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エッセイ

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友だち未満。

友だち未満。

今日はとても珍しい夢をみた。

昔付き合っていた彼と、再会した夢。

わたしは友だちだか知り合いだかのアパートにきていて、2階にある部屋の玄関の前でずっとその人を待っていた。
するとアパートの下の道路に、自転車がひとつ止まって。
視線を感じて下をみると、自転車に乗っていたのはその彼だった。

話を聞くと、どうやらその彼はわたしの友だちの部屋の、隣の隣に住んでいるらしい。
アパートの廊下で、どこから

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逃げこんだ先に出会った人

逃げこんだ先に出会った人

『好きかどうか、もうわからない』

あの夏、わたしの心が、わたしに告げたこと。
一緒にいると安らぐし、笑っていてほしいし、こんなに愛してくれる人、きっと他にいないのに。でも、それでも。

わたしは逃げるように、一人イタリアへ旅立った。

たくさんの人に出会った。
涙が溢れる景色にも、おいしくて感激したジェラートにも。

そしてなによりわたしは、あの夏のイタリアで、日本に残してきたはずのあなたに会っ

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14歳の教室。

14歳の教室。

すれ違った瞬間が、永遠に感じられるような恋だった。

もしも、恋を選ぶことができるのなら。好きになる人を選べるというのなら、わたしは決して彼を好きにはならなかっただろう。

彼はわたしの親友であるMに、恋をしていたのだから。

叶わないことなんてわかっていたのに、崖の上から滑り落ちるように、気づいたらその恋の淵に立っていた。
彼は毎日まいにち、Mと話すために教室に通っていた。側から見れば、彼がMの

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忘れ得ぬあの人の言葉

忘れ得ぬあの人の言葉

「みどりが幸せになれる方法を考えるよ」

こんな、キザとも言える言葉をかけられたことが、人生で一度だけある。

今思い返しても、あの人との関係が恋だったのか、友情だったのかはわからない。
何歳か年上のあの人は、優しさを隠すために、自己中なフリをする不器用な人だった。猪突猛進に進みながらも後ろを振り返ってくれるから、兄のように思っていたのかもしれない。もしかしたらあの人にとっても、わたしは妹だった

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