展覧会レビュー:祈り・藤原新也@世田谷美術館
本展覧会で藤原氏のことは初めて知ることができて良かった。写真がメインであるが、写真の大きさや色使い、動画、藤原新也氏の詩など、飽きることない構成でちょうど良い満足感を得られた。東京都写真美術館で実施するような展覧会のグレードアップ版のような印象。
入ってすぐの展示のインドは色鮮やかだ。その実際の煌びやかな色と、「メメントモリ(死を想え)」「メメントヴィータ(生を想え)」という重厚なタイトルとの対比、さらに藤原氏の一歩引いたところから感じた詩が、得も言えないコントラストを生む。
時にはクスッと笑ってしまうバランス感覚が新鮮だ。
人口に膾炙している事件(神奈川金属バット両親殺害事件、香港の雨傘運動、小保方晴子、伊藤詩織など)を藤原氏の目線から切り取った写真は、メディアと違うイメージを訴える。私が撮るただの写真とは違う、写真家の面目躍如といったところだろう。
作品ごとにキャプションがついていないのも良い。
キャプションがついているとどうしても作品を「読む」作業になりがちだ。
本展覧会では、藤原氏の詩も随所に付いていることから、全体の文字数のバランスを見て省いたのだろうか。
普段は、美術館スタッフが書いたキャプションを読むが、それにかわって、アーティスト自身が書いた詩を読むのはすごく妙案だ。
写真のみを鑑賞する時と、詩を読む時では使う脳の部分が大きく変わる。いつもは、アーティストの意図を完全に汲みきれず、こちらで解釈する作業になるが、本展示会の構成では、普段の鑑賞とは違う感性を刺激された。
改めて、「言葉のもつチカラ」に気付くことができた。写真を撮る感性と、言葉を操る感性の両方をもつ藤原氏はやはりすごい。
全て撮影可なのは嬉しい。藤原新也さんの懐の深さだろう。
「展覧会での写真撮影?そんなものどうでもいい」と言いそうだ。
また、会場でもらう展示作品目録が、オールカラーなのは初めてだ。全ての作品にサムネイルがついており、後から見返すときに大変に役に立つ。
藤原新也氏の意向なのだろうか。受付で声をかけた人にのみ配布していた。
砧公園は大好きな公園の中の一つだ。世田谷美術館の近くに「みんなの広場」「わくわく広場」という子供用の公園がある。
その公園が16時で閉まるのがありがたい。そこでちょうどお開きとなり、いつもよりも少し家に帰れる。その公園で遊ぶことも含めて1日のスケジュールを組むと良い(←自分用メモ)。
展覧会名:祈り・藤原新也
場所:世田谷美術館
満足度:★★★★☆
会話できる度:★☆☆☆☆(作品の性質上、静かに見たい人が多い。監視員は子供にシビア)
会期:2022.11.26 - 01.29
アクセス:用賀駅から徒歩約20分
入場料(一般):1,200円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
混み具合:休日でも快適
展覧撮影:5点を除いて全て可能
URL:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00211
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