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三島由紀夫と司馬遼太郎 なんのなんの、まだ令和の今でも彼らは蠢いている

成田空港と同調圧力を書いてみたあと、三島由紀夫のことが思い出されたけれども、遊び惚けた旅に行っていたので、しばらく放置していた(笑)しかし不思議なことに、浅羽・星・松本健一・三島・司馬 パンの耳だけで生活している私より(笑)に記した通り、新興ブルジョワ(いまどき使います?笑)の象徴のようなフタコ(地元の人はあまりニコタマとはいいません)にあるリニューアルオープンしたての文教堂で面白い本を発見した。これにより、また積読が増えてしまったわけだが、今はさておこう。本を盛んに買うのはデフレを是とせずに景気をいささかなりともよくしようという私の現れなのである、と私は私自身に言い効かせようとしている(笑)

松本健一氏の著書で読みかけなのであるが、書評を書くわけではないので、読みかけの熱量のままに記しておく。本書は司馬遼太郎と三島由紀夫の戦後を代表する二大巨頭を対比させた本で、松本は司馬をリアリストであるといい、三島のことをロマン主義者だったという。私もそう思う。

しかし、それは原則であって、司馬に関しては、嫌いなものには触れないという姿勢を読み取っていたものの、三島の才能への絶賛もあったし(「午後の曳航」)、司馬自身、「燃えよ剣」などでは土方をロマン的に描いていたという。一方でロマン主義者の三島についても、「鏡子の家」の作品において、戦後日本の現状に対するリアリズムを志向していたとし、両者は交叉もあったという。三島に関しては、上述の小説が不作であり、これ以降は、ロマン主義的な認識論者から行動論者へと転換していくとする。

三島が自決した夜に司馬が毎日新聞からの依頼で、事件について急いで執筆した文章がある。もうちょっと注目されていいのではないかなと思っていたが、見事に言及されていて、いうなればリアリスト司馬の三島への嫌悪もあるだろうが、三島的な状況が広がることへの懸念だったのであろう。

個人的には司馬の作品をよく読んでいるものの、三島の文章や全共闘との討論でみせた話しぶりからすると、彼は希代の天才だったと思うし、周囲が見えすぎていたような気がする。司馬もまた天才ではあったけれども、少なくとも外見上はほがらかで、気持ちは明るくしてくれるものの、生き様としては三島に共感してしまう。

ともあれ、松本の本を読んでいる途上、三島の頃は運動の時代であり、以後の日本の状況とは連続性こそあれど、基本的には異なっていると認識していた。しかし、司馬のバブルに対する悲憤の文章などを改めて思い出してみると、戦後の日本はなんら変わっていないのかもしれないという思いが強くなった。

すなわち、戦後日本は戦争こそ無くなったけれども、アメリカの傘のもとで、経済重視にひたはしり、気が付いてみれば、国に対する矜持も無ければ、国土に対する扱いも粗雑になり(資本主義という仕組み上、仕方がないことだけれども、特にバブル期はひどかった)、結局のところ、自分で自分の首を絞めてしまっているのではないかと思う。そしてまた、憂国という点で司馬と三島の二人は共通しており、要はそのアプローチが真逆だっただけの話だったのだと思うが、松本の本を読了するまで結論は保留したい。

デフレが30年も続いている。もう異常という域を通り越していると思うが、なおも、戦後日本政府はとても国民の目線にたった施策をしているとは私には思えないし、国民もかつてのように政府の批判はしても、行動することもなく、結局のところは、政権の延命に力を貸している。政府も国民も不即不離になっている。そこには三権分立なんてものはもちろんなく、政府は擬制であるという考えなども、まったくなく、司馬や三島がこの状況を見ていたら、どのような発言や行動をしていたのかということが、とても気になっている。私は戦後日本はもう終焉していいと思うし、自動的にそういう方向になると思う。ただ、そのあとの展望となると見えてこない。ぎりぎり先進国である程度の立ち位置になるとは思うが、或いはもっと貧しくなっているかもしれない。しかしながら、その貧しさこそが逆にチャンスなのかもしれないとも思っている。制度を一度根本的に解体する必要があると考えている。

というわけで、後半部は話がそれたが、松本の論考はわかりやすいし、一義的な決め方はしていない慎重さにも好感が持てる。司馬遼太郎と三島由紀夫という両雄に関心がなくとも、戦後史の総括や令和の今にも敷衍できるほどの普遍性を有しているとすら、今現在は思っている。


当初は三里塚闘争から三島へと軸が移っただけなのだが、歴史とは断続的なものではなく、持続的なものなのだと思っている次第である。

さて、天気がいいので外にでもでかけたいなぁ!


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