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スタートアップM&Aの規模化と質の向上を、事例から考察(その1)

スタートアップM&Aの規模化と質の向上のためには、スタートアップ起業家として、スタートアップBATNAの準備が重要と考えております。

スタートアップBATNAとは、一般的な交渉におけるBATNA「いざとなったら別の選択肢がある("交渉の結果として合意できそうな選択肢の他にも最善に近い選択肢がある状態で意思決定をすること")」、をスタートアップ・起業家が直面するM&AやIPOなどの意思決定の場面に当てはめて考えたものです。

スタートアップBATNAの意味についての詳細や背景は、こちらの記事がご参考です。
https://note.com/jaws/n/nf7b16fa1976e

そもそも、ファイナンス・プロデュース創業者の松井が、ベンチャーキャピタル時代の経験も踏まえて、スタートアップM&Aの規模化と質の向上というテーマに取り組む原体験の一端については、こちらのnote記事がご参考です。スタートアップがベンチャーと言われていた時代の話です。
https://note.com/jaws/n/n0333035e0d26?magazine_key=m068b135c65cd

2023年1月5日、スタートアップからすでに米国製薬大手、と呼ばれる存在にのし上がったモデルナが、日本のバイオスタートアップであるオリシロジェノミクスをUSD 85 million (約110億円)で買収するというニュースが発表されました。日本の技術系スタートアップがグローバル企業から注目されるのは喜ばしいことです。買い手候補が日本企業だけなのか、グローバル企業も含まれるのか、では必然的にスタートアップBATNAの幅や有効性は変わります。

今回は、スタートアップBATNAの実践例として、PaidyがPayPalに約3,000億円で売却をしたと言われるスタートアップM&A事例を見てみます。

より詳しい内部情報を知る人もいるとは思いますが、ここでは、敢えて公開情報に絞ると、以下の点が特徴的、と言われています。

なお、下記リンクの記事の通り、顧問にPaidy 元CFO藪内悠貴氏(22年8月enechain CFOご就任)には、21年12月より弊社の顧問にご就任頂いています。
https://note.com/ncorn/n/nd76ace5af472

①「他の選択肢がある」というデュアル・トラック・プロセスを秘密裡に進めていた

・IPO主幹事証券(大和証券)は、M&A交渉が水面下で進んでいたことは知らなかったらしい

②創業者が国際的なバックグラウンド

・買い手の外資企業幹部からすると、日本人だけで経営陣を固めてしまう日本の多くのスタートアップに比較すると、こうしたバックグラウンドは心強いはず
・他の外資に買収された日本のスタートアップでも創業者や経営陣に外国人が含まれていたり、外資との取引に慣れた日本人が含まれている傾向

③売り手も買い手も、「主幹事証券と利害関係の無いM&A専門家」の助言を受けていた

・創業者が金融の素養はあった(ゴールドマンサックス証券の元トレーダー)が、M&Aの専門家ではなく、また、自身は起業家としての立場・仕事に専念すべく、M&A専門家を頼った
・ゴールドマンサックスがPaidy側のセルサイドFA、バンク・オブ・アメリカがPayPal側のバイサイドFA
 ⇨日本のスタートアップM&Aでは、スタートアップと大企業の当事者同士 が協業の延長上でなし崩し的にM&A交渉を始めることが多く、プロのM&A助言を受けない事例も多い
 ⇨日本のスタートアップ村の中だけでは収まらないM&Aで、株式価値最大 化

④PayPalにとってはステップアップ買収(2段階買収)の一種

・19年11月に、PayPal Venturesを通じてPaidyの既存株主になっていたため、Paidyの強みと弱み含めて初期DDが終わった状態からのスタートだった

以上です。

次回以降は、Paidy以外の事例も見ていきます。下記がリンクです。

スタートアップM&Aの規模化と質の向上を、事例から考察(その2)


▶︎株式会社ファイナンス・プロデュース

「社会を変える事業を創るためのファイナンスをプロデュースする。」というミッションのもと、ドリームインキュベータから新規事業カーブアウト・MBO(マネジメント・バイアウト)を実行して誕生した、スタートアップ起業家専門の投資銀行事業を行う会社です。

特に、日本のスタートアップ業界のボトルネックとも言える、" スタートアップM&Aの規模化と質の向上 "を中核テーマとして、主にシリーズB以降等のグロース・ステージのスタートアップ起業家側のセルサイドFA(Financial Adviser)としてのM&A助言や、大型IPOに向けた資本政策・資金調達の助言事業を展開しております。

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