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マイクロノベル/箱集

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記事一覧

マイクロノベル集/箱 010

マイクロノベル集/箱 010

076(852)
陸と海、そして空と宇宙。ぼくたちはそれらを切り取って箱にした。箱の中身は時々入れ替わる。手紙。おもちゃ。謎の機械。「ハロー。これは地球を綺麗にする機械だ」スイッチを入れると、機械はただウンウンと唸っている。でも最近くしゃみが出なくなった。

077(893)
キッチンにブラックボックスがあった。昨夜までは白い冷蔵庫だったのだが、今朝起きたら真っ黒になっていたのだ。手で触るのは危険

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マイクロノベル集/箱 009

マイクロノベル集/箱 009

071(698)
ガラスの箱の中にりんごジュースが入っている。証明書付き。密封されているので匂いはわからない。空気ひとつ入っていない。箱を開けると保証が切れるから、冷蔵庫で保存しておこう。

072(713)
深夜、祖父と冷蔵庫が闘っていた。昼間、あんなに恐ろしい祖父が大人しくしている理由は、冷蔵庫の活躍のおかげだったのか。

073(805)
妹が離婚して帰ってきた。夫からひどい仕打ちを受けて、

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マイクロノベル集/箱 008

マイクロノベル集/箱 008

066(646)
箱の中に水たまりがある。水を入れた覚えはないのにな。そういえば箱の隙間から煙が出ていたっけ。だとすると、自分たちで雨乞いして降らせたのか。なかなかやるじゃないか。おや……こちらに向かって煙を引きながら飛ぶ、あの鉛筆なんだろう?

067(665)
ドリルで小さな穴を開け、密封された箱の中を内視鏡カメラで覗いたところ、当時4歳だった娘にプレゼントしたぬいぐるみが16年前の新品同様の

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マイクロノベル集/箱 007

マイクロノベル集/箱 007

061(552)
詰め放題! 箱に詰めただけもらって帰れるなんて太っ腹だね!! で、これはなに? なにを詰めたの? なんかこう、箱の中で呼吸っぽい音がするんだけど。あっ、今度はしゃっくりした!?

062(575)
いいかい、この中に入ったら星の命が尽きるまで眠ってしまうから気をつけるんだよ。渡された箱は一辺が10センチしかなかったので、拾ってきたドングリを詰めた。虫が湧かないから便利。

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マイクロノベル集/箱 006

マイクロノベル集/箱 006

051(440)
箱の中にはなにもない。なにもないのに、いや、なにもないからこそ入れろ入れろと要求してくる。とびきり軽くてスカスカの物を入れてやるよ。スポンジ。水でも知識でも、機械でも隕石でも吸収できるぞ。

052(444)
あさ目覚めると箱になっていた。真実の愛を箱に入れないと人間に戻れないらしい。愛なんて見たことないのに。たすけておかあさん。にゃーん。あ、ミケだ。おはよう。なんだか変な夢を見

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南雲マサキのマイクロノベル/箱編005

041(340)
いやいや、我々だってAI禁止法はよーく理解してますよ。仕事を奪われたくない。これは冗談の計算機なんです。中にかけ算の九九を書いた木札を入れてあるんですよ。ピーコちゃん、3×3は? 9。ほらね、インコが木札で遊んでるだけ。だからAIじゃないんですよ。

042(364)
しっかりと握っていた石が消えていた。まるで箱のように四角い石。落としたんでしょと言われたけど、どうかな。あれから

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南雲マサキのマイクロノベル/箱編004

031(279)
「こちらの箱は禁煙となっております」アナウンスとともに、さっきまで煙に巻かれていた者たちが正気を取り戻した。次いで、煙になって消えていた者たちが帰ってきた。後者は喫煙者だったため、前者によって箱から蹴り出された。めでたしめでたし。

032(282)
昨日まで箱一杯に入っていたネジがなくなっていた。仕方がないのでお隣に貸してもらいに行くと、やはり同じだという。「今どきネジってそん

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南雲マサキのマイクロノベル/箱編003

021(187)
まず、ミケを箱に入れます。つぎにちゅーるを入れます。最後にしゅれでぃんがーさんを入れたら、ふたを閉じます。すると、中でしゅれでぃんがーさんがミケにちゅーるをあげます。あれ? 空のちゅーると新品のちゅーるがある。2本入れたんだっけ?

022(196)
「ここの箱もずいぶん減っちまったなあ」減ったどころか、残っているのはぼくと君だけだよ。「また会うこともあるさ。そんときゃよろしく頼

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南雲マサキのマイクロノベル/箱編002

011(143)
氷を作りたくてAIに頼んだら、冷蔵庫が届いた。マジかよ。冷凍室を開けると大きな氷が入っていた。マジかよ。「ノコギリのお届けでーす」マジかよ。切れちまうぜ。

012(155)
箱が降ってきた。最初は誰も気づかなかった。その箱は雨水が変形してできていたからだ。箱は地面を打ち、コロコロと転がり、ててててっと走り、壁に当たって目を回した。「ピンのゾロ目だ!!」これがTRPG用語ファンブ

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南雲マサキのマイクロノベル/箱編001

001(020)
掌に乗るほど小さな箱を開けると、中で妹が焼肉をしていた。その姿、もはや人ではない。しかも知らない男と二人で肉を焼いて食べている。無性に腹が立ったけれど、冷蔵庫から牛肉を取り出して入れ、蓋を閉じた。結婚おめでとう。

002(058)
箱の中から美しい歌声が聴こえる。録音したらバズったので今も大切に持っているけれど、次第に歌の内容が変化してバズらなくなった。僕は気にしない。世界も僕

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