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半人前の共感力。【恋愛編】|エッセイ

突然ですが、私は音楽が好きです。

音楽とは実に不思議なもの。

思い出の詰まった曲を聞くと、一瞬で、その曲を聞いていた当時の自分に戻ることができます。

まるでタイムマシンに乗ったかのように。

色鮮やかな記憶が、音を通して蘇ってきます。

あまりに鮮明に思い出すので、

神様は音楽に、時を超える力をお与えになったんじゃないかな?と思う時があります。


変わらないもの 探していた
あの日の君を忘れはしない
時を越えてく思いがある
僕は今すぐ君に会いたい

「変わらないもの」


「時をかける少女」の「変わらないもの」。

この曲を聞く度に、思い返す人がいます。


よろしけば、聴きながらでもお読みください。




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私の強みの一つは、共感力だと思っている。

自分で言うのもなんだが、一人ひとりの気持ちに寄り添って、その心情を理解しようという思いが強い方だと思う。

ただ、この共感力とは、正しく身につけていなければ、諸刃の剣となる。 

すなわち、良い効果もあるが、悪い結果が出ることもあるのだ。

たとえば、相手の辛い生い立ちに同情して目が離せなくなり、恋愛関係に発展することもある。

ただ、これは、恋愛と救済を間違えている、という可能性もあるらしい。

恋愛はお互いに自立した関係で入るのが望ましく、どちらか一方がもう一方に精神的に頼り続ける、という形は、「恋」ではなく「依存」となる。

誰しも依存したくて恋をしているわけではないだろう。

それでも、一番好きな人に分かってほしい、傷を分かち合いたいと思うのが、人間の常なのかもしれない。

今日はそんな私の、半人前の共感力について。


第三弾です。



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太陽みたいな人だな。

Aに対する第一印象はそれ。

Aはいつだって、みんなの華だ。

Aがいるところに、人が集まるわ集まるわ。

餌でもまいてるのか?と思うくらいに、いつも後ろには人がぞろぞろ。

何これ。
みんなAが好きなの?

呆れて物が言えないぐらいに、後ろについて歩いているのは全員、女子。笑

さては、相当の女たらしか?
それとも、女子力の高い男子なのか?


出会った当時の私は、Aのずば抜けたカリスマ性に圧倒されながらも、少し警戒していた。

元々女子校育ちだったこともあって、そもそも男子にはあまり慣れていなかったし。

それでも、妙に気になる。

なぜいつも違う女子を引き連れている?
それも複数……。笑

謎が好奇心に変わり、ちょっと首を突っ込んでみた。笑  


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いざ話してみたら、Aは思ってたより全然チャラくなかった。

大真面目に人助けが好きで、困っている人を放っておけないギブパーソンだった。

連れている女の子がいつも違うのは、彼女でも何でもなく、悩み相談に乗っていただけ。

まあ、女子といる方が気楽なタイプの男子ではあるのだろう。

そんなわけで、いつも隣にいる女子のバックグラウンドは重め。

家庭問題や異性問題で悩む、訳ありの女子ばかりだった。

そして、みんな口を揃えて、「Aだけは信じることにしたんだ〜」と言うではないか。

なんとなんと。
どんなところが信じるに値するやつなのか?

気になる私は、さらに探求してみることにした。笑



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Aはその華やかな外見とは裏腹に、剣道部の部長も務めたことのある、硬派な人だった。

剣道3段の主将が、なんで金髪パーマなんだよ、と突っ込みたくなるが、どうやら美容師さんに明るい色を勧められてのことらしい。

高3までは丸坊主だったのに、急に金髪パーマとは。
逆にずっと坊主だった分、やってみたくなるのかな?

まあ、人と被るのが嫌だ、という強い個性は感じたよ。

この人面白いな、と思ったポイントは数知れないけど、ファッション感覚はずば抜けていた。


街で人が自分と同じ服を着ているのを見たら、その瞬間に自分の服を破り捨てる


この言葉には驚愕したよ。

確かに古着系の個性的なファッションばかりだから、人と被ることもなかろう。
心配しなくても良いのにね。


古着なのも本人曰く、お金の節約らしい。
着なくなった服は、フリマで売るのだとか。


金髪パーマに古着系。
まあ、原宿とかにいたら、完全に声をかけるのに躊躇するタイプ。笑


引き連れてるのは女子ばかり。
なのに、手を出したという話は一切聞かず。


それどころか、Aといるとみんな、一気に元気になる。
なんとなく、Aがいるところなら行ってみよう、と思わせてくれる何かを持ってる。

当然、どこに行ってもAはリーダー。
スピーチをすれば、沢山の人が聴きに来る。


なんで、お前はそんなに人を動かすのか。

その答えは、Aのバックグラウンドにあった。


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Aは生い立ちに、ある種の闇を抱えていた。

Aの家は母子家庭で、お母さんが未婚の母として、女手一つでAを育て上げたという。

父親が誰かは、本人には知らされていなかった。

父親がいない、という空虚感は、しばしばAを反抗に走らせた。

中学の時は、先生や母親を困らせたくて、教室の窓ガラスを割ったこともあったという。

唯一続けていた剣道は、お母さんが「少しでも父親らしい男性の存在を感じて欲しい」と、近所の剣道教室に入れたことがきっかけらしい。

やや、素行は荒れることはありつつも、剣道の厳しい修行には耐え、3段まで取得した。



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Aの強みは、父を知らず、シングルマザーの家庭で育ちながら、その環境を恨むことをやめ、

「全ては自分を成長させるための糧だった」

と言い切れたこと。

大学1年生にして、よくぞその境地まで辿り着けたと思う。


「母ちゃんには感謝してる。だって、本当に二人きりだったから」


と、「母ちゃん大好き」も公言していた。笑


「父親のことはよく分からないけれど、きっと何か理由があったんだろうし。
親だって完璧じゃないくらい、この歳になればわかるから」


と、親にも理解を示していた。

後にAは、ボランティアサークルの部長を務めるようになる。


フリースクールの子たちの前で自分の体験談を語ったり、

家庭が複雑な子の支援活動にも、積極的に取り組んでいた。

後輩たちにも、「環境のせいではなく、自分で立ち上がること」の大切さを熱く語る男だった。


そんなAだからこそ、人が集まったし、訳あり女子が心を開く唯一の場所になっていた。

普通の男ならそれだけモテたら、何人かと勢いで恋愛関係に入ってしまいそうなものだが、律儀にもそんなことはしなかった。

恐らく、Aは両親の事もあって、衝動的な恋愛には一定のリスクがあることを理解していたからだ。


そして、Aには、堅実に2年半ほど付き合っている、年下の彼女Rがいた。

Rもまた、お日さまのように明るく、その笑顔で周りを照らすような、素敵な子だった。

いつも愛くるしい妹のように慕ってくれる、天真爛漫なR。

可愛かった。
応援したかった。

ただ、Rもまた、複雑な家庭問題を抱えていた。



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Rには障害のある兄弟がいたが、凄腕のお母さんが、キャリアと育児を両立されていた。

AとRの絆が崩れ始めたのは、大学3年の頃。

きっかけは、バイト代を稼ぎつつ、サークルでのボランティア活動に勤しむRを、母親が許さなくなってきたこと。

ボランティアなんかで遊んでないで、しっかりバイトして学費代を払って欲しい。

お母さんはそう言いたかったのだろうけど。

ボランティア活動で人を助ける事に生きがいを感じていたRは、母親とぶつかることになった。

当然、「活動に行きたいけど行けない」、という悩みがRの頭の大部分を占める。

その悩みを受けたAが悩む、という負のスパイラルが発生していた。

ちょうどAは、そのサークルの部長になったところで、立場的にも厳しかったと思う。

これこれ、私の周りがみんな陥っている、「半人前の共感力」。

家庭の状況が安定していないのに、なぜか人助けをしたがる人達。笑

まずは自分を立て直さなきゃダメなんだって。

私の周りにそんな子が多かったのは、「半人前の共感力」が「類友(類は友を呼ぶ)」だからだろう。

みんな、いい子たちばっかりなんだけどね。



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活動に集中したいAと、家庭とのせめぎ合いで揺れるRの関係はこじれにこじれた。

見かねた私が仲裁に入った頃には、Aの心はすでに疲弊していた。

元々、誰かのために何かをしてあげたい、という思いが強く、助けを求められたらいつでも飛んでいく。

そんなAの予定は常に他人のために使われていた。

恐らく唯一の癒しだった彼女のRまで、悩み相談の対象となってしまうと、Aの逃げ場がなくなってしまう。

重い悩み相談の対象者となってしまったRは、Aにとってはもはや恋愛の対象ではなく、救済対象となってしまっていた。

Rも精神不安定で、辛くなるとすぐにAに電話をかけて、解決のつかない不安をぶつける、という依存状態だった。

Aも部長という立場上、他の皆に相談もしづらかったろう。

そこでAの相談相手になったのが、私なわけです。

最初は、RとAがどうしたら上手くいくか、という話ばかりだったと思う。

それから、サークルの運営や活動の広げ方について、何度も語り合った。

Aはいつも悩むRの姿に疲れてきてしまったから、とっくに心が離れていたのかもしれない。

Aの関心が、徐々にこちらに来ているのを感じた。

ただ、私はRの手前、面倒くさい三角関係になるのは嫌だったし、友人として長く続く道をとった方が、結果的に長い付き合いができると考えていた。

Rの悩み相談も、Aの代わりに受けようと心がけていたつもり。

でも、話を聞けば聞くほど、Aのことが好きなのが伝わってきたから、これはちょっと重かった。

ここに、話は聞いてあげるけど、解決できない私の、「半人前の共感力」がまた顔を覗かせていた。



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そんな私も、完璧な人間ではない。

やはり、周りから見たら「あの2人いい感じだね」、と思われていた節があったらしい。


ある日、急にRに呼び出されて言われた。


「光さん、Aのことよろしくお願いします。
私、生まれ変わったら光さんの娘になりたいってくらい信頼してます。
Aもきっと、光さんなら大丈夫だと思う」


えっ?

なに、私は君たちの保護者なわけ?笑


私らしい展開でしょ?笑

まさかの現彼女のRから、「Aを譲ります」宣言をされた私でした。笑


いやいやいや、そんな面倒くさい橋、渡るもんか。笑

普通に親友として仲良くやっていった方が、後々長く付き合っていけるでしょ。笑

Rとも仲良くしたいし。

というか、今そんなことしたら、Rの心が壊れちゃうでしょ。


私のその判断は、今も間違っていなかったと思う。

なぜなら、今でも彼らとは仲良しだから。笑


正直に言うと、惹かれる部分は大いにあったよ。

でも。

こんな譲り受けるみたいな状況になる人っているんでしょうかね?

そんなつもりで悩み相談に乗っていたわけじゃないし、下心のある嫌な女にもなりたくなかったから、この時はまさかまさか!で、流させていただきましたよ。


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でもね、中学生みたいな展開なんですけど、その先ずっと、私たちは強い絆を感じていたと思う。

Aとは何でも話せたし、どんな話でも「どんと来い!」のAの器の大きさに何度も助けてもらった。


だからさ、俺たち当たり前に生きてることだけで感謝なんだって。

まじで。神様に感謝しとけよ、お前ら


Aのその感覚は揺らがなかった。

共感力、という意味では、Aの共感力は突き抜けていたし、どんな辛い時も、Aなら絶対に分かってくれる、という安心感が、私の心の大きな柱になっていました。


Aのいない人生は考えられなかったよ。


というわけでなんと、私たちは全く付き合わないまま、約4年の間を両片想いのようなまま、日々を過ごしましたとさ。笑

不思議なんですけど、言葉はいらない、という感じ。

でも、何もない。

臆病だったとか、そういうわけじゃないのです。

ただ、この関係性のままの方が、お互い長く続くということが分かっていたの。

同時に、一番に理解し合えるのはこの人だってこともね。

そういうことって、ありませんか。笑

ちょっと珍しいかな。


それでも、お互いの結婚、となると話は変わってきます。

やっぱり、どちらかが結婚するとなると、それなりにショックは受けますね。


え?好きなのに何で結婚しないの?って?

そんな野暮な質問やめてくださいよ。笑

色々あるのよ、大人の事情が。

Aは、生まれ変わったらもっと早くから勉強して、釣り合う男になる、的なことは言っていたような……、笑


この辺の壮大な恋愛話はまたの機会にしましょうね、聞きたければ。笑

ではでは、今日はここまでよ。

我ながら素直に書けた方だと思うから、この辺でご勘弁くださいね♪笑


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本日の教訓はこちら🌟

・恋愛と救済は違う
・共感力が強すぎると、自分が支えてあげないと生きていけないタイプとの恋愛に走りやすいが、うまく行かないことが多い
・恋愛はお互いが自立した状態の方が上手くいく


青い青い、青春の物語ですが、少しでも皆さんの人生の参考になれば、と思って書きました。


最後までお読みくださいまして、ありがとうございました🌸




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