【料理エッセイ】いろいろあって沖縄そばを自作してみた
友だちが沖縄旅行のお土産に沖縄そばのインスタント麺をくれた。おお! ってなった。喫茶店でおしゃべりをしている間も、一緒に映画を見ている間も、ロイヤルホストで夕飯を食べている間も、わたしの頭の中は「明日の昼は沖縄そばを食べるぞ」でいっぱいだった。
だから、
「じゃあね。また遊ぼうね」
と、別れるや否や、どんな具を揃えればいいのか、すぐにネットで調べた。とりあえず、煮豚にかまぼこに万能ネギがあればいいらしい。ルンルン気分で近所のスーパーに寄って、諸々を購入。まるで遠足の前の日みたいに楽しみで、全然、眠れなかった。
結果、夜中の三時。ぐーっとお腹が鳴ってしまった。よくないなぁと思いつつ、わたしの中の悪魔が、
「いま食べちゃえよー」
と、ささやいてきた。
対して、わたしの中の天使も、
「いま食べちゃえー」
と、ささやいてきた。
三人中三人の全会一致。わたしは飛び起き、キッチンへと急いだ。なにせインスタントだ。鍋でお湯を用意している間に市販のトンポーローをレンジでチンし、かまぼこをスライス。万能ネギをリズミカルに切っていけば準備は完了。折よく、沸騰しているお湯に麺をドボンッと沈め、三分間、菜箸でいじくりながら出来上がりを待つ。その結果がこれである。
ちょうど冷蔵庫に紅生姜があったので添えてみた。完璧なビジュアル。ずずーっとすすれば、鼻を抜けるカツオの香りが最高だった。
夜分遅くに申し訳ないけど、友だちに感謝のLINEを送った。無論、既読はつかない。午前四時になんなんとしているんだもん。でも、すぐに「ありがとう」と伝えたかった。「美味しかった」と伝えたかった。
おかげさまで満腹となったわたしはまどろみ始めて、ベッドに戻るなり早々、眠りについた。いろいろあったが万事OK。素敵な一日が綺麗に終わるはずだった。
ただ、本当は違和感に気がついていた。相応しくない時間に、相応しくないカロリーを摂取していたので、罪悪感から知らないフリをしていただけ。自分で自分を騙していた。
しかし、昼過ぎ、遅めに起きて確信した。これから逃れることは不可能である。と言うのも、沖縄そばのインスタント麺はカップうどんと同じ味! ぶっちゃけ、沖縄そばって感じじゃなくて、本当は少しも満足できていないのだ!
この不都合な真実を認めると同時に、わたしの中の沖縄そば欲がむくむくと姿を現し始めた。まさか、こんなモンスターが身体の中に巣食っていたとは。我ながら恐ろしかった。もはや、沖縄そばらしい沖縄そばを食べないことにはどうしようもなかった。
そこで沖縄そばを自作することにした。沖縄料理屋でサクッと済ませてもよかったのだが、一応、かまぼこも万能ネギも紅生姜も残っているし、それらを無駄にするのはあまりに忍びなかった。
とりあえず、ネットでレシピを調べてみた。五種類見比べて、沖縄そばは想像以上に簡単な料理であるとわかってきた。基本的に、豚肉を茹でた汁とかつお出汁を合わせて、醤油や塩で味を整えるだけ。勝利の方程式が完全に解けた。
そして、豚肩肉(本当はスペアリブの方がいいらしいけど高かった)を買ってきて、圧力鍋で一気に茹で上げ、あれやこれやを済ませ、トッピングに卵焼きを載せている画像を見かけ、ときめいてしまった結果がこれである。
さすがに沖縄そば用の麺は東京都中野区のスーパーに売っていなかったので、一番太いやつで代用したが、ひと口すすれば、めっちゃくっちゃ沖縄そばで感動した。少なくともうどんではなかった。
いや、別に、インスタントの沖縄そばが悪いわけではない。普通に美味しく、お土産だと考えればありがたい以外のなにものでもなかった。畢竟、わたしの期待し過ぎに原因があった。
さて、そんな風に紆余曲折を経ているうちに、日曜日も暗くなりかけていた。友だちからも返事が来てきた。
「喜んでもらえてよかった!」
そんなメッセージに加え、笑っているシーサーのスタンプが届いていた。
改めて、わたしは、
「本当にありがとう!」
と、感謝した。いろいろあって沖縄そばを自作してみたけど、すごく上手にできたよ。本当にありがとう! 書きはしなかったけれど、要するに、そういうことが伝えたかった。
まもなく、エイサーを踊っているシーサーのスタンプが送られてきた。
ああ。わたしも沖縄行きたい。
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