あさ

心のままに旅をして、気が向くままに書いていきたい。今は、そんな気分です。、

あさ

心のままに旅をして、気が向くままに書いていきたい。今は、そんな気分です。、

マガジン

  • カナイと八色の宝石

    動物とすぐに仲良くなれる女の子が、動物たちの助けを借りながら、友達を助けるために元の世界に戻ろうとする冒険ファンタジー(完結済み)です。

記事一覧

【読了】大鏡

あくまでも2人の長寿も長寿の老人を語り手、若侍を相槌役という体で物語れるのが興味深いです(この時代、ファンタジー書いたら地獄行き) 道長マンセーに多少イラッとしつ…

あさ
3日前
2

じんわりと心に染みる物語

ファンタジー小説部門と言っても、魔法や竜が登場するわけではありません。 けれども、2人にとって共にある瞬間を迎える大事なものでした。 物語はじっくりと進んでいき、…

あさ
3週間前
16

カナイと八色の宝石㉒

 夜が明けると、村の入り口に十人の騎士団員がやって来た。彼等は黒塗りの馬車に、団長とチンとエレを乗せている。  彼等の様子を、カナイ達は少し離れたところから眺め…

あさ
1か月前
22

カナイと八色の宝石㉑

「うわー、最悪だっ。ん? いででででっ。爪っ。爪が刺さってるっ」  いち早く暗闇に慣れたチチが、足でアークを掴んで飛び立ったらしい。チチの羽音と、チチの鋭い爪が…

あさ
1か月前
16

カナイと八色の宝石⑳

 テンデとシスカは、手首と足首を細い縄で縛られていた。本来は、テントを張る時に使用する縄の予備だ。強度が高くて、刃物が無いと切れそうにない。二人が捕まっている部…

あさ
1か月前
4

カナイと八色の宝石⑲

「それより、どうして僕まで、ネズミの言葉が分かるんだろう? ウークは、自分が偉大な魔法使いだからって言っていたけど」  首を傾げるシュリに、アークは寄ってきた頭…

あさ
1か月前
4

カナイと八色の宝石⑱

 対してシュリは、カナイ達の反応に目を丸くする。 「ちょっと、みんな。落ち着いて」  シュリがその場をなだめようと両手を挙げた時、彼の背後から金属がぶつかり合う…

あさ
1か月前
3

カナイと八色の宝石⑰

 紫の光は、アークを包み込んだ後、上へ上へと伸びていった。シュリの母親の身長と同じ高さにまで成長すると、煙のように消え去った。と同時に、アークの姿も無くなってい…

あさ
1か月前
2

カナイと八色の宝石⑯

『じゃあ、そろそろ行こう。お嬢さん』  水面に大きな波紋だけが残されたところで、アークが口を開いた。 『通気溝は慣れているから、任せておくれよ』 『下調べも、ば…

あさ
1か月前
2

カナイと八色の宝石⑮

『チョット、カナイ。何ヲ言イ出スノヨッ』  チチは、羽をばたつかせて抗議する。カナイは、目を伏せた。  昨夜、初めて見たシュリの表情や、彼の母親の涙を、カナイに…

あさ
1か月前
3

カナイと八色の宝石⑭

 チチの声に、カナイは渡り廊下の外へと飛んだ。渡り廊下の下を、青い鳥が潜り抜ける。カナイは青い鳥の背中の上に落ちると、首に腕を回した。 『アラカジメ、手綱ヲ付ケ…

あさ
1か月前
2

カナイと八色の宝石⑬

 木の扉が開く音が、塔内に響く。カナイの耳にもしっかりと届いて、目を覚ました。上半身を起こすと、背中や腰が少し痛みを感じる。  階段を上る足音を聞きながら、カナ…

あさ
1か月前
2

カナイと八色の宝石⑫

『宝石が力を持つのは、常識じゃないか』 『そんな常識、私の村には無いよ』  ネズミは大きな口を開けると、手にしていたクッキーを落とした。クッキーが水の中に落ちて…

あさ
1か月前
4

カナイと八色の宝石⑪

『母上。この者は、私が客室へご案内いたします。どうぞ母上は、シユーリと自室にてお過ごしください』  シュリの母親は、シヤークを見上げて頷いた。 『ありがとう、シ…

あさ
1か月前
3

カナイと八色の宝石⑩

 シュリは部屋に戻ると、右側の壁を指差した。カナイも窓から身を乗り出すのを止めて、シュリが指を差している壁を見る。文字のような記号のようなものが、青い絵の具で壁…

あさ
1か月前
4

カナイと八色の宝石⑨

 後方から団長の叫び声が響いて、シュリもカナイも走る速度を上げた。それでも、背が高いチンとエレが走れば、追いつかれるのは時間の問題だ。カナイが気にして後ろを振り…

あさ
1か月前
5
【読了】大鏡

【読了】大鏡

あくまでも2人の長寿も長寿の老人を語り手、若侍を相槌役という体で物語れるのが興味深いです(この時代、ファンタジー書いたら地獄行き)

道長マンセーに多少イラッとしつつ(笑)、血が濃すぎないかいらない心配をしつつ(笑)も、個人個人のエピソードがおもしろかったです。

系図は本当に簡易なので、ちょっと不親切に感じるかもしれません。あと、しかたないことですが、敬語がくどく読みづらく感じます。

じんわりと心に染みる物語

じんわりと心に染みる物語

ファンタジー小説部門と言っても、魔法や竜が登場するわけではありません。
けれども、2人にとって共にある瞬間を迎える大事なものでした。

物語はじっくりと進んでいき、彼等の人間関係、行き違ってしまう思い、読んでる側にも切ないものが積もりましたが、同時に心にじんわりと染みる温かさもありました。

視点変更のあるお話です。
特に最後2話が秀逸で、とても良かったです。

カナイと八色の宝石㉒

カナイと八色の宝石㉒

 夜が明けると、村の入り口に十人の騎士団員がやって来た。彼等は黒塗りの馬車に、団長とチンとエレを乗せている。

 彼等の様子を、カナイ達は少し離れたところから眺めていた。

「カストル兄さんが、遺跡に入る前に、鳥を首都へ飛ばしていたんですって」

「あの人、僕が目の前で変身しても、まるで驚かなかったんだ。つまらないったらなかったよ」

 肩をすくめるオークに、シスカは笑った。

「それは、仕方ない

もっとみる
カナイと八色の宝石㉑

カナイと八色の宝石㉑

「うわー、最悪だっ。ん? いででででっ。爪っ。爪が刺さってるっ」

 いち早く暗闇に慣れたチチが、足でアークを掴んで飛び立ったらしい。チチの羽音と、チチの鋭い爪が背中に刺さって悲鳴を上げるアークの声が、カナイ達の耳に届いた。次いで、団長の笑い声が耳に届く。

「うわはははは、動ける。動けるぞ。今度こそ、池に突き落としてやる」

「痛っ。団長、俺はエレですっ」

 闇雲に伸ばされた団長の腕が、エレに

もっとみる
カナイと八色の宝石⑳

カナイと八色の宝石⑳

 テンデとシスカは、手首と足首を細い縄で縛られていた。本来は、テントを張る時に使用する縄の予備だ。強度が高くて、刃物が無いと切れそうにない。二人が捕まっている部屋の中は既に漁られた後で、いろいろな物が散乱していた。しかし、肝心な刃物が見当たらない。しいて言えば、壁に掛けられた弓矢の矢じりで、縄を削れるかもしれない。

 二人が捕まっている部屋の出入り口には、チンとエレがいる。彼等は見張りという役目

もっとみる
カナイと八色の宝石⑲

カナイと八色の宝石⑲

「それより、どうして僕まで、ネズミの言葉が分かるんだろう? ウークは、自分が偉大な魔法使いだからって言っていたけど」

 首を傾げるシュリに、アークは寄ってきた頭を避けるように身を低くした。オークは否定するように、手を横に振っている。

『ウークは僕達と同じ、普通のネズミさ。それに、坊ちゃんが分かるんじゃなくて、僕達が坊ちゃんに合わせてるんだ。この石の力でね』

『そうそう。相手の言葉を聞ける耳と

もっとみる
カナイと八色の宝石⑱

カナイと八色の宝石⑱

 対してシュリは、カナイ達の反応に目を丸くする。

「ちょっと、みんな。落ち着いて」

 シュリがその場をなだめようと両手を挙げた時、彼の背後から金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。シヤークの護衛達だ。鎧の音と、複数人の足音とが、徐々に大きくなる。

 シュリは後ろを振り返ると、大きく息を吸った。

『兄上っ。父上も、母上も。申し訳ありませんっ。僕は、カナイと一緒に向こうの世界に戻りますっ』

 

もっとみる
カナイと八色の宝石⑰

カナイと八色の宝石⑰

 紫の光は、アークを包み込んだ後、上へ上へと伸びていった。シュリの母親の身長と同じ高さにまで成長すると、煙のように消え去った。と同時に、アークの姿も無くなっていた。

 代わりに現れたのは、もう一人のシュリの母親だった。

『シュリのお母さんが、二人いるっ』

『触れたものの姿に変化できる。これが、紫の石の効果だよ』

 花飾りと共に結い上げられた銀色の髪に、シュリにそっくりな細面の顔。純白のブラ

もっとみる
カナイと八色の宝石⑯

カナイと八色の宝石⑯

『じゃあ、そろそろ行こう。お嬢さん』

 水面に大きな波紋だけが残されたところで、アークが口を開いた。

『通気溝は慣れているから、任せておくれよ』

『下調べも、ばっちりさ』

 二匹のネズミは胸を叩くと、カナイの前を歩き始める。カナイは四つんばいになって、ネズミ達の後を追った。通気溝の中は暗くて、カナイの片手で届く範囲くらいしか見通しが利かない。それでも直線が多く、分かれ道ではネズミが待ってい

もっとみる
カナイと八色の宝石⑮

カナイと八色の宝石⑮

『チョット、カナイ。何ヲ言イ出スノヨッ』

 チチは、羽をばたつかせて抗議する。カナイは、目を伏せた。

 昨夜、初めて見たシュリの表情や、彼の母親の涙を、カナイには忘れることができない。もしもカナイが家族と離されたら、嫌だし悲しい。それは、きっとシュリも同じだ。

『私はシュリを助けたつもりだったけど、本当に正しいことだったのかな? 今、家族と引き離しても良いのかな?』

 カナイが疑問を口にす

もっとみる
カナイと八色の宝石⑭

カナイと八色の宝石⑭

 チチの声に、カナイは渡り廊下の外へと飛んだ。渡り廊下の下を、青い鳥が潜り抜ける。カナイは青い鳥の背中の上に落ちると、首に腕を回した。

『アラカジメ、手綱ヲ付ケテアルノ。シッカリ掴マッテ』

 カナイは手探りで手綱を見つけると、両手でしっかりと握った。

『掴んだよ』

『ソレジャ、高度上ゲルワヨ』

 青い鳥が大きな翼を動かすと、徐々にカナイの頭が上を向いていく。カナイは落ちないように、手綱を

もっとみる
カナイと八色の宝石⑬

カナイと八色の宝石⑬

 木の扉が開く音が、塔内に響く。カナイの耳にもしっかりと届いて、目を覚ました。上半身を起こすと、背中や腰が少し痛みを感じる。

 階段を上る足音を聞きながら、カナイは頭の上で両手を組んで伸びをした。両手を下ろしたところで、足音が止まる。

『起きていたか。父上がお待ちだ。ここから出ろ』

 シヤークは上着の中から鍵の束を取り出すと、一本の鍵を選んで鍵穴に差した。鈍い音を立てながら、鉄格子の扉が開か

もっとみる
カナイと八色の宝石⑫

カナイと八色の宝石⑫

『宝石が力を持つのは、常識じゃないか』

『そんな常識、私の村には無いよ』

 ネズミは大きな口を開けると、手にしていたクッキーを落とした。クッキーが水の中に落ちて、跳ねた水滴がネズミの腹に掛かった。

『そんな馬鹿な。お嬢さんの村は、どんな田舎にあるんだい?』

『確かに、首都から離れてるし、田舎だけどね』

 カナイは眉を吊り上げ、口をとがらせた。森の緑が濃くて、川と海の水がきらめいて、風が歌

もっとみる
カナイと八色の宝石⑪

カナイと八色の宝石⑪

『母上。この者は、私が客室へご案内いたします。どうぞ母上は、シユーリと自室にてお過ごしください』

 シュリの母親は、シヤークを見上げて頷いた。

『ありがとう、シヤーク』

 シヤークは母親に頭を下げると、護衛の一人を指差して、カナイ用の毛布を持ってくるように指示を出した。護衛は鎧を鳴らしながら、部屋を飛び出していく。

『では、お客人は、こちらへ』

 カナイは何度もシュリを振り返ろうとするが

もっとみる
カナイと八色の宝石⑩

カナイと八色の宝石⑩

 シュリは部屋に戻ると、右側の壁を指差した。カナイも窓から身を乗り出すのを止めて、シュリが指を差している壁を見る。文字のような記号のようなものが、青い絵の具で壁一面に書かれていた。

「追われて部屋に入った時は、床に魔方陣が描かれているだけで物なんて無かったし、壁にも何も書かれていなかった」

 カナイは、右側の壁に近付いた。途中で椅子の山に腕が当たり、椅子の山が大きな音を立てて崩れた。それでも気

もっとみる
カナイと八色の宝石⑨

カナイと八色の宝石⑨

 後方から団長の叫び声が響いて、シュリもカナイも走る速度を上げた。それでも、背が高いチンとエレが走れば、追いつかれるのは時間の問題だ。カナイが気にして後ろを振り返るのを、シュリが止めろと厳しく注意する。

 そんな中、前方を走っていたシスカが、部屋の中に入った。少し間があって出てきた彼女は、膝の高さまである白いつぼを引きずっている。カナイとシュリがシスカを追い抜いたところで、シスカはチンとエレに向

もっとみる