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デザインがDXに与えるインパクト!富士通株式会社 デザインセンター長 宇田哲也氏ご講演

こんにちは、NEXCHAINです。

前回に引き続き、今回もNEXCHAINの会員向けイベントとして実施したコーポレートピッチの内容をご紹介します。

今回は、会員企業の富士通株式会社よりデザインセンター長の宇田哲也氏にご登壇いただき、「Transformation by Design。デザインがDXに与えるインパクトとは」と題して、富士通デザインセンターの取り組みや、DX推進のための社内の意識変革のプロセスをご紹介頂きました。今回はその内容をかいつまんでお届けいたします。


【富士通株式会社 デザインセンター長 宇田 哲也氏 ご講演「Transformation by Design。デザインがDXに与えるインパクトとは」】

宇田哲也氏 ご経歴

日系大手のシリコンバレー拠点で自組織のトランスフォーメーションを推進した後、2020年1月に富士通入社。同社のデザイン経営に向けたトランスフォーメーションをビジネス×テクノロジー×デザインで牽引。

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【以下、宇田氏のご講演内容】

デザイン領域の拡大と、富士通とデザインとの関わり

 最初に富士通の現在地について、少しご紹介させてください。

「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます。」

これは富士通のパーパスです。一昔前ならビジョンや存在意義と言われていたものですが、我々は「パーパス経営」、つまりこのパーパスのもと、従業員ひとりひとりがどう貢献できるか考え実践する、そうした取り組みを進めている会社です。

意外に思われるかもしれませんが、自由度の高い独立独歩・分散型の会社で、やりたいことに対する制限が少ない文化です。

私のこの金髪も、センター長なのに大丈夫なの?と聞かれることがありますが、これもデザインと自分をどうブランディングするか考えた結果です。このように自由度のある文化でデジタルソリューションを産み出していこうという会社が富士通です。

ここからは、デザインの話をしましょう。ほとんどの人は、デザインといえば色や形を決める・創り上げることとお考えではないでしょうか。

私も2-3年前まではそうでした。デザイナーといえば服を作る人、パワーポイントを綺麗にする人、というイメージ。しかし、現職に就いて分かってきたのは、デザインというものはもっと幅広く「人起点で問題を解決すること」であり、デザイナーは「現状をよりよくするために考え行動する人」だということです。

  デザインの領域や役割は時代と共に拡大しています。

元々はハードウェアの外見を「デザイン」していましたが、それがソフトウェアやUXにも活用されるようになり、近年ではデザイン思考を活用した協創や未来デザインといったものもデザイン領域に含まれるようになりました。

そして富士通ではデザインを経営にも取り入れようとしています。今までの数字を追いかける左脳的な経営に、ひらめきやセンスといった右脳的な思考もまた経営の一要素として扱おうとしているのです。

テクノロジーやデータの可能性を広げる「デザイン」

 過去の日本ではテクノロジーを用いて発展した企業が多かったことから、デジタル化で何かが良くなる、という考え方が一般的のようです。その結果、データ分析や組み合わせでこんな便利なソリューションができる、と押し出していくものの、それを活用するユーザーが置き去りになる状況が多くみられます。

富士通が推進するDXでは、DXを更に「ビジネスモデル変革(BX)」と「コーポレート変革(CX)」の2つに分けています。その上で、「人」に目を向け、人の体験がどう変わるか、逆に実現のために人がどう変わる必要があるか、を念頭に置き、デザインセンターが中心となって、ビジネスの枠組みや組織の変革を進めています。

BXは長いバリューチェーン/サプライチェーンを中抜きして、最初に素材を入手した人がエンドカスタマーに直接刺さる製品を製造販売するようなもの、と言えばよいでしょうか。とはいえ、その抜かれた工程をこれまで消費者を特別意識してこなかった製造業者が簡単に作り上げられるのかと言えば、そうではないですよね。エンドカスタマーに喜ばれる製品を提供するためには利用者となる「人」を第一に考えて設計する事が重要です。

 ここからは富士通の事例になりますが、特にDXを推進するうえで重要な組織変革についてお話します。先述した「デザイン経営」を実現するポイントとして「ワンチーム」、「ユーザーイン」、「積極思考」、「問題解決集団」の4点が挙げられます。

この4つのポイントを実現するための富士通の取り組みのひとつが「exPractice」

例えば、会社のパーパスに添ったビジネスアイデアを提示しても、会議で数字の話を出されて終わってしまう、というのはありがちな話です。そうならないよう、数字以外に目を向ける組織文化を醸成することが目的です。「exPractice」のプロセスは、まず経営層にデザイン経営の本質的な考え方、柔軟な思考を持つ心構えなどを研修で身に着けていただき、その後、所属する組織の部下に対して自ら教育してもらうというもの。トップからデザインへの理解と実践を率先しているのがポイントで、富士通にも徐々にデザイン経営の考え方が浸透してきました。

また、並行して従業員のスキル別にデザイン思考の学習プログラムを展開しています。現状をより良くするために「人視点」を身につけ、考え、実践できるスキルを段階的に習得するプログラムです。富士通ではいま、マインドとスキルの改革を並行して実施しています。

「exPractice」は一例でして、他にもいろいろとデザインの力を借りて富士通はDXを推進しています。これまで他社案件も含めてDX案件を手掛けてきましたが、そこで感じた課題感として、BXの領域では技術先行でシステムや製品等のHOWの検討を進めてしまい、そもそも課題設定をするWHATの面が考慮されないことが多くありました。やみくもにデータを取得してデジタル化(HOW)するのではなく、何のために(WHAT)、どこをデジタル化すれば真の目的達成に繋がるのか、そのためにどう言ったデータを利用する必要があるのか等、課題解決のアーキテクチャーを意識した検討が重要です。

また、CXの領域ではサイロ化が進行し、部門間の知識の共有が十分に行われないという課題が見られました。部門間の縄張り意識を取り除く努力をするとともに、すべての従業員が幅広い情報にアクセスできる仕組みの整備もDXを進めていくためには重要です。

本日お話したように、テクノロジーを、「人視点」「デザインの力」を使い再構築することで、これまで利用者にとって価値を感じることが難しかったテクノロジーも利用者目線で生活をより良くするものに生まれ変わることが出来ます。また本来データとデザインは相互補完の関係にあり親和性も高く、テクノロジー重視のデータオリエンテッドに利用者目線のデザインを掛け合わせることでもっとデータの価値を高め、データビジネスに付加価値が提供できると考えています。

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データとデザイン、テクノロジーとデザイン、いずれも従来はあまり見られなかったアプローチですが、富士通のインハウスデザイン組織だからこそ実現できる取り組みですね。

NEXCHAINも企業間の情報やアセットを連携する事で社会に新たな価値を提供する事を目的としている団体ですが、企業目線で考えてしまう事も多々あり、今回のご講演を受けて、考えた仕組みを社会に受け入れて貰うために、初期検討から「人」にフォーカスしてアイデアや枠組みを検討していかなければならないと改めて感じさせられました。

今回は20名以上の方にご参加頂きました。残念ながら記事化はできないのですが、今回のご講演ではその場限りのお話も多々あり、その後のオンラインサロンも活発な意見交換があり非常に盛り上がりを見せました。

※オンラインサロンの内容は、情報開示範囲の規定に従い、こちらでは割愛させて頂きます。

【NEXCHAINコーポレートピッチ・オンラインサロンとは(再掲)】

 NEXCHAINでは、会員企業によるコーポレートピッチを定期的に開催しています。テーマはそれぞれの会員企業から持ち寄って頂き、会員企業の業界課題や知見・アイデア等を他会員企業へ発信します。新しい知見やフィードバックをもらうことでアイデアのブラッシュアップや共創のパートナーを募集する活動です。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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