都内から 京都芸術大学の卒業・修了制作展を観に行ってきた話
早いもので、全国各地の芸術大学・美術大学では、2022年度の卒業制作展や修士・博士課程の修了制作展、略して卒展が開催される季節になりました。
先日、音声でもその魅力をご紹介してみましたが、
つい一昨日の2月3日(金)、そして昨日4日(土)と、京都芸術大学で開催されている、卒業&修了制作展、都内から観に行ってきました!!!
会期は2月12日(日)まで。
どなたでも、予約不要・無料で観ることができます。
ということで今回は、わたしが現地でどんな風に展示を観て回ったのか、をご紹介します!!!
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そもそも何で行こうと思ったの?
2019年、わたしはこの京都芸術大学の通信制に編入しまして、アートライティングコースと学芸員課程に在籍している、れっきとした在学生です。
卒業することが目的ではなく、思う存分 専門的に学ぶことが目的で編入したため、仕事をしながらの学生生活はマイペース。
本年度は休学していますが、4月からの新年度には復学予定。卒業を目指し、がしがしと取り組む予定です。
で、編入した2019年から、京都の瓜生山キャンパスで2月に開催される、通学部の卒展を観に行ってみたいなぁ とずっと思っていました。
実は10年程前、京都芸術大学の卒展は画期的な取り組みを始めました。
なんと、アートフェアやギャラリーのように、展示されている学生の作品を販売し、誰もが購入できるようにしたのです!
これは、ご自身の作家活動も忙しい中で教授に就任された、世界的な現代美術家 椿昇先生が主導されたもの。
卒業後も作家活動をしたい、と考える学生が、作品を制作する力やクオリティを磨くだけではなく、作家としてのセルフブランディングやプレゼンテーションのスキルなど、作品を売って活動し続けるための力も伸ばそうとしてのことでした。
事実、全国各地からわざわざ卒展に来て作品を買うコレクターが増えたそうで。そんな特徴的な卒展、せっかくなら観に行ってみたいじゃないですか!
いろいろあった3年を経て、ついに予約不要で観に行けるようになったし、わたしも卒業まであと1年(の予定)。
来年の今頃は、たぶん自分の卒業制作で死にそうになっていそうで、それどころではない可能性が高いな、と。なので思いきって行くことにしました。
せっかくなら、他にも取材がてら、京都であれこれを観たい!と思い、結局 朝5時起きで新幹線に乗車することに。
スマートEXでビジネス向け車両を予約し、京都に着く数分前に原稿を仕上げて納品、という ぎりぎりスケジュールで到着したのでした。
ホテルへ荷物を預け、最初に八坂神社さんにご挨拶を。
行って気づきました。そうだ、節分だ!と。
京都の街における節分の大切さを実感できました。
いろんな寄り道のお話は、近いうちにまたご紹介します。
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京都芸術大学 瓜生山キャンパスって、どこにある?
京都駅からは、市バスの5番に乗ればOK 本数も多いです。
約50分で、大学の目の前のバス停「上終町・瓜生山学園 京都芸術大学前」に到着します。
5番のバスは、京都を南北に走る烏丸通を北上して五条、四条を東に曲がって四条通、河原町通を北上して三条、そして東へ行って京セラ美術館や京都国立近代美術館などがある岡崎、で、大学のある方面へと北上します。
賑わっている四条や三条から乗れて便利な路線です(混むけど)。
ちなみに料金は、下車時に交通系ICカードまたは現金でお支払い。どれだけ乗っても、230円均一です。ありがたい!!!
京都慣れしている方なら、地下鉄である程度北上し、バスを組み合わせて向かう500円くらいの時短コースもあります。
ちなみに、京都駅からタクシーで直行すると、たぶん3,000円前後はかかるけど、20~30分くらいで到着できます。ご参考までに。
最初に大事なことを。
大学のキャンパスは、瓜生山。そう、山にあります。
敷地内では、結構な階段と坂道を歩きます。あしからず。
そして、向かう途中などで事前に特設ページで予習し、どこの学科の展示から観るか、ある程度決めておくことを強くお薦めします。
敷地が広すぎ&学科がたくさんあるので 1日で全部は回り切れないからです・・・!
わたしは在学生なので、一般の方よりも1日早く、2月3日(金)の内覧会から観てきました。たっぷりと時間を確保して巡ったものの、全ての学科をくまなく観ることはできず。そして案の定、体力も足りず。残念。
ぜひお時間と体力に余裕を持ってお運びくださいませ。
実はわたし、この前日、2月2日は東京藝術大学の卒展も巡ってたんです。
こちらも丸1日いたのですが、全く回り切れないボリュームでした。行って良かったけども。
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話がそれました。
まず内覧会の3日(金)に訪れたのは、こちら。
1.人間館A棟1階・大学院 美術工芸学科
通りに面した大きな階段を上がって入ったところの建物が、人間館A棟です。その最も奥まったスペースで展示されています。
印象に残った展示をいくつか。
まずは、作品と「筆致」の視点からの書家・石川九楊論を研究テーマにされた学生の作品。
半紙ではなく オーガンジーのような生地と映像で表現しています。美しかったです。
こちらは銅版画で制作された連作。
コンセプトも作品のクオリティも素晴らしくて、思わず見入ってしまいました。
そしてこちらは、油画コースの方の作品。
大きなカンヴァスのサイズ感が伝わりにくいですが・・・こちら、なんと200号( 2,59m×1,94m )という超ビッグサイズ。それを3枚も!!!
こちらは4枚!!!
ここまで大きなサイズを描く事 自体、難易度がとても高いんですよね・・・すごいです。
こちらは染色テキスタイルの学生による作品。
インスタレーションのような展示でした。
展示設営や照明の調整も、もちろん学生自身で行ってるそう。
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2.人間館C棟・美術工芸学科
人間館A棟の奥、エレベーターで3階へ。
建物の外へ出て、坂道を下ると、人間館C棟です。
各フロアで美術工芸領域の各コースによるオープンアトリエが開催中。
学部の卒業生の作品群が観られます。
画像を掲載したのは、ほんの一部。ぜひ現地でぐるぐると各フロアを巡って、作品をご覧ください。学生の皆さんも常駐してらっしゃいます。
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3.人間館A棟・こども芸術学科
翌4日(土)は、時計を気にしつつ、特に観たいと思っていた学科を巡りました。教室として普段使われている部屋を、それぞれの学科で、学生たちが展示コンセプトに即した装飾をしています。
まずは、こども芸術学科 こども芸術コースへ。
いま、個人的に特に気になっている分野の一つが、こどもへの美術教育なこともあり、特設インスタをのぞいたら素敵だったので、ぜひ観たいな、と。
受付したら、こんなに素敵なハンドアウト&グッズ、いただきました!
(各学科で受付を設けているのが新鮮。東京藝大は設置されてなかったし)
特徴的だなぁ!と思ったのが、きちんと対策・配慮の上で、さわってOK の作品が多いこと。
自分や家族とのエピソードや写真から発想した、刺繍の連作や、
こーんな素晴らしい空間を作っていた方も。
そして、「大人こども」ってタイトルからして超絶気になるこちら。
そうそう、今はちゃんとしてる大人も、誰もが かつてはこどもでした。
ついつい忘れちゃってるけど、もっと自由でいいのかも なんて思えました。
しかも、この作品、単なる絵やイラストじゃないんですよ・・・!
展示作品ができるまでのポートフォリオも読めましたが、どれもこれも、素晴らしくてびっくり!!!
見事に、作品の世界に即した、唯一無二の一冊が並んでました。
時間を忘れて、しみじみと読みふけってしまいましたが、いやいや、とてもあったかい気持ちになりました。ありがとうございました!!!
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4.人間館A棟・アートプロデュース学科
次はアートプロデュース学科 アートプロデュースコースへ。
とってもわかりやすい案内が出てました。こういうの、大事。
初めて来た人間には、大学構内って迷路なので、とても助かります。
さすがですな。
特設ページもとっても凝っててびっくりしました。SNSもしっかり。
つくるだけじゃなく、知って来てもらわなきゃ意味ないですもんね。
すごいなぁ。
とはいえ、え?アートプロデュース???何それ? という方も多いのでは。どんなことを学んでいる学科なのか、というと
え、わたし今から入ってもいいですか?なコースですね。
先週 お邪魔してとっても良かった「ART JOB FAIR」でも、まさに担い手がいない!人材不足だ!と言われていた、アートプロデュース。
ブースを出展されてた、Twelveの山城さんは、このコースの先生でもいらっしゃるんですよね!(残念ながら混んでて入れず。お話し聞きたかった!)
果たしてどんな展示???と、とっても楽しみでした。
熱い想いがたっぷりの文章に・・・!ほうほう。
実は、校内にフライヤーとして置かれていた、この封筒。
中身が空っぽで、??? だったけど、なんだか気になり、前日にもらって帰っていました。
受付で改めて手渡されて、なるほど、と。
展示は、学生それぞれが設定したテーマについて、独自にリサーチし、展覧会の企画を立てる、という卒業論文がベースに。
教室には、ことばの"森"が広がっていました。
それぞれの展示スペースに、学生一人ひとりの卒論の要旨が掲げられ、リサーチに活用した資料も展示されています。
テーマは本当に、バラエティ豊かでした。
掲出された要旨の文章全文が、A4サイズのハンドアウトにプリントされており、気になったものは封筒に入れて持ち帰ってください、とのこと。
なるほど、封筒はちゃんと展示に関係していたんですね。
とっても細かなしかけですが、考えられてるなぁ、と感心しました。
もちろん、全員分いただきました。
ほんとは製本された論文が並んでいるスペースで、全文読みたかったですが、しばらく東京に帰れなくなりそうなので、泣く泣く諦めました。
で、展示を観て、「最も良かった学生を一人選んでほしい」との形式だったのですが、どなたも視点が素晴らしく、読めば読むほど、甲乙つけがたくって・・・結局わたしは、たった一人を選べませんでした。
でも、その代わりと言っては何ですが、4人分書けるようになっていた感想の欄と、一人の名前を書く欄に、めいっぱいメッセージを書きました。
世の中のさまざまなものごとをリサーチし、企画のテーマを見つけ、具体的にどんな構成にするのかを練ってまとめる、という一人ひとりの展示を読んで思ったのは、なるほど、これはまさに、キュレーター的なお仕事の実践だなぁと。
学芸員課程で学んだことにも近しいし、編集者的な視点も必要。
どう展示するかの構成の工夫も重要だし、各方面へわかりやすく書いたり話したりして伝えられる力も大事。
そして、これは!というテーマをみつける視点、そもそも超大事。アートライティングコースの学びにも近しいなぁと感じました。
で・・・
これ、例えば大学院のコースにしたら、事業計画や資金調達、各方面との間に入って翻訳したり調整役したりしてます、みたいな、実務経験のある社会人が、アートプロデュースの仕事に就けるきっかけになって、いいのでは、なんて思ったりもしました。
いや、社会人ならもうそのまま現場で実務経験を積むほうが、話が早いのか。でもコネクションがないとそもそも採用されなさそうだよなぁ。うーん
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5.人間館A棟?・クロステックデザインコース
最後は、掲示板に貼られていたこのポスターが気になった、クロステックデザインコースの展示を観に。
廊下の床にはこんなサインが。
この廊下からして、演出がしっかりされてます。(なんかちょっと怖い)
展示室内に置かれた冊子も、ポスターと同じ布でカバーされてました。
ということで、ここまでで時間いっぱいに。
クロステックデザインコースといえば、いつもYouTubeで観ている「京都館会議」にも出演してる、吉田先生がいらっしゃるコース。
別の建物でも展示があったようですが、たどり着けませんでした。無念。
動画、最近観られてなかったので、観ます!!!
帰りの新幹線に向かう道中、自分への京都みやげに、酒井先生の本を買いました!
まとめ
ということで、この記事では、卒展の全ての展示をまったくもって網羅できてませんが、どれもこれも内容が濃くて、面白い、ということが伝わりましたら幸いです。
京都まで行ける、という方、ものは試しにぜひ!!!
無理、という方、ぜひお住まいの地域で、美大・芸大がお近くでしたら、卒展、観に行ってみてください、ぜひ!!!
これまでに書いた京都にまつわる記事
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