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発達障害の視点で見る『本当の自分』と『偽物の自分』【分人主義】と未来の人間


☆ たった一つしかない『本当の自分』を大切にしなくてはいけない。

☆ 『他人との関係』によって、作られた『偽物の自分』を捨て去るべき。

人は、そのようなことをカンタンに口にしますが、
同時にそんなことはできないことをよく知っていますよね。

☆ あの人は、自分本位で他の人の意見を聞かない。

☆ いつも周りの空気を読まずに、自分のペースで動こうとする。

そのように他者を批判しながら、
同時に『本当の自分』が何よりも大事。と、平気でいうのです。

この矛盾を一気に解決するだけでなく、これから人間が向かって行こうとする未来を正しく、美しく見せてくれる本に出会いました。

平野啓一郎氏の『私とは何か 「個人」から「分人」へ』です。

これは、昨年1年間で、私が読んだ沢山の本の中でも、
ダントツの一位で全ての人にオススメの本です!

2012年に出た物なので、情報が古くてごめんなさい。
でも、20刷というところを見ても、
この考えは、私だけでなく、多くの人の胸に突き刺さり、
人生を変えるような一冊になったのではないかと思います。

1.『分人主義』とは何か?(本書より)


『個人』は英語 individual の日本語訳で明治時代になってから広まったそうです。
つまり、本来『個人』には『もうこれ以上分けられない』という意味があり、そこから『本当の自分』は『ありのままの自分』であり、
そのようにあることが理想とされました。

でも、実際には『家族とくつろぐときの私』『仕事の時の私』
『幼なじみと話すときの私』は、全く違うものです。

だからといって、どれかが『本物の自分』でどれかが『ニセモノの自分』なのでしょうか?

他者と共に生きるということは、無理強いされた『ニセモノの自分」を生きる、ということではない。
それはあまりにも寂しい考え方だ。

全ての間違いの元は、唯一無二の「本当の自分」という神話である。

そこで、こう考えてみよう。
たった一つの「本当の自分」など存在しない。
裏返して言うならば、対人関係事に見せる複数の顔が、
すべて「本当の自分」である。

このようにして、相手ごとに分けられた「本当の自分」をすべて「分人」と呼ぶのが、この本のスタート地点になります。

私たちは、自分の個性が尊重されたいのと同じように、
他者の個性も尊重しなければならない。
相手が誰であろうと、「これがありのままの私、本当の私だから!」と
ゴリ押ししようとすれば、ウンザリされることは目に見えている。
私たちは、極自然に、相手の個性との間に調和を見いだそうとし、
コミュニケーション可能な人格をその都度生じさせ、
その人格を現に生きている。
それは厳然たる事実だ。
なぜなら、コミュニケーションが成立すると単純にうれしいからである。

その複数の人格のそれぞれで、本音を語り合い、相手の言動に心動かされ、考え込んだり、人生を変える決断を下したりしている。

つまり、それら複数の人格は、すべて「本当の自分」である。

そのように考えると、人間関係の悩みにおいて、
「半分は自分のせい」であると言えます。

そして、良いことがあったときも、
「半分は相手のお陰」なのです。

『個人』だと思っていた
私たちの人格そのものが半分は他者のお陰であると気づきます。

そして、それだけではない。

他者もまた、「分人」の集合体なのですから、
あなたと接する相手の分人は、あなたの存在によって生じたものなのです。

他者を愛するとはどういうことなのか?

死とは何か?

こういったことも、「分人」という視点から考えたとき、
何一つ矛盾も葛藤もないスッキリとした
美しいビジョンにまとめ上げられていきます。

2.私が「分人」的なテーマを考え続けてきた理由

『私とは何か』を読み終わった瞬間に、
長年にわたって疑問を持ち、悩み続けて、
何度も言語化しようとして挫折してきたことが急に明確になりました。

それは自他の境界線をしっかり作って、
その先にある自我を保ちながら真に繋がっていける世界を目指す
ための、理論です。

私は、長年支援教育に携わりながら、自閉症スペクトラムと呼ばれる子どもや、発達障害と呼ばれる子ども達の【自我】の在り方が少し幼く、
そこが発達すると、他の問題も改善していく
ことを見てきました。

自我が幼い子は、自他の区別があまり明確ではありません。
他者の立場に立って考える事もまだ難しいのです。

ある意味では【本当の自分100%】です。

他者に迎合することなく生きる姿を美しいと思う人は多く、
『ありのままでいい』
と、言われることがとてもよくあります。

でも、実際に日々の人間関係の問題を仲裁したり、
進路指導で、就職先を探したり、実習を受けたりしてもらう中で、
【自分の言動が相手によって変わることは、良いことなんだよ】
と、いうことを伝えることが難しいのです。

多くの人が、子どもに、
【何があっても嘘をついてはいけない】
【自分の信じることを行わなくてはいけない】
【裏表があってはいけない】

と、教え続けます。

そのままの【本当の自分】を守りたい、
【ニセモノの自分】を存在させたくない。


そう考えて、
【分人】を作らないことが良いことだ。
と、思う子ども達がいます。

その一方で、【自分】を形成する前から、
周りの気持ちを汲み取って、回りの望むような言動だけをする。

と、いうことが、体に染みついて、
正しい【分人】の形成ができずに、【自分】があやふやになっていくことに疲れ果てて苦しんでいる子どももいます。

この対局に見える問題は、多くの人が、
【分人】という真実がある。
と、いうことから目をそらして、
現実とは違うことを伝え続けることから来ているのかも知れません。

3.【人間の進化】の流れの中で

この【分人主義】という考えを知った時、
とても美しい【未来の人間】と、いう姿が見えたような気がしました。

長い歴史の中で、人間は常に同じだった訳ではありません。

絶えず進化を続けている。
それが進化とは認められない人もいると思いますが、
少なくとも変化しているのです。

☆ 古代、人々は直接、霊的な存在と繋がり、仲間と繋がっていました。
☆ 支配者が現れ、神官が霊的存在の声を伝えるようになると、全体が繋がったまでありながら分断が起こります。
☆ その後、宗教やコミュニティーによって、まとめ上げられていた人々が、【個人】という考えを持ち始めます。
☆ 個人の利益を追求する利己主義が宗教やコミュニティーを凌駕します。

このように、【全体】から【個】への流れが極まってきたのが現代という時代なのかも知れません。

そして、今、【利己主義】の限界に気づいた人たちが、
【自我】を保ったままで繋がろうとしています。
その答えが【分人主義】にあるように思えました。

とにかく、衝撃的な1冊!素晴らしい本だと思います。

【分人】が出てくる小説『ドーン』もオススメです。

そういえば『マチネの終わりに』にも、それを思わせる台詞がありますね。

【最後に一言】
『本当の自分』と『ニセモノの自分』そんなことを考えて、
悩んだ経験は誰にでもあるはずです。
それをスッパリ捨て去って『分人主義』について考えてみるだけでも、
きっと人生楽になるはずです。
そして、それは子ども達にとっても、
より良い人間関係を育てていくための助けとなるでしょう。


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