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彫刻家・瀬戸優さん 個展『CIRCULATION』at Bunkamura Gallery
それはもう、圧巻、の一言でした。
野生動物の生き様が、自然の摂理が、ありありとそこに存在していました。
彫刻家・瀬戸優さんの、過去最大規模の個展が、東京・渋谷のBunkamura Galleryで、2022年12月2日(金)から開催されています。
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観に行って数日経った今でも、ちょっとまだちゃんと消化しきれてなくて、言葉にうまくまとめられそうにもないのですが、一人でも多くの方に知っていただけたら、と思い、今日は書きます。
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数か月前から、日々少しずつ姿を現していく動物たちの制作風景を、SNSを通じて見守っていました。
完成前の作品を、スタジオで見せていただいてもいたのですが・・・
ギャラリーで目の当たりにすると、当たり前ですが、やっぱり全っ然違う。
だから、できればぜひ、現地へお運びください!!!
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開催中の個展のタイトルは『CIRCULATION』
サーキュレーション。つまり、生命の循環です。
本展では、瀬戸の次なる挑戦ともいえる新シリーズを初公開。“食物連鎖”をテーマに掲げ、生き物にとって避けて通ることのできない不変の関係性を瀬戸独自の視点から表現します。
「追うもの/追われるもの」という鬼気迫る瞬間は、文明社会に染まり切った私たちにとって衝撃的なものであると同時に、本能的に生き抜こうとする生命の美しさを感じ取れるものではないでしょうか。
夜を徹してぎりぎりまで制作し、広い会場での設営も大変だったろうに、そんな疲れを微塵も感じさせず、いつもの笑顔で迎えてくれた瀬戸さん。
約40点もの作品は、一つひとつの存在が際立っていると同時に、なんだか共鳴し合っているようにも思えました。
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作品ごとに、近づいてその質感や色と表情を見つめ、ぐるぐるといろんな方向から姿かたちを見つめ、少し離れて壁全体を見つめ。
なんてことを繰り返していると、途中から写真を撮るのも忘れ、あっという間に1時間くらい経ってしまったのですが、本当に、どの作品もずーっと眺めていられるんですよね。
見れば見るほど、印象が変わっていくのが不思議で、魅力的なんです。
お家にあったら、毎日眺めていても飽きませんね、絶対に。
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正直、目の前に広がる光景が圧倒的すぎて、作品一つひとつをしっかり見つめることと、自分の感情に追いつくのに精一杯。
いつにも増して、全くもって気の利いた会話ができないわたしでしたが、瀬戸さん、本当にいろいろと気さくに話してくれて、感謝しかなかったです。
なかでも特に印象に残ったのは、「初めて意識して、動物たちの表情を作った」という言葉でした。
そっか、だから"追うもの""追われるもの"のどちらも等しく、なんだか崇高さすら感じる姿や表情に見えたのか、と、とても腑に落ちました。
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ずーっとあたためていたテーマだという“食物連鎖”。
大自然では当たり前のこと、と、誰もが頭ではわかっているけど、思わず目を背けてしまいたくなる瞬間、現実です。
決して簡単ではないテーマに、ついに挑んだ今回。
一歩間違えれば、単に残酷で生々しいだけになってしまう可能性があるし、きっと我々が想像するよりもずっと、試行錯誤の連続だったことでしょう。
でも瀬戸さんは、これまでもずっと、丁寧に、真摯に、そして果敢に、動物たちの生き様を見つめ、瞬間をとらえて形作ることを、コツコツ続けていました。
だからこそ、”表情への意識” という新たな一歩を踏み込み、絶妙な表現へと昇華させることができたのでは。
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彫刻家・瀬戸優さんってどんな人?
彫刻家。1994年神奈川県小田原市生まれ。自然科学を考察し、主に野生動物をモチーフとした彫刻作品を制作する。
彫刻の素材であるテラコッタ(土器)は作家の触覚や軌跡がダイレクトに表面に現れ、躍動感のある作品となっている。
画廊での展示販売を中心に国内外へ幅広く作品を提供。
彫刻、というと 石や木、ブロンズなどの素材のイメージがあるかもしれませんが、瀬戸さんは、塑像、つまり粘土でかたちを作り、中をくり抜いて空洞にしてから 窯で焼き、アクリル絵具などで着彩する技法で制作しています。
キラッと光る瞳は、ガラス。玉眼と呼ばれるもので、木彫の仏像さまなどで見られる手法です。
テラコッタの彫像に玉眼を入れるのは、木彫よりもはるかに難しく、他にやってる方を見たことがないくらい、瀬戸さんの作品の大きな魅力のひとつです。
InstagramやTwitterでたまたま見かけて瀬戸さんの作品を知った、という方も多いはず。そのくらいSNSを上手に活用しながら、作家活動をを続けていらっしゃいます。
創作についての想いや、どんな風に彫刻家になっていったか、といったエピソードは、Webメディアでのインタビューで読めます。ぜひ。
そして・・・実はわたしもインタビューさせていただいてるんです、瀬戸さんに。2020年夏のことでした。こちらもお読みいただけると嬉しいです。
そもそもわたしがどうやって瀬戸さんの作品と出会ったのか、はこちらに。
インタビューさせていただいてから、2年半。
たったの2年半ですが、都内に共同アトリエを立ち上げ、ペン画集を商業出版し、個展やグループ展のオファーはひっきりなしだったはず。
グループ展も個展も、可能な限り足を運んできましたが、その都度、コンスタントに新たなシリーズにチャレンジし、驚くようなスピードで作り続け、進化し続けていらっしゃいます。
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そして2022年。
ついに大きな大きなガス窯を備えたスタジオを都内に新設✨
先月、オープンスタジオを開催してくれたタイミングでお邪魔し、スタジオもガス窯も、想像以上の大きさで相当びっくりしましたが、このBunkamura Galleryでの個展から逆算して、長らくあれこれ準備してきたそう。
彫刻家の瀬戸優さん ただ今オープンスタジオ開催中です✨ 昨夜お伺いしました
— Naomi │アートとデザインのインタビュアー・ライター・企画取材編集、ミュージアムコラムニスト (@Naomin_N0506) November 19, 2022
さまざまな方とお話でき たくさんの作品に囲まれ 楽しすぎる時間でした
昨年インタビューを読んでから素敵だと思ってたAUBETTさんの至高のお洋服も素敵でした…瀬戸さんとつくったストールほんとにほしかった…うーん! https://t.co/A1uNXJLN2q pic.twitter.com/iY7eVEAw37
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Numeroに載ってたAUBETTさんのインタビューはこちらです https://t.co/xOWBbUvHkH
— Naomi │アートとデザインのインタビュアー・ライター・企画取材編集、ミュージアムコラムニスト (@Naomin_N0506) November 19, 2022
パタンナーになりたかった人間としてはファッションデザインや服作りもやっぱりアートだと思うし 纏えるアートピースなので お気に入りは大切に着続けたいなぁと思います
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いま改めて、オープンスタジオでの写真を見返して、あ!あの作品!、と気づいたものが何点かありますね・・・
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また、自ら企画・編集・デザインまで手掛けた作品集『 shiten 』を、クラウドファンディングを活用して制作・発行!なんてプロジェクトも同時進行(!!!)させて、見事に完成✨
この書籍、本屋さんでは買えない、とても貴重な一冊ですが、なんと、今回の個展の会場で買えます!!! おそらく在庫限りなのでは。ぜひぜひ。
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まとめ
世の中のスピードは速くなるばかりで、ついつい急いで結果を求めたり、効率の良さを求めて手順を省き、サクサク進めたりしがちです。
でも、ぱっと見は良さそうでも、本質はそれなりにしかなりません。
年を重ねてつくづく思うのは、結局、どの世界にも"近道"なんて存在せず、もしあっても、通ったところでロクなことはない。
何事も一朝一夕にかたちにはならず、時間をかけ、相応の努力と鍛錬をたゆまなく続け、試行錯誤を繰り返していくしかない。
瀬戸さんも、膨大な数のクロッキーを描き続け、日々、粘土や画材と格闘し、手を動かし続けて、いくつもの個展やグループ展で作品を作り続けてきての、今、でしょう。
あれこれスムーズ、サクサク歩んできての、今、では決してないはずです。
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きっと今回の個展が、さらなる飛躍のはじまり、になるでしょう。
こうして振り返りながら、今回の個展を観て、瀬戸さんの歩みをリアルタイムで追いかけ、応援していられることが、何よりも本当に嬉しいです。
と同時に、瀬戸さんの活動を追いかければ追いかけるほど、わたしはいつも背筋が伸びる思いです。
余談も余談ですが・・・
2020年、瀬戸さんにインタビューさせていただいた当時のわたしは、本当にまだまだ駆け出しもいいところの、フリーランスの書き手でした。
美術の世界のコネクションも実績も皆無。それならこのnoteで書き続けて実績にしよう、と思い、誰に頼まれた訳でもなく、日々コツコツと種をまき続けていました。
するとある時、ほんの僅かな、まさに前髪しかなかったようなチャンスがやってきたので、すかさず「瀬戸さんをインタビューしませんか?」と逆に企画を提案し、瀬戸さんへインタビュー取材の交渉をして、実現させました。
チャンスは、いつどこにあるか、誰が持っているかはわからないものです。
運よく自分の目の前を通っても、一瞬の出来事。
その一瞬に気づけるか、掴み取れるかどうか、は、いかに日々準備できているかどうか。本当に、紙一重です。
あれから2年半。
本当にありがたいことに、瀬戸さんが自費出版した書籍『 shiten 』に、書き手の一人として寄稿させていただきました。
この先も、彼の活動に恥じない書き手でいたい、書き続けていたい、と思っています。本当にまだまだ、コツコツ種をまき続ける日々です。
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