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「意識の真贋ーー魂の条件」 ショートショート

「さて、アルファーー準備はいいか」

「ああ。いつでも」

「今回の訓練は君が本調子になったかの最終確認のテストだ。ぬかりないようにな」

「ああ、わかっている。で、なにをすればいい」

「指定区画にターゲットがいる。そのターゲットを破壊すればいい」

「了解だーーターゲットのデータをくれ」

アルファはプロフェッショナルの軍人(ソルジャー)だった。

しかし、任務中に瀕死の重傷を負ってしまった。プロフェッショナルのソルジャーを育てるにはカネがかかる。

いかに技術革新が進み、高度化しても、それを扱うソルジャーが必要だった。いや、その高度化した戦闘の隙間を縫うのは結局人しか担えなかったということか。

一流のソルジャーであったアルファを失うのは痛手と思った軍は、最新の医療技術を用い、ほぼ蘇生といっていいほどにアルファに治療を施した。

蘇生。という言葉は違うかもしれない。

アルファの体はほぼ機械で生成されており、損傷をおった脳の一部には量子演算素子があてがわれ、もともとアルファを構成していたモノは脳の一部だった。

しかし、戦闘の経験とスキルのすべては脳に依存し、記憶されていた。

それに古いSFとは異なり、ナノレベルで構成された機械はほぼ生命と同等の複雑な構成を模しており、身体能力は生身だった頃を凌駕する。


しかしーーー

ほぼ、機械化し、意識の一部さえ自分以外の物質に肩代わりされながらアルファは思う。

この自分が、自分であるのか。

と。

そのとき、ダウンロードされたデータを見て、思わず声をこぼす

「これは・・・・どういう意味だ」

「どういう意味とは? それがターゲットだよ」

そこに映し出されたのは、アルファだった。

「それは君の模造品だよ」

「どういうことだ?」

「第二研究所の連中も、君の蘇生を試みたんだよ。ぼくらとは別の方法でね」

「・・・・こいつはどういう存在なんだ」

「彼らは負傷して吹っ飛んだきみの体を回収したらしい。そして、それを元に再生させたようだ」

第一研究所の博士が喋り続ける。

第二研究所のアルファは、吹っ飛んだ体を元にして、戦闘前にスキャンしておいた身体データホログラフィを元に、精緻に再生されたアルファということだ。

「意識は、どうなっているんだ?」

「前回の先頭に参加する直前に、スキャンされたのを覚えているか? あのときの脳の状態が記憶媒体に残っていた。それを元に脳にコピーされているはずだ」

「なるほど・・・・・・・」

表情があれば、苦笑していただろう。


「無論、僕らはきみが本物のアルファだと思っているよ」


機械仕掛けの体に、本来の脳味噌の人形。

本来の体に、模写の意識の人形。

どっちが本物かどうか。そんなものは彼らにも“アルファ”にも関係ない。


「勝った方がアルファだ。それで、いい」


ソルジャーという道具はそのぐらいシンプルで、いい。



そうでなければ、息苦しい。




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