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今野元 『教皇ベネディクトゥス一六世 「キリスト教的ヨーロッパ」の逆襲』 : 確信的保守主義政治史学者による 転向左翼的 保守主義教皇の擁護論

書評:今野元『教皇ベネディクトゥス一六世: 「キリスト教的ヨーロッパ」の逆襲』(東京大学出版会)

本書の内容は、タイトルのとおりです。
著者は「あとがき」にも書いているとおり、「伝統」を重視し「現代化」を好ましく思わないギリシャ正教に連なる「愛国的」な人で、そうした立場から、第2バチカン公会議に象徴されるカトリックの近代化・リベラル化に抵抗して保守反動との批判を受け続けた前ローマ教皇ベネディクトゥス16世(ヨーゼフ・ラッツィンガー)を感情移入的に擁護し、その敵対的ライバルであったハンス・キュンク(本書では「キュング」と表記)を、終始目の敵にして扱き下ろしています。
具体的に言えば、キュンクによるラッツィンガー批判には厳しく論拠を問う反面、ラッツィンガーの発言の矛盾には親切に解釈的フォローを入れるという具合です。

著者の頻用する言い回しは「抑々(そもそも)」で、これは著者の「還元主義的単純化」思考を端的に表しており、著者はカトリック的ダブルスタンダード(あるいは二枚舌)を「単純な善悪二元論ではない」というかたちで擁護しながらも、自身はかなり単純な「左翼・保守」などの二元論にたって、左翼・リベラル・庶民派などをベタなまでに「悪役」に仕立てています。
つまり、批評的言説としては、極めて薄っぺらであり党派的なものでしかありません。すくなくとも、この値段で「東京大学出版会」から出すような本だとは思えません(庶民がありがたがる綺羅びやかな法衣の権威を高く評価する著者らしい、価格と版元だとは言えるでしょう)。

一般の、つまり非クリスチャンにわかりやすく言えば、著者の今野元は「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーと思想的に近い(似通った)人だと言えるでしょう。
ただ、さすがに通俗書とは違って、よく調べて書いており、著者自身の語る「評価」を差し引けば、事実関係の勉強にはなるし、ベネディクトゥス16世に典型されるキリスト教保守派がどの程度のことを考えているのかもよくわかって、とても参考になったとは言えるでしょう。

初出:2016年1月2日(Amazonレビュー)
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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前ローマ教皇、虐待行った聖職者の検討会議に出席したと認める
2022.01.25 Tue posted at 13:40 JST「CNN.co.jp」

ローマ(CNN) 前ローマ教皇のベネディクト16世(94)は24日、虐待を行ったカトリック教会聖職者に関して検討した1980年の会議に出席していたことを認めた。これまで出席を否定していたが、「自身の声明の編集上の誤り」が原因だったとした。

ミュンヘン大司教区で起きた聖職者による虐待の調査結果は先週、公表された。それによれば、前述の会議の議事録にはベネディクト16世の出席が記録されており、前教皇による出席の否定は「信じがたい」との評価を受けていた。ベネディクト16世は77~82年に同区で大司教を務めていた。

前教皇は、個人秘書を通じてカトリック系の通信社に出席を認める声明を出した。この秘書によれば、誤りは「悪意から生まれたもの」ではなく、調査に対する「声明の編集過程で生じた誤りの結果」だったという。

秘書によれば、前教皇はこの件について「大変申し訳ない」気持ちで、許しを乞う姿勢を示している。前教皇は後日、詳細な声明を発表する予定。1900ページに及ぶ報告書に目を通すのに時間を要するとしつつ、これまで読んだ内容から、被害者が受けた「苦痛に恥と痛みを感じる」と述べている。

ベネディクト16世は2013年、この数百年で初めて教皇を生前退位した人物。在任中には世界中のカトリック教会内の性的虐待スキャンダルに見舞われていた。今回の報告書は前教皇の名声を損なう恐れがある。

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