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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 青空文庫特集!10月3日~10月9日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。ついに10月となりました。早いもので、読書記録日記も4か月目がスタートです。今週は遠方の病院に行ってまいりました。15年前に手術した経過を診察してもらうためです。14年前から異常なしでした。ただ、道のりが遠く……(笑) 今回は移動中でも読めるように青空文庫特集になります。今回の外国文学はフランス。フランス文学の翻訳家の豊島さんの著書にお世話になりました。

10月3日

武田百合子『遊覧日記』予約。少し新作エッセイで忙しい日でした。ゲラチェック、直しを入れるなど。武田百合子『富士日記 不二小大居百花庵日記 下』回送中。

10月4日

武田百合子『遊覧日記』回送中。とても慌ただしい日だけれどがんばれました。

・豊島与志雄『ナポレオンの遺書』青空文庫

ナポレオンは地位と名誉を確立しましたが、「ふざけちゃあいけない」と豊島与志雄さんは語ります。自分の表現というものを軽んじていたようにも思えるナポレオン。彼が晩年どういうことを思っていたのか。セント・ヘレナにいる、流刑の時の時の記録が残されていました。彼は革命家でありましたが、表現者ではなかったようです。わたしも自分の表現に対して、「ふざけちゃあいけない」。短く読めるのでおすすめです。

・豊島与志雄『或る男の手記』青空文庫

私という男が光子という奔放な女性に恋をしてしまう。しかし男には妻がいて、家庭があって。恋というのは何歳になってでもできるし、だからこそ夫婦というものは難しいことなのかもしれません。この小説の中で光子自身はとても「かかわってはいけない女性」というファムファタル的な存在にいます。自分のことが憎くてしょうがないという厭世的で投げやりな気持ちから、男たちに任せてしまう。もっと自分のことを愛せたら、彼女も男も変われたのかもしれません。まず自分のことを大切にできるまで恋はしないほうがいいです。そして、自分のことをよく知ってから恋をするといい恋ができるかもしれません。

10月5日

今日からアナログとデジタルのいいとこどりをしていきます。定期検診その1。ずいぶんとこの季節の変わり目は体調を崩しやすいそうです。みなさんもお気をつけて! 新作一編。伊吹有喜『なでし子物語』予約。

・田山録弥『バザンの小説』青空文庫

たった7ページの書評なのですが、ルネ・バザンについてかなり酷評ですね苦笑 フランスと日本ではもともと価値観が恋愛においても生活においてもこの時代的なものとして全然違うので、ほう、こういう意見もあるのか、と流して読むこともできます。「少年の恋」において、どれだけ比重をかけられるのかは日本の作家とフランスの作家とはかなり違うようにも思えます。そういう文脈をたどりながら、バザンを逆に読みたくなりました。

・豊島与志雄『或る作家の厄日』青空文庫

恋する作家が狂気に陥ってしまうまでの日を描いた小説です。人妻を愛してしまった小説家には気概がありません。そして自分でもそのことをわかっています。この時代、こんなに赤裸々に「男の悲恋」を描いていたのはもちろん文豪たちもそうでしたが、とてもリアル。でも今になって読んでみると、もう少し女性の側にも立ってくれといいたくなります。夫に不満がたまっている女性は優しくしてもらいたいだけだと思うし、自由になるということに憧れがあるのに夫に伝えられない。やっぱり夫婦はコミュニケーションなのだなと思います。

10月6日

今日は手術した経過をみせに病院に行ってきました! 少々長旅でしたが、がんばりました! 今年も異常なしでした、ありがたい……。往復半日の旅でしたが、なんとか帰ってきました。イベントの準備をしておくなど。伊吹有喜『なでし子物語』回送中。

・豊島与志雄『ジャン・クリストフ』青空文庫

ジャン・クリストフはロマン・ローランの名著ですが、その解説文になります。当時のフランスが光であったこと、ドイツとの関係などを改めて考えさせられる物語だと書いてあります。フランスは光。芸術家にとっては憧れの土地です。改めてジャン・クリストフも読んでみたいと思いました。

・豊島与志雄『強い賢い王様の話』青空文庫

これはかなり児童文学寄りですね。高いところへ高いところへ登ってしまう王子の前に、不気味な老人が現れる所から物語が始まります。その老人は世界のどんな高い所でも連れて行ってくれるのですが……この小説が教えてくれるのは、なにかを達成した時にその「下りていく道」をちゃんと考えておくことかもしれません。

・豊島与志雄『新たな世界主義』青空文庫

今回はフランス文学の翻訳者であり、小説家の豊島与志雄さんをかなりピックアップしています。今回のセレクトは冷戦中の日本と中国の対話について。かなり時事問題に特化したものです。小説家、そして翻訳家として見る政治情勢、時事の事象。そういったものを学びました。

・田山花袋『朝』青空文庫

田山花袋というと「蒲団」しか出てこないのが悩ましい所。彼の違う小説も読んでみたいと思いました。とにかくこの小説は、朝という時間帯と、ひとというものが生きるただそれだけを描いています。しかし、ただそれだけ、なのにドラマチックな気がするのはなぜなのでしょう。市井の人々の朝。さまざまな生い立ちを持っていても、朝が来て午後が来て夜が来る。その繰り返しなのに、それこそがドラマチックであると言わなければならないのかもしれません。

・ペロー・シャルル『眠る森のお姫さま』青空文庫

ディズニー映画にもなりましたね!わたし、ローズが大好きでした。ただ、原作だと彼女が妖精三人に育ててもらう描写はなく、ただただ呪いをかけられたまま百年の眠りにつきます。王子様は野心家でしたが、やっぱり姫のことを思っていたんですね。ディズニーでは婚礼のその後のことは描かれませんでしたが、その後の二人のことも描かれていてホッとします。

・豊島与志雄『或る女の手記』青空文庫

「或る男の手記」から不穏さが立ち込めていたので、ドキドキしながら読みました。女学生だった語り手は、淡い淡い恋を近くの若い寺のお坊さんにしてしまいます。しかし、若い女の子にありがちな、彼につきまとわれているのではといった空想に耽りすぎて彼女は神経衰弱になってしまいます。お坊さんの方も、少し精神的に参っていました。そんな二人の物語ですが、この手記は途中で終わっています。どうか恋の幻影に苦しめられず、彼女が幸せになってくれるといいなあ。

10月7日

昨日の疲れも抜けて、今日から少しずつ仕事に戻ります。押し入れの中の読まなくなった本が43冊ありました。またリユース図書に少しずつ持っていく日々が始まります。予約図書が届いた日に5日に分けて持っていこうかな。バッグもハードオフなどに売ろうか検討中。色々手放していきたい季節のようです。なんとか締め切り校了。まだまだ仕事は続きます。

・ヴィルヌーヴ夫人『ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣)』青空文庫

これもディズニー映画になり、近年話題沸騰した作品です。美女と野獣でおなじみですね。ベルという名前はどうやら原作から来ているようです。そうかあ、ほんのりしみてくるロマンチックな物語でした。ベルと野獣のダンスパーティーこそ原作にはないのだけれど、それでも野獣が真心を持っていて優しいのは実写映画でよくあらわれています。二人の姉と兄たちがいたのにはびっくりしました。姉たちはなんというか、結婚したことによりいい気味、というか……。彼女たちはベルの家が没落してから彼女に家仕事をすべて任せて、悪口ばかり言っていました。でも、夫もひどいやつらだったのですが、ベルが本当に幸せになってくれてよかったなあと思える作品です。

・田山花袋『田舎教師』青空文庫

田山花袋を読んでいって、そういえば! と思ったのが「田舎教師」。「蒲団」しか読んでませんでした……花袋さん本当にごめんなさい……清三という若者が田舎で教師をしながら、時代や家族の中で物語っていくというストーリーです。この頃はみんな「Art」に憧れがあったのかな。往復書簡や日記もこの作品では読みどころなのですが、だんだん戦時中になってきて、ハラハラします。今はもうわたしたちはみんながArtを発信できて、だれもがアーティストになれる時代だけど、そういうものではなかったんですよね。色々と時代の変遷について思いを馳せます。

10月8日

定期検診その2。わたしは憧れの芸術家より断然若いからがんばれるのだ! 帰りに図書館に寄ってきて古典ばかり借りて満足満足。夜の地震、とっても怖かったですね……みなさん大丈夫でしたか? 今日から万葉集をラジオで、百人一首をYouTubeで勉強していきます。楽しみ楽しみ。武田百合子『ことばの食卓』『日日雑記』小川洋子『小川洋子の偏愛短篇箱』予約。夜に新作一編。

10月9日

武田百合子『日日雑記』回送中。イベント打ち合わせのち、色々な方にお声がけ。今日からかなりハードな日々が続きますが、がんばります!!新作エッセイ2本。

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