるは今やHIROさんよりもHIROさん、本人を抜き去ろうとしてる男である。

周りがそう言うのも何ら不思議ではない。

僕がそんな風に思っていた瞬間

「ゲッフン!!!」


おさるの特大ゲップが炸裂した。

店内に響き渡る爆音。

まるで巨大怪獣のゲップである。

非常に勘弁して欲しい。

そんな僕の想いは伝わるわけもなく、間髪入れずに2発目が来る。

あかん、これはさすがにやめろって言わんと、、、

周りのお客さんにも迷惑やし、、、

僕が注意しようとしたその時、

おさるがこんな事を言い出した。

「お前も金無いやろ!今日は俺のおごりやから!」


、、、


おさるさん、いくらでもゲップして下さい。



しばらくして、もんじゃが到着した。

この店、ていうかもんじゃ焼きの大体の店は、自分でもんじゃを作るスタイルである。

実は今回もんじゃの店に行くに当たってこの点が不安だった。

僕はもんじゃを作った事がないのだ。

行った時は必ず相手の人に作ってもらっていた。

だからちゃんと出来るか、かなり不安なのだ。

しかし勝算もある。

おさるは大学時代、お好み焼き屋でバイトしていたので、おそらく作れるはずなのだ。

僕はおさるにその旨を伝えてみる。

おさる「無理やぞ!」

そ、そうか、、、

とりあえず2人で力を合わせて作る事にした。

作った事はないが、僕は手順は分かっている。

さっきおさるを待ってる間、作り方をしっかり読み込んだし、横のテーブルのカップルが非常に上手く作っていたのでそれを観察していた。

手順は

鉄板に油をひき、具材のみを入れ、ヘラで細かく刻んでいき、しんなりするまで炒め、土手を作って真ん中にだしを入れ、とろみがついたぐらいで混ぜてから薄く広げて完成である。

全部分かってる、大丈夫。

僕達はもんじゃ作りを開始した。


おさるが具材を持ち、僕が指示を出すスタイル。

に「まず、だしは全部残して、具材だけを鉄板に入れて!」

ボールにパンパンに入った具材を鉄板に落とそうとするおさる。

苦戦するおさる。

まずは少しだけ具材を鉄板に落とす。

鉄板からはみ出し、周りのテーブルに転がる具材。

に「ああ!何してんのよ!」

お「難しいんや!」

鉄板の上では一瞬で具材がひっついている。

第一の手順、油をひくをいきなり忘れていた。

に「しまった!油や油!早く早く!」

お「それ先言えよ!」

慌てて大量に油をひくおさる。

飛び跳ねる油。

お「あっっっちいいいいいい!!!」


店内に響き渡るおさるの悲鳴。

このテーブルだけ阿鼻叫喚。

もんじゃ焼き、早くも大ピンチ。

残りの具材を全て鉄板に入れる。

具材は勢いよくはみ出し、3分の2ぐらいが鉄板の外に出る。

もはや鉄板外焼きである。

に「ああ!出てる出てる!」

お「うるさい!」

鉄板の外に落ちた具材を無理矢理中に入れ、次は細かく刻む作業である。

ここは僕が担当する事にした。

さっき横のカップルのを見てるから、やれるはずである。

カンカンカンと小刻みにヘラを動かすのだ。

カンカンカンカンカンカンカンカン

小刻みにヘラを動かす僕。

それを見守るおさる。

勢いよく鉄板の外に飛び出す具材。


お「何してんねん!」

に「うるさい!」

見かねたおさるがヘラを持った。

カンカンやって具材を飛ばした僕を見て、おさるはやり方を変えてきた。

まるでエヴァ初号機がATフィールドを破る時みたいにキャベツを左右に引き裂いていく。

に「何してんねん!そんなんちゃうて!」

お「これしかないんや!」

もう無茶苦茶である。

とりあえず何となくで終わらせ、しんなりするまで炒める。

が、刻みが足りなかったのか、具材が大きく、少し焦げてくる。

まずい。

おこげが飛び級でやって来た。

お「焦げてるやん!あかん!油入れな!」

慌てて油を再度投入するおさる。

お「あっっっちいいいいいい!!!」

に「あっっっちいいいいいい!!!」


周りのみなさん、ほんますいません。


しんなりしたかは微妙だが、とりあえず土手を作る。

この土手からだしが外に出ない事が重要らしい。

そして真ん中に穴を開ける。

そこにだしを入れる。

真剣な表情でだしを入れるおさる。

見守る僕。

土手から溢れ出すだし。


土手、決壊。

鉄板に広がるだし。

に「ああああ!!!」

お「うわああああ!!!」

凄まじく焦る2人。

蒸発するだし。

大ケンカを始める横のカップル。

お「ゲッフン!!!」

カオス。


もうヤケクソで混ぜる僕。

とろみなんてクソくらえ。

こうして

もんじゃ焼きの様でいて、決してもんじゃ焼きではない何かは完成した。


2人とも確かな違和感を感じながら、もんじゃを口に運ぶ。

そしてあまり味には触れずに完食し、もう少し何かを追加で頼む事にした。

メニュー表を見ながらおさるが言う。

「エリンギのバター炒めはどうやろ?あとなすの醤油炒めもいいな!あ、だけどこんなに頼んだら僕らフードファイターって思われるかな?」

僕は頭の中で今までに頼んだメニューを思い返してみる。

もんじゃ、サラダ、山芋のわさび和え、そして追加で、エリンギ、ナス


、、、


フードファイター???


結局、僕達はそこからも色々追加で食べ、フードファイターとは思われないが、なかなかの量を食べた。

もんじゃ以外は凄く美味しかった。

支払いはおさるが快く引き受けてくれた。

当初の予定よりかなり食べたので、僕も少しだけ払わせてもらった。

今この場をかりて、もう一度お礼を言いたい。

おさるさん、この度はご馳走様でした。

本当にありがとうございました。

変な人とか、わけわからんとか、小学生とか、首から下を付け替えたとか、色々言って本当にすいませんでした。

この御恩は忘れません。

いつかお返しします。

いつか、必ず。


店を出て僕達は駅まで歩いた。

おさるは恵比寿の華やかさにご満悦だった。

楽しそうで何よりです。

そして電車に乗り、新宿駅で別れた。

次に会うのはお盆になるだろうか。

その時は僕も京都に帰って、みんなで集まりたい。

おさるさん、その時までお元気で。

そして今回は本当に

ありがとう、おさるさん。







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