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[映画感想] 土を喰らう十二ヵ月|食べることに向き合うことで

映画「土を喰らう十二ヵ月」を観てきた。
食べることが大好きなので、土井 善晴氏が初めて映画の料理を手掛けたと聞いたら観ずにはいられません。

想像以上にグッときてじんわりと染み渡り鑑賞後の余韻が心地よい作品で、とてもとても好きな映画だった!

あらすじ

作家のツトムは人里離れた長野の山荘で一人、暮らしている。山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら、原稿をしたためている。時折、担当編集者で恋人の真知子が、東京から訪ねてくる。食いしん坊の真知子とふたり、旬のものを料理して一緒に食べるのは楽しく、格別な時間。歳の離れた恋人がいて、悠々自適な暮らしをするツトムだが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいる。
日活 公式サイトより

沢田研二演じる作家のツトムの山での暮らしを描いた作品。山で旬のものを採ったり畑で野菜を育てたりしながら、季節に応じた料理を作り食べる。時には松たか子演じる恋人の真知子と一緒に。

恋人や山の師匠、亡くなった妻の家族、お寺の娘さんなどとの関わり合いと共にあるツトムのこしらえた食べ物たち。それを通して見えてくる”生きる”ということ―。

感想

生きることと食べること

料理を作ること、そしてそれを食べること。毎日行っていることだけど、あんまり意識していないことだった。そのことを改めてじっくりと考えるいい機会になったと思う。

「あなたはあなたが食べるものでできている」とかって言葉はよく目にするし、時々食べ過ぎてしまうけどそれなりに栄養バランスも考えて食事をしている。そう思っていたけれど、もっと別の角度から”食べる”ことを考えてみたくなったのである。

私自身、食べることは大好きなのだが時にあらゆる意欲を失ってインスタント食品やファストフード、コンビニ食品のオンパレードになる日がある。味はおいしくお腹も満たされるけどどことなく憂鬱になるのは何故だろう?と思っていたのだが、その理由が分かった気がした。

身体を動かしお腹を空かせ、食材と向き合って料理をする。そうして食べる料理には充実感や生きる喜びがプラスされている気がする。

今やスーパーに行けば季節に関係なくさまざまな野菜が手に入るし、冷暖房のおかげで家の中は年中快適。そのこと自体は素晴らしいと思うし手放せない。だけど、四季のあるこの国でせっかくならばもう少し季節を感じながら生きていきたいとこの映画を観て感じた。

生きるためには欠かせない食事。毎回は無理だとしても、たまにでいいから旬のものをじっくりと味わいながら食べる時間を作りたいと思う。

喰らうは生きる
食べるは愛する
いっしょのご飯が
いちばんうまい
映画「土を喰らう十二ヵ月」より

精進料理と侮るなかれ

子供の頃に禅寺で奉公していたツトムが作るのは精進料理。肉は使用せず、野菜や豆腐などの食材を使った料理たちが映画でも登場する。

精進料理として思い浮かぶのは、お葬式や法事の時の冷たい薄味の地味な料理。そのイメージを覆すような美味しそうな料理たちに思わずお腹が鳴ってしまった。

畑や山で採れた旬の食材を丁寧に洗い調理して、釜で炊いたご飯やお漬物と一緒に食べる。凝った味付けでも豪華な食材でもなく、食材自体を味わうための素朴な料理が最も贅沢なもののように思えた。

沢田研二という俳優

沢田研二といえば若かりし頃のジュリーが真っ先に思い浮かぶ。
母が昔ファンだったので、どんな人なのか興味がありレコードを聴いたりテレビ番組で歌うジュリーの映像を見たりした記憶がある。しかしながら、彼の出演作で観たことがあるのは「ヒルコ/妖怪ハンター」のみだった。

今作での劇中の佇まいやしぐさ、表情・声がとても素晴らしく、ツトムという人物がそのまま存在していてドキュメンタリーを観ているような感覚だった。

映画の冒頭、小芋を洗うシーンがあるのだけれど、その手を観た瞬間にツトムという人の人生を見たように思うのだ。その動作なのか、彼の手の存在感なのか、語りの良さなのかは分からない。その説得力たるや…

これを機に他の出演作も観てみよう。

最後に

ツトムと真知子の食事のシーンは本当に美味しそうで観ててとても楽しかった!松たか子の気持ちいいほどの食べっぷりの良さは見もの。

さすがは土井先生、料理がこんなにも多くを語るとは鑑賞前には思ってもみなかった。映画を観る前と観た後では、選ぶ食べ物が変わるかもしれません。その習慣が続くかどうかは置いといて、そういう映画体験って楽しいなと感じた一日でした。

精進料理は難しいけれど一汁一菜や和食に挑戦したくなった。まずは土井先生のアプリ、ダウンロードしてみようかな。

あと、実家のご近所さんからお裾分けしてもらっていた子供の頃に飲んだ赤シソジュースを思い出して今すごく飲みたい気分。

追記
土井先生のアプリ「土井善晴の和食」を早速ダウンロードしてみたら、映画に登場する料理のレシピが公開中でした!無料だし、映画のオフショットも観れるのでオススメです。

レシピを参考に小芋を焼いてみました。我が家には焼き網がないのでオーブントースターで焼いていますがとても美味しかったです。

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