記事一覧
本当に幸福な「幸福の王子」
町の高いところに、幸福の王子の像が立っていました。
王子の体は、小さなダイヤの粒でおおわれており、目はブルートパーズで、剣の柄には、大きなガーネットが輝いていました。
王子は、町の人々の自慢でした。
ある夜のこと、一羽の小さなツバメが飛んできて、王子の足元にとまりました。
疲れたツバメが寝ようとすると、大つぶのしずくがポタリと落ちてきました。
「ひやっ!雲もないのに、雨かいな?」
ツバメが不思議に
ゾンビとゾンビ その4
「哲学的ゾンビ」という言葉を聞いたことがある。
【言動や社会性の面でも、生理学解剖学的にも普通の人間そのものだが、内面的な思考を持たないという、思考実験上の存在】だそうだ。
この言葉の提唱者によると、「喜怒哀楽など様々な感情を表出したとしても、それは内的な情動にの発露ではなく、機械的な反応・演算の結果として出力しているにすぎないが、現実の人間がそのような存在でないと証明することはできない」とある
ゾンビとゾンビ その3
楽しいはずなのに、3人でお茶しながら、夕子はどんどん疲れていくのを感じていた。
話せば話すほど、自分の身体から何かが吸い取られていくようなのだ。
「そんなはずは無い」と何度も自分に言い聞かせるが、貧血で倒れる直前のようになっている。
相手に関心のない友里さんは、聞かれなくても自分のことは話すのだ。
優しいポツポツとしたかわいい話し方だが、その口から出てくる言葉を聞くたび、夕子は「行き倒れ寸前のお
ゾンビとゾンビ その2
会いたかった友里さんに会えることになったのは、思いのほか早かった。
山田さんが遊びに行くついでに、連れて行ってもらえることになったのだ。
ご主人が大企業の役員の友里さんは、お金持ちらしかった。
高校生の頃友里さんと眼科で出会ったことがあるが、待合室で友里さんの方から声をかけてくれたことがあった。
地味で引っ込み思案な私はそのことが嬉しくて、ずーっと忘れていなかった。
少しずつ少しずつ私に近寄り、
ゾンビとゾンビ その1
友里さんが地元に戻ってきていると聞いたのは、友里さんの幼馴染みの山田さんからだった。
夕子は山田さんを知らなかったのだが、何かの折に同級生だと知ってから、時々会うようになっていた。
山田さんは公務員で転勤もあったし、シングルマザーの上に高齢の両親と暮らしていたので、ものすごく忙しかった。
なのに山田さんは、いつも笑っていた。
自分の不幸な結婚生活のことを話す時も、手のかかる二人の子供の話をする時も