クリエイティブマネジメントのススメ10コーポレートブランドにもマネジメント編
■コーポレートアイデンティティがブ~ムに?
コーポレートブランド・・・日本のみならず世界中の多くの企業で
ロゴタイプが制定されていますよね。そのコーポレートブランドですが
どの様に活用し管理しているのでしょうか?とても気になりますね。
特にコーポレートブランドを“活用する”という視点なのですが、
コーポレートブランドを制定することで何をしようとしているのか?
ハッキリとクリアになっている企業はどれぐらいあるのでしょうか?
1970年代から80年代にCI(コーポレートアイデンティティ)
ブームが起き、大手の企業が社名をカタカナやアルファベットへの変更や
ロゴマークを改訂することが盛んに行われました。
*コーポレート・アイデンティティは、
企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、
またわかりやすいメッセージで発信し社会と共有することで存在価値を
高めていく企業戦略の一つ。(ウィキペディア)
企業戦略と定義されていますが、そうなのでしょうか?
日本では、昔から屋号という言い方があり、さらに商標でもあるのですが
“戦略”というよりは信用・信頼の証・旗印的なニュアンスが強く、現在も
大切にしてはいるものの積極的にマネジメントしているとは考えにくい
状態といえるのではないでしょうか?
*屋号、家号とは、一門・一家の特徴を基に家に付けられる称号のこと
である。日本の場合、家紋のように屋号を記号化・紋章化した屋号紋を
指すこともある。(ウィキペディア抜粋)
*商標法第2条に規定する商標、すなわち、「人の知覚によって認識する
ことができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又は
これらの結合、音その他政令で定めるもの」(特許庁のサイトから)
■コーポレートブランド制定の意味とは?
根本的に、何のために制定したのでしょうか?
自分が勤務した会社は、会社として正式にコーポレートブランドを
制定したのは22年前の1999年で、先ほどのCIブームとは無縁の企業でした。
それまでは、コミュニケーションシンボルという位置づけで
広告セクション主導でコーポレートブランド的イメージの構築を目的とし
広告やパッケージデザインに展開し、なんとかつないで来ていました。
ある事件を切っ掛けに、企業ブランドの毀損を経験することになり、
コーポレートブランドの重要性とその管理、そしてそれが何をもたらすのか
を知ることになりました。
コーポレートブランド制定のその後は、対に表記したブランドスローガンの
(当時は、あしたのもと、現在は、Eat Well , Live Well)
経営理念に沿った改定をしながら、全商品に展開し使い込んできました。
そのトータルマネジメントは、パッケージデザイン開発、広告の企画・制作
を管理することから私が所属したグループが行っていました。
2017年の10月に、従来のコーポレートブランドからグローバル企業として
グループも包含した全く新しいグローバルコーポレートブランドが
制定されました。
そのロゴデザインの開発者として2015年から悪戦苦闘するわけですが、
最終的に良かったことは、経営トップのリーダーシップがあり開発は
全面的に任せてもらえたことと経営の判断が明確だったことです。
特に経営として、グローバルコーポレートブランドを制定することに関して
対外的に発表した長期計画に“経営主導のコーポレートブランドの
マネジメントを通じて、ブランド価値を高めていく“と
記載されたことでした。企業のさまざまな価値をコーポレートブランドに
集約し事業価値を最大化するというもので、ブランド価値目標も定め、
並々ならぬ経営の姿勢を感じることが出来ました。
まさに企業のさまざまな活動に込めた、目指す(未来への)価値と、
お客様サイドに、商品の機能価値や広告などに触れることで蓄積される
イメージの価値を新しいグローバルコーポレートブランドへ一致させていく
という表明と制定の意味を確実なものにしたのではないかと思います。
驚くコトは、この2021年は制定してまだ4年しか経過していないのですが
もっと以前からこのコーポレートブランドロゴタイプだったのではないか?
と思われるぐらいに社員含め“見慣れ”てしまっています。
制定後に他企業のデザイン担当役員から、「新しいロゴタイプ、
企業イメージに合っていますね」と言われたこともありますが、社員・
お客様にとっても馴染める“らしい”デザインが開発出来たのだと思います。
また“らしさ”があったので社員にとっても、使い込んで“魂”を入れる
ということにも抵抗感がなかったようにも思えます。
■素敵な事例・・・
かなり以前に、資生堂の方から、資生堂の花椿マークについて
このような話を聞いたことがあります。
アルファベットのSHISEIDOというコーポレートブランドロゴも良く
見ますが、創業近くから使われている皆さんご存じの花椿マーク、
なんと基本となるマークが一つも無いのだそうです。
勿論、パッケージや広告、店頭で使われるためには規定はあるようですが
過去資生堂宣伝部に入社した企業内クリエーター(資生堂さんは
インハウス・クリエーターと呼びます)は、1年ほど花椿マークを
手書きで書くことをさせるそうです。(訓練?じゃなく仕事のようです)
何度となく宣伝部のトップに提出を繰り返し、認めていただくことで
手書きが終了し、その各人の花椿マークが存在するのだそうです。
長い歴史を持つ花椿マークを、書くことで企業の志・理念を理解し
企業の顔である商品・広告を担当する者としての本分を学ぶという
素晴らしいプロセスが存在することに感動したことを思い出しました。
■コーポレートブランドが秘めた2つのマネジメントの側面
コーポレートブランドは、制定してほっておいて育つわけではありません。
事業の基本は、お客様との接点である商品が最優先ですよね!?
コーポレートブランドは、その商品の発売元としての単なる記号で
しかありません。商品価値が評価され信頼が高まることで発売元の信用も
徐々に上がっていきます。これは商品ブランドが発売元ブランドに対し
貢献してあげていることになります。商品のブランド同様に発売元の
ブランド認知が高まれば、誰にも知られていない新商品を発売する時に
発売元ブランドが今度は支援することが出来るようになります。
まさに支援と貢献の関係が成り立っていきます。
このことは、コーポレートブランドがそのものだけで成り立っているのでは
なく、多くの商品ブランドと密接な関係を保ちながら存在しているという
ことを表しています。
どちらかだけをマネジメントしていれば良いというものではなく、
トータルな視点で、バランスを持ってマネジメントしなければいけないモノ
であると言うのが分かっていただけたのではないかと思います。
さらに、コーポレートブランドを丁寧に扱い、使い込んで行くことで、
お客様の心の中に商品とともに記憶されるコーポレートロゴデザインは、
強い絆のブランディングの鍵と呼べるのかもしれません。
欧米のファッション系の企業などは、まさにこのコーポレートブランドを
自由自在に操って活用していると思います。
しかし、時代と共にそのロゴデザインやマークも少しずつ変化していっても
構わないのです。デザインして制定したら、永遠に改訂しないのでは無く
緩やかな時間の中で改良が行われていることを多くの企業の歴史から
見る事ができます。
老舗企業の多い日本の企業には創業時の業務領域と全く異なる領域に変化
している企業もありますよね。自ずとコーポレートブランドロゴデザインも
マネジメントして時代時代の息吹を感じるデザインであり続けることが
大切であると言うコトを示していると思います。
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