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展覧会レビュー:「マン・レイと女性たち Man Ray and the Women」「コレクション展 内藤 礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022」@神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県立近代美術館(葉山)に来たのは初めてでしたが、1)目の前が海の立地。自然光を取り入れ、すっきりした建築、2)マンレイ、内藤礼の展覧会は県立とは思えないセンスの良さにより、満足度が高かった。
ちょっとした遠足気分でいい思い出になりました。

展覧会について

マンレイは私の好きなマルセルデュシャンのほか、(ピカソの経歴を描いた小説、原田マハ 『楽園のカンヴァス』には出てこなかったが)ピカソ、ダリなどとも親交があった。彼ら同様にマンレイもユーモアかつアイロニーが効いている作品が多い。「マンレイ」という名前もダジャレで、”マンレイ”を文字った「レイの手/マン・レイ(手・光線)」という作品もあった。
(もしや、神奈川県立近代美術館はマンレイと内藤をかけているのか?!)

中でも、ファッション関連の作品が印象に残った。マンレイと言えば「アングルのヴァイオリン」「りんごとねじ」「ガラスの涙」(所蔵:すべて東京都写真美術館)といった現代アート的な作品を連想するが、ポワレがVOGUEなどのファッション誌のために依頼した撮影もあった。煙草をくわえた「ココ・シャネル」見たことがあったが、マンレイの作品とは知らなかった。
白黒の写真以外にも、カラー写真やデュシャンが作りそうなレディメイド、ブロンズ、ハンガーを使った現代アートもような作品も展示されていた。

買ったポストカード

マンレイは作風が変わる節目が何度かあるが、そのタイミングで懇意にする女性も変わる(これもピカソを連想する)。まさに展覧会のタイトル通り。
オムニバス形式の展覧会とは違い、その時々でアーティストの作風が変わる流れを理解できる個展の方が私は好きです。一人のアーティストに対して集中して鑑賞でき、人間味、人生観も知ることができる。

作品のキャプションは2~4行程度で読みやすかった。セクションごとに丁寧な説明もあるが、明朝体で読みづらい。メイリオなどの読みやすい書体にしてほしいが、全体のトーンから書体も見極めているのだろうか。

館内で撮影可能な作品は一切なかった。それはいいが、一つくらいフォトスポットがあると、訪問者が勝手にSNSで拡散してくれるので、設置した方が良いと思った(最近は多くの美術館でもやっている取り組み)。

神奈川県立近代美術館(葉山)が、内藤礼の作品を所蔵し、本人から作品を寄託されているのも興味深い。同時開催していた内藤礼のコレクション展は、空間を贅沢に使い、意表を突かれて面白かった。
県立であるにもかかわらず、内藤礼のような若干とがった性質の作品もコレクションがあるのは面白いし、この美術館全体の雰囲気と内藤礼の作品が、うまくマッチしているのが印象的だった。内藤礼が神奈川県立近代美術館(葉山)に作品を寄託する気持ちも理解できた。

神奈川県立近代美術館(葉山)について

今回、神奈川県立近代美術館(葉山)を初めて訪れた。
横須賀美術館のような辺鄙な場所にある美術館には経験上たいてい人は少ないが、神奈川県立近代美術館(葉山)は意外にも人が多かった(予想より多かっただけで、作品を見るには全くストレスはない人の量でした)。

三沢厚彦 ANIMALS IN YOKOSUKA@横須賀美術館(2018年7月)

館内は天井も広く、オーソドックスなホワイトボックスで鑑賞しやすい。自然光も多く取り入れており、不意にロサンゼルスのゲティ美術館を思い出しました。スペースに占める作品のボリュームもちょうど良かったです。

J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)(2017年10月)

神奈川県立近代美術館(葉山)の建物はシンプルで衒いがなく、イサムノグチの「こけし」もかわいくて、館の雰囲気にもマッチしていました。

何より神奈川県立近代美術館(葉山)は海に面しているのが最高でした。
カフェのテラス席に座ることができれば、寄せては返す潮騒を聞きながらリラックスした時間を過ごすことができます。また、この海岸から見られる夕焼けは最高でした。是非、日の入りの時間を前もって調べておき、そこから逆算して訪問する時間を決めることをお勧めします。

レストラン「オランジュ・ブルー」のテラス席にて。
夕焼けが綺麗。

一言まとめ

展示、収蔵のセンスも良い。美術館の立地、建築も良い。遠いので頻度高く行くことは難しいですが、ちょっとした遠足には最適な美術館でした。

その他写真

逗子駅に案内があるのは助かります。
清水九兵衛 「BELT」 駐車場に設置されている。
マンレイ展の入り口。
チケット。
カフェ横の待合スペース。景色と音が最高に良い。
岩戸山古墳出土、大分県日田市設置の「石人」。出土作品をアートとして設置するのは面白い。
ポストカードを買ったらポスターをもらいました。
野口里佳的に撮影してみました。
中庭スペース。
アントニー・ゴームリー 「Insider Ⅶ」 ジャコメッティのような作品。
海岸に向かう道がハワイビーチを思い出します。
バス停からの景色。

備考

展覧会名:「マン・レイと女性たち Man Ray and the Women」「コレクション展 内藤 礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022」
場所:神奈川県立近代美術館 葉山
満足度:★★★★☆
会話できる度:★★☆☆☆(監視員は少し優しめ)
会期:2022年10月22日(土曜)– 2023年1月22日(日曜)
アクセス:逗子駅からバスで約20分
入場料(一般):1,200円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1〜2時間
混み具合:休日でも快適
展覧撮影:全て不可
URL:http://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2022-man-ray
URL:http://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2022-h-collection2

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