半人前の共感力。【大学受験編】|エッセイ
私の強みの一つは、共感力だと思っている。
自分で言うのもなんだが、一人ひとりの気持ちに寄り添って、その心情を理解しようという思いが強い方だと思う。
ただ、この共感力とは、正しく身につけていなければ、諸刃の剣となる。
すなわち、良い効果もあるが、悪い結果が出ることもあるのだ。
私たちが、本当に苦しい時。
ただ寄り添い、話を聞いてくれる人がいるだけで、心が癒されることもある。
でも、相手の問題は、ただ理解するだけでは、根本的な解決には至らないことも多い。
解決なき共感は、ただの同情となり、時に自分の心を曇らせる「悩み」となる。
悩み相談を「される側」になるには、相手の問題を理解するだけではなく、「どうしていくべきか」の解決案を出せる必要がある。
問題解決能力とは、自分を犠牲にせず、相手も幸せにするために、必須な能力だ。
これができてはじめて、真の「共感力」と言うべきかもしれない。
そこには、依存心や馴れ合いではなく、自立した友情があるべきなのだろう。
今日はそんな私の、半人前の共感力について。
第一弾です。笑
大学受験
大学受験を控えた、高校3年生の頃。
一応、進学校と呼ばれる学校に通っていた私だが、他の皆のような大手の予備校・塾には通わず、個別指導塾に通っていた。
個別の良いところは、本人の進捗状況に応じて、勉強を細かく見てくれるところ。
先生の教え方も丁寧で、通っている子たちも皆良い子が多く、とても居心地のいい空間だった。
塾の生徒にも、色んなタイプの子がいた。
とても勉強熱心な子から、とりあえず親に言われて来ている、という感じの子まで。笑
それぞれが、自分のペースで頑張る姿も、悪くない。
ギラギラのエリート思考ばかりが集う空間は、学校だけで十分。
次第にプレッシャーを強めていく学校の先生方。
受験前なので当たり前なのだけど、私はホッとひと息つくように、塾に通っていた気がする。
とは言え、休みの日は塾の自習室で朝9時〜夜9時くらいまで勉強していた。
自習室にくるメンバーは、いつも勉強熱心。
元々、受験生になる前から仲は良かったけれど、毎日顔を合わせるたびに、より親密に、家族のように仲良くなった。
自習室の友人の中で、特に仲が良かった女の子がいた。
仮に名前をA子としよう。
A子は頑張り屋で上昇志向も強く、大学付きのエスカレーター校にいたにも関わらず、さらなる高みを目指していた。
推薦で付属の大学にいく選択肢を取らずに、大学受験を志す。
そんなA子を尊敬していたし、一生懸命努力する姿は眩しかった。
ただ、一つ問題が起きた。
A子はとても美人で、毎日頑張る姿を、男子が放っておくわけがなかったのだ。
高校三年生の夏。
あっという間に彼女に恋をする男子が現れて、毎日一緒に勉強するようになった。
休憩室でも、ご飯でも一緒。
もちろん帰るのも一緒。
私もA子を応援していたし、よく恋バナも聞いていたので、勉強と両立して、ぜひ頑張って欲しかった。
でもやっぱり、恋は盲目だね。
段々と自習室から足が遠のき、2人で勉強するようになった頃から、成績にも影響が出始めたと思う。
私はA子のことが心配で、自分までも集中力が途切れ始めた。
「あまりA子のことを気にしすぎず、自分の勉強に集中するように」
と先生方に言われたけど、やっぱり気になってしまう。
彼と一緒で、本当に勉強できているのか?
受験まで時間がないけど、大丈夫なのか?
勉強していても、ついつい空席のままの彼女の定位置に目が行ってしまう。
そして、正直に言うと、少し成績が落ちた時もあった。
これこれ、これが半人前の共感力のわけ。
成績の落ちていきそうな友人を心配して、自分の成績まで落ちてどうする。笑
問題解決能力のない共感力は、もはやただの「悩み」でしかない。
今思えば、
「勉強に集中すべき時だと思うよ!
A子には大きな目標があるんだから、本当に好きなら黙って見守るのが男だろう!」
くらい言ってやれば良かった。笑
そして、いったんピシッと言った後は、自分の勉強に集中すれば良かったのだ。
そんなことすら思い付かず、ウジウジ悩み続けた、未熟な私。笑
A子自身も優しいところがあり、彼には自分がいてあげないと!という謎の共感力を発揮していたと思う。笑
似てるから引き寄せ合うのかな。笑
その後、私の方は受験が間近に迫り、否応なしに勉強に集中することになったけれど。
結局、私はなんとか大学受験を終え、A子は浪人することになった。
浪人、と先生から聞いた時はショックだったし、どんな顔して会えばいいんだろう、と困ってしまった。
だが、意外にも再会の時はあっという間にやってきた。
浪人が決まった春、友人達の集まりに少しだけ顔を出したA子とたまたま再会したのだ。
既にA子は、彼氏と別れていた。
自分でもビックリしたのだけど、自然と涙が溢れて、お互い抱き合った。
浪人までいくとは思わなかった、ごめん。
何もできなくて、ごめん。
先に大学生になっちゃって、ごめん。
なんて言おうかと思ったけど、何も言えなかった。
彼女も泣いていたけど、気丈に振る舞い、
頑張るから!
と言って足早に去って行った。
悔しかったろう。
女子1人の浪人生活、きっと孤独だっただろう。
それでも、大学生になってしまった分、何か引け目を感じてしまって、その後の1年はなかなか連絡を取れなかった。
一浪の末、A子は大学に進学した。
当初聞いていた目標大学とは違っていたから、少し消化不良だったかもしれない。
その後は、晴れて大学デビューした彼女と普通に付き合えるようになったし、大変な時にはお互い励まし合える、良い関係だったと思う。
大学卒業後は、美容系の道に進んだA子。
元々気配りができて、仕事もテキパキこなすタイプ。
ぐんぐん頭角を表しているらしい。
そんな噂を聞くのが誇らしく、時々、A子に関連する化粧品を買いに行く度に思い出した。
お互い仕事が忙しく、なかなか会う機会が取れなかったけど、忘れた事は一度もない。
人生の1番大変な時期に、共に苦しみ、戦った相手のことは忘れないものだ。
昨年初め、私が心身のバランスを崩して、離職したと聞いた時も、真っ先に心配してくれた1人がA子だった。
もう4年近く会えていなかったけれど、「これはヤバい!」の嗅覚は相変わらず人一倍優れている。笑
「仕事を辞めたとしても、これまで培った経験を活かさないのは勿体無いよ!」と言ってくれた友人たち。
そんな中で、「noteをやってみたら?」と提案してくれたのは、A子だった。
周り回ったご縁。
あの時、私は何も解決策を出せなかったけれど、A子は解決案を出してくれたね。
今ではすっかりnoteに住み着いた私。
A子には感謝しかない。
そんなA子も今では結婚し、昨年末には母となった。
もはや親戚のおばちゃんのように嬉しい。
半人前の共感力しか持ち合わせていなかった私たちも、一歩ずつ歩みを進めて、大人になった。
正しい問題解決能力を身につけて、持ち前の優しさを良い方向に発揮していきたいものだ。
【A子へ】
出産、本当におめでとう。
20年来の友情に感謝。
これからは、大切なものがもう一つできたね。
母となり、もう一段大きくなったA子に出逢えるのが楽しみです。
完璧じゃなくてもいいよ。
ダメな時があっても構わない。
無理しすぎる時があるから言っておくね。
相変わらず、臨月までバリバリ働くスーパー元気さ。
本当に尊敬しています。
働くママの夢と、大切な子どもとのバランス。
共に考えていこうね。
出逢えたことに感謝。
ありがとう。
【完】
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