半人前の共感力。【恋愛編】|エッセイ
突然ですが、私は音楽が好きです。
音楽とは実に不思議なもの。
思い出の詰まった曲を聞くと、一瞬で、その曲を聞いていた当時の自分に戻ることができます。
まるでタイムマシンに乗ったかのように。
色鮮やかな記憶が、音を通して蘇ってきます。
あまりに鮮明に思い出すので、
神様は音楽に、時を超える力をお与えになったんじゃないかな?と思う時があります。
「時をかける少女」の「変わらないもの」。
この曲を聞く度に、思い返す人がいます。
よろしけば、聴きながらでもお読みください。
--------------------
私の強みの一つは、共感力だと思っている。
自分で言うのもなんだが、一人ひとりの気持ちに寄り添って、その心情を理解しようという思いが強い方だと思う。
ただ、この共感力とは、正しく身につけていなければ、諸刃の剣となる。
すなわち、良い効果もあるが、悪い結果が出ることもあるのだ。
たとえば、相手の辛い生い立ちに同情して目が離せなくなり、恋愛関係に発展することもある。
ただ、これは、恋愛と救済を間違えている、という可能性もあるらしい。
恋愛はお互いに自立した関係で入るのが望ましく、どちらか一方がもう一方に精神的に頼り続ける、という形は、「恋」ではなく「依存」となる。
誰しも依存したくて恋をしているわけではないだろう。
それでも、一番好きな人に分かってほしい、傷を分かち合いたいと思うのが、人間の常なのかもしれない。
今日はそんな私の、半人前の共感力について。
第三弾です。
--------------------
太陽みたいな人だな。
Aに対する第一印象はそれ。
Aはいつだって、みんなの華だ。
Aがいるところに、人が集まるわ集まるわ。
餌でもまいてるのか?と思うくらいに、いつも後ろには人がぞろぞろ。
何これ。
みんなAが好きなの?
呆れて物が言えないぐらいに、後ろについて歩いているのは全員、女子。笑
さては、相当の女たらしか?
それとも、女子力の高い男子なのか?
出会った当時の私は、Aのずば抜けたカリスマ性に圧倒されながらも、少し警戒していた。
元々女子校育ちだったこともあって、そもそも男子にはあまり慣れていなかったし。
それでも、妙に気になる。
なぜいつも違う女子を引き連れている?
それも複数……。笑
謎が好奇心に変わり、ちょっと首を突っ込んでみた。笑
--------------------
いざ話してみたら、Aは思ってたより全然チャラくなかった。
大真面目に人助けが好きで、困っている人を放っておけないギブパーソンだった。
連れている女の子がいつも違うのは、彼女でも何でもなく、悩み相談に乗っていただけ。
まあ、女子といる方が気楽なタイプの男子ではあるのだろう。
そんなわけで、いつも隣にいる女子のバックグラウンドは重め。
家庭問題や異性問題で悩む、訳ありの女子ばかりだった。
そして、みんな口を揃えて、「Aだけは信じることにしたんだ〜」と言うではないか。
なんとなんと。
どんなところが信じるに値するやつなのか?
気になる私は、さらに探求してみることにした。笑
--------------------
Aはその華やかな外見とは裏腹に、剣道部の部長も務めたことのある、硬派な人だった。
剣道3段の主将が、なんで金髪パーマなんだよ、と突っ込みたくなるが、どうやら美容師さんに明るい色を勧められてのことらしい。
高3までは丸坊主だったのに、急に金髪パーマとは。
逆にずっと坊主だった分、やってみたくなるのかな?
まあ、人と被るのが嫌だ、という強い個性は感じたよ。
この人面白いな、と思ったポイントは数知れないけど、ファッション感覚はずば抜けていた。
「街で人が自分と同じ服を着ているのを見たら、その瞬間に自分の服を破り捨てる」
この言葉には驚愕したよ。
確かに古着系の個性的なファッションばかりだから、人と被ることもなかろう。
心配しなくても良いのにね。
古着なのも本人曰く、お金の節約らしい。
着なくなった服は、フリマで売るのだとか。
金髪パーマに古着系。
まあ、原宿とかにいたら、完全に声をかけるのに躊躇するタイプ。笑
引き連れてるのは女子ばかり。
なのに、手を出したという話は一切聞かず。
それどころか、Aといるとみんな、一気に元気になる。
なんとなく、Aがいるところなら行ってみよう、と思わせてくれる何かを持ってる。
当然、どこに行ってもAはリーダー。
スピーチをすれば、沢山の人が聴きに来る。
なんで、お前はそんなに人を動かすのか。
その答えは、Aのバックグラウンドにあった。
--------------------
Aは生い立ちに、ある種の闇を抱えていた。
Aの家は母子家庭で、お母さんが未婚の母として、女手一つでAを育て上げたという。
父親が誰かは、本人には知らされていなかった。
父親がいない、という空虚感は、しばしばAを反抗に走らせた。
中学の時は、先生や母親を困らせたくて、教室の窓ガラスを割ったこともあったという。
唯一続けていた剣道は、お母さんが「少しでも父親らしい男性の存在を感じて欲しい」と、近所の剣道教室に入れたことがきっかけらしい。
やや、素行は荒れることはありつつも、剣道の厳しい修行には耐え、3段まで取得した。
--------------------
Aの強みは、父を知らず、シングルマザーの家庭で育ちながら、その環境を恨むことをやめ、
「全ては自分を成長させるための糧だった」、
と言い切れたこと。
大学1年生にして、よくぞその境地まで辿り着けたと思う。
「母ちゃんには感謝してる。だって、本当に二人きりだったから」
と、「母ちゃん大好き」も公言していた。笑
「父親のことはよく分からないけれど、きっと何か理由があったんだろうし。
親だって完璧じゃないくらい、この歳になればわかるから」
と、親にも理解を示していた。
後にAは、ボランティアサークルの部長を務めるようになる。
フリースクールの子たちの前で自分の体験談を語ったり、
家庭が複雑な子の支援活動にも、積極的に取り組んでいた。
後輩たちにも、「環境のせいではなく、自分で立ち上がること」の大切さを熱く語る男だった。
そんなAだからこそ、人が集まったし、訳あり女子が心を開く唯一の場所になっていた。
普通の男ならそれだけモテたら、何人かと勢いで恋愛関係に入ってしまいそうなものだが、律儀にもそんなことはしなかった。
恐らく、Aは両親の事もあって、衝動的な恋愛には一定のリスクがあることを理解していたからだ。
そして、Aには、堅実に2年半ほど付き合っている、年下の彼女Rがいた。
Rもまた、お日さまのように明るく、その笑顔で周りを照らすような、素敵な子だった。
いつも愛くるしい妹のように慕ってくれる、天真爛漫なR。
可愛かった。
応援したかった。
ただ、Rもまた、複雑な家庭問題を抱えていた。
--------------------
Rには障害のある兄弟がいたが、凄腕のお母さんが、キャリアと育児を両立されていた。
AとRの絆が崩れ始めたのは、大学3年の頃。
きっかけは、バイト代を稼ぎつつ、サークルでのボランティア活動に勤しむRを、母親が許さなくなってきたこと。
ボランティアなんかで遊んでないで、しっかりバイトして学費代を払って欲しい。
お母さんはそう言いたかったのだろうけど。
ボランティア活動で人を助ける事に生きがいを感じていたRは、母親とぶつかることになった。
当然、「活動に行きたいけど行けない」、という悩みがRの頭の大部分を占める。
その悩みを受けたAが悩む、という負のスパイラルが発生していた。
ちょうどAは、そのサークルの部長になったところで、立場的にも厳しかったと思う。
これこれ、私の周りがみんな陥っている、「半人前の共感力」。
家庭の状況が安定していないのに、なぜか人助けをしたがる人達。笑
まずは自分を立て直さなきゃダメなんだって。
私の周りにそんな子が多かったのは、「半人前の共感力」が「類友(類は友を呼ぶ)」だからだろう。
みんな、いい子たちばっかりなんだけどね。
--------------------
活動に集中したいAと、家庭とのせめぎ合いで揺れるRの関係はこじれにこじれた。
見かねた私が仲裁に入った頃には、Aの心はすでに疲弊していた。
元々、誰かのために何かをしてあげたい、という思いが強く、助けを求められたらいつでも飛んでいく。
そんなAの予定は常に他人のために使われていた。
恐らく唯一の癒しだった彼女のRまで、悩み相談の対象となってしまうと、Aの逃げ場がなくなってしまう。
重い悩み相談の対象者となってしまったRは、Aにとってはもはや恋愛の対象ではなく、救済対象となってしまっていた。
Rも精神不安定で、辛くなるとすぐにAに電話をかけて、解決のつかない不安をぶつける、という依存状態だった。
Aも部長という立場上、他の皆に相談もしづらかったろう。
そこでAの相談相手になったのが、私なわけです。
最初は、RとAがどうしたら上手くいくか、という話ばかりだったと思う。
それから、サークルの運営や活動の広げ方について、何度も語り合った。
Aはいつも悩むRの姿に疲れてきてしまったから、とっくに心が離れていたのかもしれない。
Aの関心が、徐々にこちらに来ているのを感じた。
ただ、私はRの手前、面倒くさい三角関係になるのは嫌だったし、友人として長く続く道をとった方が、結果的に長い付き合いができると考えていた。
Rの悩み相談も、Aの代わりに受けようと心がけていたつもり。
でも、話を聞けば聞くほど、Aのことが好きなのが伝わってきたから、これはちょっと重かった。
ここに、話は聞いてあげるけど、解決できない私の、「半人前の共感力」がまた顔を覗かせていた。
--------------------
そんな私も、完璧な人間ではない。
やはり、周りから見たら「あの2人いい感じだね」、と思われていた節があったらしい。
ある日、急にRに呼び出されて言われた。
「光さん、Aのことよろしくお願いします。
私、生まれ変わったら光さんの娘になりたいってくらい信頼してます。
Aもきっと、光さんなら大丈夫だと思う」
えっ?
なに、私は君たちの保護者なわけ?笑
私らしい展開でしょ?笑
まさかの現彼女のRから、「Aを譲ります」宣言をされた私でした。笑
いやいやいや、そんな面倒くさい橋、渡るもんか。笑
普通に親友として仲良くやっていった方が、後々長く付き合っていけるでしょ。笑
Rとも仲良くしたいし。
というか、今そんなことしたら、Rの心が壊れちゃうでしょ。
私のその判断は、今も間違っていなかったと思う。
なぜなら、今でも彼らとは仲良しだから。笑
正直に言うと、惹かれる部分は大いにあったよ。
でも。
こんな譲り受けるみたいな状況になる人っているんでしょうかね?
そんなつもりで悩み相談に乗っていたわけじゃないし、下心のある嫌な女にもなりたくなかったから、この時はまさかまさか!で、流させていただきましたよ。
--------------------
でもね、中学生みたいな展開なんですけど、その先ずっと、私たちは強い絆を感じていたと思う。
Aとは何でも話せたし、どんな話でも「どんと来い!」のAの器の大きさに何度も助けてもらった。
「だからさ、俺たち当たり前に生きてることだけで感謝なんだって。
まじで。神様に感謝しとけよ、お前ら」
Aのその感覚は揺らがなかった。
共感力、という意味では、Aの共感力は突き抜けていたし、どんな辛い時も、Aなら絶対に分かってくれる、という安心感が、私の心の大きな柱になっていました。
Aのいない人生は考えられなかったよ。
というわけでなんと、私たちは全く付き合わないまま、約4年の間を両片想いのようなまま、日々を過ごしましたとさ。笑
不思議なんですけど、言葉はいらない、という感じ。
でも、何もない。
臆病だったとか、そういうわけじゃないのです。
ただ、この関係性のままの方が、お互い長く続くということが分かっていたの。
同時に、一番に理解し合えるのはこの人だってこともね。
そういうことって、ありませんか。笑
ちょっと珍しいかな。
それでも、お互いの結婚、となると話は変わってきます。
やっぱり、どちらかが結婚するとなると、それなりにショックは受けますね。
え?好きなのに何で結婚しないの?って?
そんな野暮な質問やめてくださいよ。笑
色々あるのよ、大人の事情が。
Aは、生まれ変わったらもっと早くから勉強して、釣り合う男になる、的なことは言っていたような……、笑
この辺の壮大な恋愛話はまたの機会にしましょうね、聞きたければ。笑
ではでは、今日はここまでよ。
我ながら素直に書けた方だと思うから、この辺でご勘弁くださいね♪笑
--------------------
本日の教訓はこちら🌟
青い青い、青春の物語ですが、少しでも皆さんの人生の参考になれば、と思って書きました。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました🌸
※〔半人前の共感力。〕シリーズはコチラです。
↓↓
※自己紹介とサイトマップをつくりました🌟
全記事一覧も出しているので、参考になさってみてくださいね!↓↓
※Xでも発信しています♪ぜひフォローいただければ嬉しいです☆
Xアカウントはこちらです。↓↓
仲川光🌸(@nakagawa1510)さん / X (twitter.com)
英語学習用Xアカウントはこちらです。!↓↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?