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地元を愛せないことは“悪”なんかじゃない。

上京して12年。この冬の帰省でとうとう僕は地元が好きでないことを受け入れることができた。
人それぞれ、様々な理由で同じように地元を愛せないと思っている人がいると思う。
誰もが地元を愛せるわけではない。そんな話がしたい。

 

 

地元への愛と、地元に暮らす人への愛は違う。

地元への愛のなさを主張したけれど、まず弁解させてほしい。僕は地元で暮らしている友人や親族のことは好きです。そこへの愛はあります。
僕が地元を好きではないと感じるのは、友人や親族との不仲が原因ではありません。

そこに生きる人ではなく、地元という環境が僕には合わなかった。
それだけのこと。それだけのことなんだけど、「好きでないと感じる」ことに対する罪悪感をこの12年感じてきた。
地元を愛せない、好きでないと感じる自分が冷たい人間のように思えて仕方ないからだ。

夏季休暇と年末年始とで年2回は必ず帰省しているけれど、帰る度に少しずつ地元も変化してる。
今回の帰省もそれに漏れずで。幼少期によく買い物をしていたスーパーはついに閉店し、近くに他の大型スーパーができ、真新しいセルフレジが導入されていた。今までも通った本屋やおもちゃ屋が閉店したり、都内にもあるチェーン店が増えたりと少しずつ変化があった。

なんてことのない変化だけれど、その積み重なりでいよいよ今回「あ、もうここは僕の生活圏ではないんだな」と確信してしまった。それと同時に、「やっぱり地元は好きじゃない」とも。冷たいかもしれないけれど、今僕が帰る場所は地元ではなく嫁さんと暮らす東京だ。

 

小中高の同級生にまるで興味がない

地元に帰省するとたびたび聞かれることがある。
「同級生の〇〇ちゃんって今何してるの?」
おそらくフェイスブックを見ればそれなりにわかると思う。しかし特に仲が良かった幼馴染以外の同級生には全く興味がないため、この質問には「知らない」としか答えようがない。
小学校に通っていた頃、かなり早い段階から性別に違和感があったことと、持ち前のコミュ障により当時から友人自体も多くはなかった。
結局そういう自分を出さなかった自分自身にも問題はなくはなかったと思うけれど、自分の性別がわからないとか、同性も好き、なんてセンシティブなことを大っぴらにすることは10代までの僕には難しかった。

僕は彼らに興味がないのと同時に、自分を開くことが出来なかった相手である彼らと関わりたいと思えない。

 

 

「〇〇さんちの△△ちゃん」で居たくない

地元が好きになれない大きな理由はこれだと思う。
両親や親せきが顔が広いタイプの人間ということもあり、地元にいると僕は「〇〇さんちのトキちゃん」と認識されることが多い。
本当の意味で地元に戻って、父や母に頼んで求職すれば何らかの仕事には就けるだろう。実際大学卒業時に就活にだいぶ手こずった時には父からその申し出があって、それを断ったことがあった。
だって紹介された先での僕は「○○さんちのトキちゃん」にほかならないから。

同性も好きで、性別がわからない本当の僕で居たい。「〇〇さんちのトキちゃん」ではそれがかなわないことが、上京して痛いほどわかってしまった。
その証拠に、地元に居る時にカムアウトしたのは一人の幼馴染と、信頼できるほんの一握りの友人だけだった。
大学進学と同時に上京して、僕のバックボーンを知らない人たちの中で少しずつカミングアウトしていき、本当の僕で居られる居場所を作ってきた。
両親にもカムアウトはしたけれど、本当の僕で居られる場所は東京にしか作れそうにない。
だって僕の地元では同性愛者は物珍しく、噂の広まりやすい片田舎では周りに何を言われるかわからない。
大好きな嫁さんと手をつないで歩くことも出来ない場所を愛することは難しい。

 

 

地元の居心地がいい人が、地元を愛しているだけ。

つまりそういうことなんだと思う。
それは素晴らしいことだと思うし、地元でも本当の自分で居られたらどんなにいいだろうと僕も思う。
だけどあくまで僕はそうじゃなかった。

都会が合わない人は、空気が悪いとか、星が見えないとか、物価が高いとかいろいろ言うけれど「都会よりも地元が居心地がいい」。ただそれだけなんじゃないか。
僕は本当の自分で居られない地元よりも、いっそ僕を知らない人が多い東京のほうが居心地がいい。嫁さんと手だって繋げる。
カムアウトした人も割といるのも手伝って、同性愛者である僕を隠すことなくコミュニケーションをとれることも多いので地元に戻りたいとは全く思わない。
地元の居心地が今生活している東京よりもよくないのだから、愛せなくても当たり前。
僕はそうやって考えることにした。

もし同じように地元が愛せなくてモヤモヤを抱えている人がいたら、居心地のよくないところを愛する人が果たしているだろうかと考えてみてほしい。

愛せない代わりに、居心地のいい自分の居場所を作ることや今ある居場所を大切にすることに心を割いて生きていたいとこの正月、僕は思いました。

 

 

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