nea_kaise

挿絵付き→代理学園小説 ♢→個人小説

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最近の記事

春の日の出会い。 裏

暖かい風に乗って薄ピンクの花びらが舞う、放課後。 朝には沢山いた生徒たちは疎になり、学園は物悲しそうに ヒソヒソと音を立てる。 ナスの効果が切れそうな頃、少女は屋上に帰ろうとしていた。 しかし学園はとても広く、まだ日の浅い少女は迷子になっていた。 人のいない校舎で迷うのはまるで、暗い夜道を独りで歩いている時のように心細かった。 トボトボと歩いているときらりと光が目にあたる。 目を細め光の方を見ると、手足のすらっとした青い髪の青年が中庭のベンチに座っている、その手にはキラキ

    • ♢ 記憶の味。

      品のある音楽と、綺麗に磨かれ並べられている銀食器。 普通の高校生には縁遠い場所だ。 せめてもの救いは学生ということで、制服で入店できたこと。 ドレスなんてきっと私にはまだ早い、そう思いながら正面に座るドレスを纏った女性を眺める。 「いらっしゃいませ、こちら本日のメニューとなっております」 ウエイターがメニューを持って現れた。 女性は慣れた口調で注文し始める。 「ありがとう、そうね。じゃあメインは鴨肉のコンフィを、あとはお任せするはわ」 「あなたは、何か食べたい物ある?

      • ♢ 愛のカタチ

        私の目が見えるようになるのと引き換えに、愛する貴方が居なくなってしまうというのなら。 私は、盲目のままでよかった。 そばに居て、触れていてほしかった。 「愛してる」 最後に聞こえた彼の声は、優しく切ない音だった。 私は、彼の顔を見た事がない。 暖かい手も、優しく私の名前を呼ぶ声も知っているけれど、どんな顔をしているのかは分からない。 私が話をしている時、貴方はどんな顔をしているの? 彼はあの時、君の目が見えるようになったら僕のお気に入りの景色を見せてあげるね、そう言っ

        • ♢ 私の父の話。

          日の暮れる時間、私はひとり公園のベンチに座っていた。 塗装の剥げたジャングルジム、錆びた鉄棒、まばらに咲くクローバー。 小さい頃に父と自転車の練習をした、あの公園だ。 私はなかなか上達しなくて、転んで膝を擦りむいては「自転車なんて乗れないままでいい」と泣いた。 そんな私に父は「確かに自転車なんて乗れなくったってさほど困りはしない。でもな、乗れることで味わえる感動もあるんだぞ」 あぁ勿体ない。 父は私に少し意地悪な言い方をした。 そうすると、負けず嫌いの私は涙を拭かずに自転車

        春の日の出会い。 裏

          赤ずきんとオオカミさん。

          ある小さな村の小さな森の中に、とても恥ずかしがり屋で優しいオオカミが住んでいました。 ある日、森の中を散歩していると花畑で花を摘んでいる人間を見つけました。 見つかったら怖がらせてしまう、そう思ったオオカミは木の影に隠れました。 花を積んでいる人間は赤い色のずきんをかぶっていました。 そしてそのずきんの下には、鮮やかなピンクの髪の女の子の顔が見えました。 オオカミは一瞬でその子に恋をしてしました。 女の子は、小さな村に住む赤ずきんという名の子でした。 赤ずきんは週に一度、村

          赤ずきんとオオカミさん。

          春の日の出会い。表

          暑い、まだ春だというのにまだ夏の気配を感じる。 桜が花びらを降らせる春の日、放課後なんとなくすぐ帰るのは惜しい気がして、俺は中庭にある桜の木下のベンチに座っていた。 飲み物を飲もうとリュックから水筒を取り出した手に花びらが一枚乗った、見上げると桜が散っている。 花びらを目で追っていると桜より鮮やかなピンク色が目に入った。 隣に女の子が座っていた、鮮やかなピンクの髪の女の子。 いつの間に隣に座っていたんだ。 とゆうかものすごくこちらを見ている、俺を見ていると言うより俺が持って

          春の日の出会い。表

          ♢ 神様になれなかった天使 【プロローグ】

          「ねぇ、母さん」 「なぁに?」 「こないだおばあちゃんちに桃届けに行った日にさ、帰り道で昔夏祭りで神社に行ったの思い出したんだけど、あの神社ってどこにあったっけ?」 夕飯の支度をしていた母に話しかける。 母は包丁軽快に動かしながら教えてくれた。 「あぁ、あの鳥の神社、懐かしいわねぇ」 「鳥?」 「あら、覚えてないの?あの神社に祀られてる神様は鳥の翼を持つ神様でね。」 「あなたおじいちゃんにその事聞いたら、天使の神様だぁって騒いでたじゃない」 「なにそれ、全然覚え

          ♢ 神様になれなかった天使 【プロローグ】

          ♢ 神様になれなかった天使 【下】

          「天使としてすら生きられぬ出来損ないが、あまつさえ人間界で神の真似事など」 身の程を弁えろーー。 神の怒号が響くと同時に辛うじて残っていた本堂の壁が吹き飛ぶ。 隠れ蓑を剥がされ、村人達の視線に晒される。 そこに居たのは、怯え切った情けない偽の神の姿だ。 突然の神の降臨に村人がどよめく中、神が言う。 「聞け人間よ、これは神などではない」 やめろ。 「神の使いとして生まれたにもかかわらず、使い一つできぬ出来損ないだ」 やめろ。 「この天災はこの者の傲慢によってもたら

          ♢ 神様になれなかった天使 【下】

          ♢ 神様になれなかった天使 【中】

          豪華な装飾が施された椅子に座らされ、目の前には沢山の村人達が私を一目見ようと集まっていた。 村人達が変わるがわるやって来て、私の翼をひと撫する。 立派な翼だーー。 今まで誰からも言われなかった言葉だった。 中には産まれたばかりの子供を連れてきて「この子に御加護を」と言ってくる者もいた。 私が直接話しかけるのは禁じられているので、隣に控えているお美代にそれらしい言葉を言うと、村人に伝えた。 村人達は感謝し、干し肉や果物を沢山置いていった。 沢山の人に感謝され、必要とされる

          ♢ 神様になれなかった天使 【中】

          ♢ 神様になれなかった天使 【上】

          私は天使として生まれた。 天使は天界に沢山いて、私もその1人だった。 でも私は他の天使とは違った。 他の天使達より、私の翼はとても大きかった。 大きくて、大きすぎて、重すぎて、飛べなかった。 私は飛べない天使だった。 お前は出来損ないだーー。 周りの天使達に見放された飛べない天使にできる仕事も、居場所はなかった。 私は天界で独りぼっちだった。 寂しかった、悔しかった、絶望した、飛べなければ仕事が出来ない、神に使えられない。 私が天使である意味がない、生まれた理由が無かった

          ♢ 神様になれなかった天使 【上】

          初めての日。

          私はみんなとは違うみたい。 ここにいる人達は沢山喋って、沢山笑っている。 でも私は同じようには出来ない。 ずっと1人で旅をしてここに辿り着いた。 ここはとても賑やかで、暖かい。 昔にもこんな暖かさを感じたような気がするけれど、思い出そうとすると黒いぐちゃぐちゃした何かに邪魔をされてしまう。 私にできるのは満月に怯えて泣くことだけ。 なぜ涙が出るのかもわからない。 怖いのかな、悲しいのかな、分からない。 知りたいな、みんなが持っている物がどんな物なのか。 ここは学園という

          初めての日。

          ♢ 古書店。

          季節はもすぐ冬。 騒々しい都会の空は、今にも雪が降り出しそうなそんな顔色をしている。 高校の帰り道、私は夏休みに偶然見つけた古書店に向かって歩いていた。 古い本の匂いが好きだ。 古本は読んでいると本の中の主人公だけでなく、かつてその本を持っていた人の人生も垣間見える。 メモ書きがしてあったり、ボロボロになるまで何度も読んでいたり、気に入った言い回しがあったのかページの端が折られていたり。 そんな誰かの痕跡を見るのがとても好きだ。 ここに来ると色んな時代にトリップしたような気

          ♢ 古書店。