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めくるめく 岩崎龍二さんのうつわの世界


この世には こころ動かされるものが数多存在し、人の数だけ ”推し”の世界があるでしょう。”推し”のある生活、とても楽しいものです。

でも、こんな気持ちを抱いている方もいませんか?

確かに、無条件にこころ惹かれる。
けれど、きっと一歩踏み入れたら抜け出せない。”沼”にはまって、好きすぎてどこまでも追いかけてしまいそうで。だから、敢えてちょっと距離をとっている。。。

わたしにもそんなジャンルがいくつかある(!)のですが、その一つが、作家の方々が手がける うつわの世界 そして民藝の世界を追いかけること でした。 

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うつわへの一目惚れは突然に

岩崎龍二さんが作るうつわに出会ったのは、2020年のちょうど今頃。
国立新美術館のミュージアムショップ、「スーベニアフロムトーキョー」でした。展覧会を観に行くと必ず、ショップがあるB1Fをのぞきます。


その日もいつものようにぐるぐると くまなく店内を巡り、 珍しくなにも買わないまま、出口へ向かう瞬間でした。
ショーケースに並んだ、グラデーションの彩色とフォルムが美しい一輪挿しが目に飛び込んできたのです。

まるで孔雀の羽のような色と模様に、気づいたら吸い寄せられていました。確か4点くらい並んでいたはず。フォルムは全てほんのちょっとずつ違うけど、どれも片手のひらに乗るくらいの小ぶりなサイズ。

わたしがあまりに微動だにせず、じーっと眺めていたからか、スタッフの方が声をかけてくれ、ケースから出して並べてくれました。

岩崎龍二さんという若手の陶芸家の作品であること、「環流し」というデザインで、スタッフがセレクトして仕入れた品物であること。

「どうぞお手にとってご覧くださいね」
お話を聴きながら、うつわにふれてびっくり。今までにふれたどのうつわとも違う質感なのです。つるつるでもなく、ざらざらでもない。しっとり さらさら 衝撃でした。

環流しの色と相まって、本当に神秘的。
こんなうつわがあるなんて・・・素敵すぎる!!!

そのときすでに、どれかひとつ我が家にお連れしたい、と思っていたのですが、30分見つめ続けて悩んでも、これ!と決められず、かといって全てを買うほど思いきることもできず。

閉館時間をむかえてしまい、縁があればきっとまた出会えるはず、と、この日はそのままお店を後にしたのでした。

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再会も突然に


それから数か月後。渋谷PARCOを訪れたとき、すぐに気づきました。
たまたま前を通りかかったお店の棚に、岩崎さんのうつわが並んでいたのです。
それは美術館で見た、環流しの一輪挿しではなく、白とエメラルドグリーンが美しい湯のみでした。

すぐに岩崎さんの作品だと分かったのは、美術館で見かけてからずっと忘れられなくて、たびたびネットやSNSでお名前を検索し、どんな作品を手掛けてらっしゃるのかを見ていたから。

ずらっと並んだ湯のみですが、どれも微妙にグリーンの色味やグラデーション具合が異なります。もちろんフォルムも千差万別。一つひとつ手作りしているからこそ、バラつきがあるんだとすぐにわかりました。

ちょうど入荷したばかりなんですよ。たくさんありますから、ぜひ持ったりして比べてみてください!と、お店の方が次から次へとストック分も見せてくれました。

たぶん最終的に20個近くがカウンターに並べられ、わたしは一人、うーんうーんとうなること数十分。ついに無事、購入!と相成ったのでした。

それからさらに数か月後。
縁あって、同じお店で片口のうつわも購入することができました。

片口は、ちょっとドラマチックな濃いブルーのグラデーション。
どちらの色も魅力的ですよねぇ。

片口は、ひとめ見た瞬間、お花をいけたい!!!と思いました。
以降ずっと、花器として使っています。中にすっぽり収まる小さなビンを”落とし”として入れ、そこにお水をはっているんですよ。

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念願かなって個展へ

そして、2021年4月のこと。岩崎さんご本人のインスタで、個展開催との告知を発見しました。
長らく交流があるという、青山・ギャルリーワッツさんでの「岩崎龍二『101展』」。素晴らしいコンセプトのもと、数年がかりで準備されてきたそう。

ぜひ、ぜひ観たい!!!しかし、ちょうど仕事が佳境に。
ちょっと難しいかなぁ、なんてぼんやり思っていましたが、何とも不思議なもので、するすると時間が空き、まさかの初日にお邪魔することができたのでした。

初めて伺ったギャルリーワッツさん。
ギャラリーの方々と、普段は大阪のアトリエで制作している岩崎さんご本人が、暖かくむかえてくださりました。

ずらーっと並んだ作品の数。圧倒されました。
しかも本当に、一つとして同じものがありません。全て一点ものです。
大きくて美しい平皿。フォルムの美しい花器や茶碗。両手のひらにちょうど良く収まる小鉢。

釉薬の色合いも、質感も、多種多様。
一つひとつが本当に素敵な佇まいで、思わず、鑑賞してしまいます。

そして、ずーっとお聞きしてみたかった釉薬のこと、うつわの質感のこと、かたちのこと、今の制作スタイルになるまでのこと、などなど、いろんなお話を岩崎さんから伺うことができました。

はてさて、大変です。
どれも素敵すぎて、全然、選べません(笑)。どうしたものか。。。

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なぜこんなに、人はうつわに惹かれるのか

思えばうつわって太古の昔から、人間が使い続けてきた道具の一つですね。
暮らし、そして生きることに直結する ”食” に、欠かせないものだからでしょうか。

うつわがお好きで、もう食器棚がいっぱいで(笑)と言いながら買ってる方。あなたの周りにも、一人や二人、いらっしゃるでしょう。
それ、わたしです!という方も、きっと少なくないかと。
うつわ沼 と言われるのもよく聞きます・・・。

これまでわたしは、実のところ、かなり自制していました。
すでに、工芸やら彫刻やら版画やら写真やら、多彩な小沼を巡り続けています。ポストカードや図録、手ぬぐい、ファッションならミナペルホネンやお着物もそうでしょう。

そもそも、食器なら今あるもので充分。困ってないし、すでに何人家族だというくらいマグカップを集めてるし、収納スペースも限りがあるし・・・。


しかし、じわじわ背中を押されていた

振り返ってみればこの数年で、わたしには2つの変化が起きていました。

まずは何と言っても、茶道のお稽古を始めたこと

茶道では、お茶碗や茶器、水を入れる水指(みずさし)、香合など、さまざまな 焼きもの のお道具が欠かせません。茶道を習うようになって、これまでふれてこなかったものを手にする機会が増えました。

それまでも茶道具は、美術館・博物館で鑑賞してはいましたが、実際に使って用途を知ったことで、より身近に感じるようになり、産地や作り手のことにも一層、興味がわくようになりました。

また、初釜などの改まった席で、先生方が用意してくださるちょっと特別なお道具、お招きいただいた茶会で目にした素晴らしい茶道具のとりあわせ、茶事のお稽古もかねてお邪魔した赤坂の辻留さんのお席などなど、時折びっくりするような名品が目の前に現れ、魅了される機会に恵まれるようにもなりました。

まだまだ初心者もいいところですが、お稽古を始める前よりは確実に、”目が肥えた”と思います。

そして、作家さんの作品を購入するようになったこと

最初の一歩を踏み出すまでは、確かにものすごい心理的ハードルを感じてましたが、本当に、わたしの手の届く範囲ででも、作家の方の作品を購入できるのです!!!

人生で初めて、ギャラリーで個展を観て、ご本人と話して購入したのが、大好きな大久保草子さんの木版画作品
自分で好みの額装をする楽しさにも気づくことができました。


憧れでしかないと思った新里明士さんの茶碗を、セカンダリーで見つけて思いきって購入したり、


クラファンでパトロンにもなっている瀬戸優さんに、これまた思いきって彫刻作品をオーダーして制作してもらったり、

いつもは抽選販売のみ。たまたま出会えたぬいぐるみ作家・そぼろさんのかわいすぎるイッヌ氏もお迎えしました。


また、雑誌でたまたま見かけてひとめぼれし、展覧会情報を手がかりにお邪魔した、写真家・上田優紀さんの個展。
大判サイズのプリントは購入できませんでしたが、後日、ご本人にお問い合わせして購入した写真集は、CanonのSHINES入選記念として制作された特別な装丁。
印刷部数も限られ、美術作品と言っていいくらい貴重なものだと思い、今もとても大切にしています。


こちらの記事にもまとめましたが、その作品が大好きなことはもちろん、作家の方を応援する意味で、貴重な作品を購入するようになったことは、非常に大きな変化でした。


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さて、作家さんのうつわって・・・?

今回のように、ギャラリーなどで個展が開かれ、展示・販売される作家さんのうつわ、と一言で言っても、本当にさまざま。
素材はもちろん、作り方も作家さんが一つひとつ手掛けるものから、手作りの良さを残しつつ可能な限り量産されているものまで、グラデーションがあります。
もちろん、お値段も幅が広いですよね。

わたしは最初、そうした作家さんがつくる食器やうつわの、“相場” すら、ほとんどよく分かっていませんでした(今も全くもってあやしいですが)。

なぜなら、買ったことがなかったから。まぁ、見当がつかないの、当たり前ですよね。

皆さま、そもそも、初めて自分で、そこそこのお値段の食器を選んで買ったのって、何歳の時ですか?
わたしは、上京してひとり暮らしをし始めて、しばらく経ってからのことでした。たぶん20歳になって以降です。

食器は、実家で使っていたものをそのまま持ってきたため、買う必要がなかったんですよね。
家に友達や恋人を招くにしても、学生の節約生活ですから、100円ショップという強い味方に頼っていました。
で、当時、アルバイトしていたスターバックスの店頭で、シーズンごとに発売されるマグカップやお皿を陳列していて初めて、え!食器のお値段って!!!と気づきます。

さらにある時、インテリアショップで何気なく、”○○さんの○○焼” のようなうつわを手にとって初めて、え!!!作家さんが作るうつわって 結構いいお値段なのね!!!と気づいて、ちょっと焦ったのでした。

食器、うつわって本当に身近なのに、なかなか自分で買う機会って少ない。だから相場もあるようでない、というか、見当つけにくい、不思議な世界だなぁ、なんてことを思ったのでした。

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迷って迷って迷って、迷ったら・・・

さて、ギャルリーワッツさんでの話に戻ります。

ギャラリーではないですが、すでに2度、岩崎さんの作品を購入していたこともあり、価格帯は何となくつかめていました。わたしでも無理なく購入できます。

ギャラリーなので、少々ドキドキしましたが、とてもわかりやすく、うつわの高台など、底の部分に値段シールがついていました!ありがたい。

量産されないうつわを、買うか、買わないか・・・。判断が難しい理由の一つは、今を逃したら同じものにはほぼ出会えない、もしあったとしても次いつ出会えるかもわからない、というところ。
焼きものは本当に本当に、わずかな偶然の積み重ねで生まれる 一点ものです。
本当に、素敵なものばかり。あれもこれも我が家にお越しいただきたいのが本音です。でも買えるからといって、あれこれやたら買い占めるのは違うと思う。どれがいいの?と、ひたすら自分と相談し続けました。

結局、本当に自分のできる限り・・・!という点数を購入したのでした。



それでも帰宅後、やっぱりあの子も買えば良かった・・・!!!と、どうしても忘れられない1点があり、ギャラリーへお問い合わせしたものの、すでに別の方にご縁があったそう。
作家さんのうつわを買うって、こういうことなんだなぁ、と、身をもって体験できたのでした。


ちなみにこちらが、そのうつわ。
ちょうど両手のひらに収まるサイズで、蓮の葉を連想しました。そのまま飾っておいて、ずっと眺めていたい、と思った、神秘的な美しさ。とても心に残っています。素敵だったなぁ。

いわゆるベーシックなフォルムではないし、釉薬の雰囲気も唯一無二だと思います。
もう一度作るのは難しそうだけど、いつかまたどこかで出会えるかなぁ、ご縁があったらいいなぁ。


ということで、本当に日々大切に、岩崎さんのうつわを愛用しています。
美しいうつわが、暮らしの中で、毎日、ちらりと目に入ること、日常使いできることが、こんなにも心豊かにしてくれるとは。驚きました。

はまって楽しい、うつわ沼。これからも岩崎さんのうつわを、できるだけ追いかけたいなぁと思っています。
民藝のはなしや、他の作家さんのうつわの話も、また近いうちに。


●岩崎さんは 今月7/22(木)〜  六本木のミッドタウンで個展を開催予定です。期間中、ご本人も在廊されるそう。もちろんわたしもお邪魔するつもりです。ご都合の合う方は ぜひ✨


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次の記事は 7月15日(木)に公開します。

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