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薬が効かない……?

先日、処方薬の失敗談を書いたのだが、それを書きながら、もともと書こうと思っていたこの記事を「やっぱり書かねば!」とエンジンが掛かった。

なにせ、「そこのアナタ!処方されてるその薬、意味ないかもしれません!」って話だ。
断っておくが、別に怪しい宗教とか民間療法とかじゃない。単に体質の話。

今の通院先で知った事実だ。
その疾患に使われる 一般的な薬が、全く効果を示さない人がいるらしい。

誰って、私。

私は現在、精神疾患で通院中だ。
(詳しくは過去の記事『自分のことをぐだぐだ書いてみる』を見ていただきたい)

今、通院しているクリニックは4件目。
初めて、大きな問題もなく数年に渡ってお世話になっている。
余談だが、クリニックを変わる度に自宅から遠くなっていった。どうしても通院に時間がかかるが、セカンド・オピニオンをさくっと通り越しているとあって、つまり手近じゃ済まされない問題だったんだな、と思っている。

さて、今のクリニックに至るまで そこそこ病院迷子(?)をしたわけだが、理由といえば、病状が良くならなかったからに他ならない。
とくに、処方される薬には難儀した。
病状には1ミリの変化もないのに同じ薬を延々と出し続けられたこともあれば、これでもか!これでもか!とあれこれ追加されまくり、精神疾患方面の薬の特徴で ブクブク太りまくった(真面目な話、服が入らなくなった)こともある。

過去すべての通院先で、薬も込みの治療がうまく行かず、そこから医師やクリニックへの不満……というより、不安が出てきてしまい、通院をやめてしまった。

私の場合、なにせ社交不安障害とパニック障害を抱えている。
おまけに そもそもHSPときているから、通院自体がそれなりに負担で、そこに医師との信頼関係に不安を覚えてしまうと、もうアウトだ。続けられない。

通院にも、それに伴う対人関係にも疲れ果て、最低でも1年はブランクが開いてしまって、治療すら出来ていないことに、さらに落ち込むのがお約束のパターン。

今のクリニックは、インターネットで自分の疾患(当初、明確にわかっていたのは社交不安障害のみ)に合いそうなところを探した。
何ヶ所か候補があった中で、通院の条件などを鑑み、さらには医師のブログまでチェックして、残った候補が2ヶ所。
最終的に選んだのは、投薬治療を得意としているクリニックだった。

1から医師と信頼関係を築かなければならないことを踏まえると、ボロボロ状態だった自分が、すぐにカウンセリングでどうこうなると思わなかったのもあるし、苦い思い出になっていた投薬治療に多少なりとも期待できるなら、と思ったのもある。

果たして、当たった。

未だにけっこうな量の(とはいえ もちろんちゃんと処方された)薬を飲んではいるが、ちゃんと効果を発揮しているのを実感できている。

体感ももちろんだが、ここで、冒頭のあれだ。


その疾患に使われる 一般的な薬が、全く効果を現さない人がいるらしい。

誰って、私(2度目)。

初めて今のクリニックを受診したとき、ひとつだけ薬を処方された。
「この手の病気で1番最初に使ってみる薬です」
そう説明を受けたとき、薬の名前に聞き覚えがあった。
以前のクリニックで処方されていたからだ。薬の名前は失念してしまったが、「あー、またアレかー……」と思ったので、典型的なやつだと思って頂きたい。
まずは試しとのことだったので、とくに何も考えずに、1週間 服用してみた。

見事なくらい、何の変化もなかった。

あまりにも あれこれごっそり服薬していた時期があったので、これくらいじゃきかないんだなー……と思った。のだが。

翌週、変化がなかったことを伝えると、薬を系統だてて図解した冊子を見せられ、冊子の左半分くらいの枠をまるっと示しながらこう言われた。

「じゃあ、こっち系の薬は全部効かないと思います」

………………なんですって?
え、効かないって言いました、今?
図のこっち側、全部?
待って待って待って、ざっと見ただけでも私が前のクリニックで処方されてた薬が大盤振る舞いですが………?

(ええええぇぇぇ〜〜〜〜!?!?!?)

よく声に出さなかった、自分(謎の自画自賛)。

「なので、この反対側の薬を使って行こうと思います」
「はい……」

そりゃ効かないなら別方向から攻めるしかない。
しかし、全部 効かない……全部《効かない》……そんなことってあるのか!?

いや、冷静に考えれば人間は千差万別だし、効く薬とそうじゃないのがあるのはわかる。
ただ、私の認識は『効きやすいか、効きづらいか』で止まっていた。『効きづらい』が、効果ナシのレベルまで行くと思っていなかったのだ。
そのうえ、系統だてて そっちはすべて効かぬとな……

なるほど、今までの治療がさっぱり意味がなかったわけだ。納得しかない。

いやいや、まだここからの治療がどうなるかわからないし……と、過度な期待はしまいと思ったが、半年足らずでわかった。
『反対側の薬』は効いた。社交不安障害やパニック障害の症状を中心に、ジワジワながらも体調は改善したのだ。

今もまだまだ絶賛治療中だし、正直、完治なんてするのか?と思っているのも事実だが、生活は圧倒的に楽になった。目眩やら震えやら呼吸困難やら、異常な緊張感に伴うアレコレは、完全に消えないまでも、確実に軽くはなったのだ。

ちゃんと効いているのをマジマジと実感したのか、薬がなくなった(きれてしまった)ときだと言うのがナンだが、台風で通院できず、処方薬が尽きたときはボロボロのへろへろだった。気圧病の気もあるので なお体調は悪かったのだろうが、だとしても、今のクリニックに掛かる前、私はどうやって生活していたのだろうと真剣に悩むレベルで、心身共に動けなかった。こうなると、薬の効果と、処方の的確さにただただ感謝だ。


その的確さは、先生の膨大な知識や経験と、しっかりした問診の上に成り立っているわけだが、通院が長期に渡るにつれ、私はどうやら、その先生さえも悩ませている。
処方が変わるたびに簡単な説明をしてもらえるのだが、それがまさに試行錯誤。あれをちょっと増やしてみる、こっちを減らす、これを入れるからあれを抜く……薬の量や飲み合わせまで、これを試行錯誤と言わずしてなんと言おうか。
最近など、前回の通院からの体調の変化を伝えると、先生が長考に入る。私からパソコンの画面がちゃんと見えるわけではないが、恐らくは私の処方履歴と症状の変化が記されていると思われる、長ーいスクロールをくるくる動かしながら、場合によっては数分に渡って沈黙が流れる。いたたまれない。いや、専門家なのだから腹を括ってお任せすればいいのはわかっているのだが、他の患者さんでいるんだろうか、あんな長考タイムが入るひと……。居たとしても、少数派じゃなかろうか。

さっぱり効かない薬があるくせに、効く薬は効きすぎる体質なので、薬の量の微調整もすごく多い。直径8ミリもないような錠剤を半分とか、4分の3とか、そんなのが当たり前なので、薬剤師さんにも、お手数おかけしまくっている。そもそも処方される量(種類)も多いし、分包もお願いしているし、私の薬の用意はとにかく手がかかるのだ。
そんなことだから、私のあとからやってきた方が「順番前後いたします」と呼ばれても、「そうですよね、すみません、時間かかりますよね」となるし、「お待たせしました」と言われても「全然待ったと思ってません、お手数おかけしました」と内心、深々頭を下げる。全然、行動と言葉にできていないのがまさに、社交不安障害だけども。それでも、クリニックや薬局の会計で、ヘンに焦らずに小銭を出したり、蚊の鳴くような声でしか言えなかった「ありがとうございました」が ちゃんと声になるようになっただけでも、私にとっては大きな進歩だ。

カウンセリングももちろん重要だが、私のように、症状が目眩や呼吸困難、震え、けいれんなど、あからさまに身体的な面に出る場合、投薬治療は有効且つ重要なのだ。日常生活への影響が全然ちがう。
薬が効くのはもちろん、的確に処方されていればの話だけれども。

当然、私は医師でも薬剤師でも、そっち系の研究者でもないので、自分の体験談としてしか、この話はできない。
ただ、「まったく効かない薬がある」というのは 私にとって衝撃の事実だったし、この事実、情報は、共有して意味のないものではないと思った。

薬を疑えだの、医者を疑えだの言うつもりはない。ちゃんと診療していたって、精神疾患など、一筋縄でどうこうなると思う方が間違いではないだろうか。

ただ私の場合、結果論ではあるけれども、以前のクリニックでは全く効かない薬を大量に処方されていた。その期間、時間も精神力も体力も財布の中身も、ただただ削られる一方だったのは事実で、後から思うと、もう少し早く(当時のリニックでの治療を)諦めても良かったのではなかったかと思っている。
確かに、薬は処方されていた。されていたが、それがきっちりと診療をして貰えていたことになるかと言えば そうではないと、あとになって気付いた。予約していても待ち時間が最低30分、診療時間は1分――――これで、私の症状の何がわかって、あれだけの薬が処方されていたのだろう?

薬を処方されると安心するのは否定しない。
飲んでいれば良くなるはずだと、私も希望を持って服薬していたから、ブクブク太っても堪えていられたのだ。
けれど、SSサイズをはいていたスカートが、ついにMサイズでも危なくなったときに、心が折れた。
自覚できる改善のないまま、およそ20キロも太り、あれこれと、服薬による弊害のほうが強くなって、通院をやめてしまった(服薬をやめたとたん、体重は萎むように元に戻った)。

そして、今のクリニックにたどり着いた。

今のクリニックでも、最初に「この手の薬はどうしても太ります」と言われた。
覚悟したし、実際、太ったが、せいぜい4キロだ。
正直、この差はなんなんだ、と思わずにはいられなかった。

精神疾患に対して、外野が騒ぐことほど意味のないものはないと、私は身を以て知っているが、真面目に通院し、真面目に服薬している私の経験として、知っておいてもいい情報として、この記事を書いた。

精神疾患の場合、とくに顕著なことだと思う。

医師と患者に相性があるように、
薬と患者にも、相性があるのだ。


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