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新潮文庫と岩波文庫

 新潮社と岩波書店。この二つの出版社は共に私の文学遍歴において一番親しい案内人でありました。私みたいに純文学を好きな人の中には同じように思っている人は沢山いると思います。で、この両出版社のどちらにより親しんだかというとやっぱり新潮社の方になります。その理由は単純で新潮の文庫は町の本屋でもよく見かけるからです。しかも基礎教養として必読の作家はほぼ揃っている。なので最初のうちは私は純文学の文庫を読む際は殆ど新潮社のものを買っていました。岩波の文庫の方はずっと後に買うようになったんですね。いくら新潮文庫だからとはいえ当然カバー出来ていない作家や小説があるわけです。そういう作品は大型書店や後は古本屋にある岩波文庫のものを買いました。後にもっとより広く文学を知りたくなって文学関連の書籍なんか片っ端からペラペラ読み出して、興味を惹かれたものはちくま文庫や、河出文庫、あとは角川文庫や集英社文庫の物を買うようになったのですが。

 だけど基本的には今も文庫はこの両出版社がメインなんですよ。メジャーな作家は新潮文庫で買って、新潮でなかったら岩波文庫で買う。ここまで書くとなんか岩波文庫が新潮文庫のオマケみたいに見えてくるんですが、実際にそうだから仕方がありません。漱石や太宰は新潮文庫じゃないと読む気さえ起きません。新潮文庫にはやっぱり失礼かもしれないけど昔の貧乏な文学青年が財布の中から100円玉や10円玉を必死に探して買って読むっていうイメージがあってそこがいいんです。逆に岩波文庫は一見すると辞典みたいな厳しさを感じてなんか文庫本でも文学を手軽に楽しめないところがあるように感じてしまいます。

 でもこれは私の育った環境のせいなんですよね。多分岩波文庫に親しんでいたら漱石や太宰も大分違うイメージで読んでいたんだろうなと思います。岩波文庫はブックオフなんかではなんかハウツー本扱あされているようですが、名実ともに超名門出版社ですのでよろしくお願いします。

 なんだがまとまりなく書いていますが、というか元々まとめる気などないのですが。こうしていつまでもダラダラ書いていてもしょうがないのでそろそろ締めに入ります。新潮文庫はやっぱり大手で相変わらず精力的に日本や海外文学の傑作を出版していますが、岩波文庫もかつての教養文庫という枠を超えて、最近は今までだったらまず出さないようなものを出版するようになりました。その中でも一般的に一番インパクトがあるのは多分マルキ・ド・サドの小説だと思いますが、この本が岩波文庫で出ると知った人はびっくりしたんでしょうね。私もびっくりしました。あとはグスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮の世界』。この本が岩波で文庫化されたのはサドとは全く別の意味で衝撃的で私もえっ、こんなマニアックなもの岩波で出しちゃっていいのって頭がはてなマークになりました。

 そんなわけで締めると言いながらうちの水道の蛇口のように閉まらない話はこのへんで終わりにします。皆さま良い読書ライフを!

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