松本清張 朝鮮を題材に取る
実在した朝鮮の詩人林和を主人公とした松本清張の作品。清張は、そのときは些細とすら思えないような出来事が、強大なボタンの掛け違いとなって、後々に、当人や周囲、社会を翻弄させていく展開を記述するのが非常にうまい。
人間の主体的な決断を悲劇的な結果として裁断してしまい、決断した人物を翻弄して、逃げ道を与えない清張の筆致は人間精神や社会というものの襞をよく捉えているともいえるし、清張自身がどこかルサンチマン的で、人間の運命をそのように描いてしまうのかなとも思う。清張自身は非常に遅咲き