見出し画像

【エッセイ】春特別企画②─東京にある桜がきれいな場所─ 『佐竹健のYouTube奮闘記(64)』

 お花見へ行ってきた。

 私は春になると、いつもお花見に行く。行く場所は主に、都内23区が中心だ。それ以外だと、東京都内なら武蔵野市にある井の頭公園、東京の外だと鎌倉や川越といったところだ。

 鎌倉行きは今年も考えていたが、一身上の都合で行くのを辞めた。また、埼玉の花見に関しては、川越ではなく、どこか別の場所に行こうと考えている。


 お花見といえば、行き先がいつも都内、特に23区になることが多い。

 これに関しては、自分の住んでいるところだから行きやすい、というのが一番の理由だ。それ以外にも、東京には桜がきれいな場所が多くあるということもある。

 東京では、桜の花を至る所で見かける。川沿いの道、駅から少し離れたところにある通り、公園。とにかく、いろんなところで見かける。やはり、原産地である染井村が豊島区にあったのと、都の花であることが関係しているのだろうか? ちなみに今は染井村があった辺りは、巣鴨駅から東に少し歩いたところから駒込駅の前辺りだった。

 品種としては、ソメイヨシノが圧倒的に多い。圧倒的に多くあるソメイヨシノの並木の中に、ヤマザクラやオオシマザクラといった、古くからある花が咲くと同時に芽が生えるタイプの桜が紛れている。

「花のお江戸」

 江戸の街の繁栄を言い表したこんな言葉があるが、桜イコール花という意味でも、十分通じる。いや、現代の東京は、江戸市中に周辺の村を足したものだから、本来言われている江戸とは変わったものになっているが。


 個人的に特にきれいだと感じるのは、上野公園と墨堤、井の頭公園の3つだ。他にも石神井川沿いの桜や飛鳥山の桜、靖国神社の桜なども好きではあるが、個人的にはこの3つの桜がとりわけ好きだ。

 上野公園は不忍池の桜もきれいであるが、同じく山側の桜もきれいだ。

 山側の桜は、暗めのグリーンの常緑樹の葉やまだ芽吹いていない木の梢の黒が、いい感じのコントラストになっていて、桜の白を際立たせている。他にもソメイヨシノやヤマザクラ以外に、オオカンザクラなどの早咲きの桜が見られるので、一足先に花見を楽しむことができる。

 個人的に好きなのは、不忍池付近だろうか。

 不忍池周辺は桜の時期ではなくても、夏は蓮の花が楽しめたり、秋や冬でも周りを歩いていると落ち着くのもある。だが、それでも一番好きなのは、春の不忍池だ。

 春の不忍池の池は、日当たりがいい。その日当たりの良さが、池の黒と相まっていい感じに桜の白を引き出している。

 池の端に鳥がよくいる。よくいる鳥としては、鳩を中心に、雀、そして謎の白い鳥だろうか。

 鳩は東京のどこにでもいる。公園へ行けば、必ず1匹は見かける。様々な生き物のいる上野公園にも、当然のようにいる。

 雀が一番かわいい。茶色いずんぐりむっくりした体に白い下腹部、そして小さく黒い嘴とつぶらな瞳。何もかもがかわいい。

 特にかわいいと感じるのは、小さな嘴で地面をついばみながら、ちゅん、ちゅん、と鳴きながら跳び跳ねているところだろうか。あの光景は、見ているだけでも癒される。

 雀も鳩同様どこでも見かけるではないか? と思う人がいるかもしれないので書いておくが、東京には雀はいない。特に都区部は。見たことがあるのは、板橋の小さな公園ぐらいだろうか。

 謎の白い鳥については、足は朱色に近い赤で、大きさは鳩と同じくらいか少し大きく、羽毛は全体的に白いが、翼の方は灰色がかっている。こんな感じの鳥をよく見かける。その白い鳥は『伊勢物語』で、在原業平が隅田川を渡って下総国へと向かうときに見た都鳥に非常によく似ている。もしかしたらだが、都鳥である可能性が高い。

 ちなみにこの鳥は、上野公園だけでなく、後ほど話す墨堤でもよく見かける。

 墨堤の桜は、隅田川のほとりを流れているということがまず尊い。隅田川と桜という組み合わせだけでも、江戸を感じることができる。

 今となっては、小さなビルやらが続いているが、かつては時代劇とかで見る上に桜が植えられた土手だったと考えると、少し風情があるように感じる。桜と同時にスカイツリーを見ることができたり、少し歩いて浅草寺へと参詣できるのもポイントが高い。

 また、対岸にある両国や向島側の桜を見ることもできる。両国や向島側の桜についてだが、人工物である首都高の高架があるから、未来の中に過去の遺物があるような不思議な感じがするのは、私だけだろうか?

 井の頭公園の桜については、幽玄の極致にあると言える。

 様々な木々により周りを囲われていることから、陽の光がそれほど差し込まない。それによりできた陰により、池の水も黒々とした感じに見える(池の水は浅瀬では底が見えるくらいにきれい)。その陰が桜の白をぼんやり引き立たせているところが、日本画に見える桜のような儚い美しさを演出している。

 井の頭公園の桜だが、弁天様の辺りが穴場である。あの辺りまで来ると、吉祥寺駅の近くや神田川の碑周辺、ボート乗り場の辺りよりも格段に人が減る。だから、池の対岸とを繋ぐ橋から遠巻きに満開の桜を眺めたり、わずかに植えられている桜をじっくり愛でることができる。

 弁天様の桜は、和を感じられていい。池の中にある島の弁天堂の建物の屋根と桜の組み合わせが何とも雅やかで気に入っている。


 不忍池、墨堤、井の頭公園。いずれの桜の名所も、水場にある。やはり、桜と水場というのは、よく合う。水によりできる青味を帯びた黒い背景が、白い桜の花と合うからなのだろうか。

 そんな桜も、そろそろ散ってきている。このエッセイを書いているときには、葉桜となっているのではなかろうか。ものによっては既に散っていることだろう。

 桜が散ると同時に、夏の足音が近づいてきている。今年の春は気温が低いので過ごしやすいが、これから夏が来ると考えると、非常に憂鬱な気分になってくる。夏は来ないで、このまま早く秋になってほしい。


【前の話】


【次の話】


【チャンネル】


【関連動画】

書いた記事が面白いと思った方は、サポートお願いします!