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菓子工場まで5円握って歩いた夏の日

 「僕の昭和スケッチ」120枚目

<「菓子工場」画 ©2022 もりおゆう 水彩 サイズF5>

子供の頃に、ある噂が町内で広まりました。

町外れのどこかに小さな菓子工場があり、そこへ行くと割れて売り物にならなくなったせんべい等を大きな袋に入れて5円で売ってくれる、、、という噂でした。

親や近所の大人に聞いてみると、どうやらそれは本当のことらしく、、、
僕たちはある日3人でそこに向かったのでした。
夏の暑い昼下がりで、もう汗だくで30分ほど歩くと(まだ低学年で自転車を持っていなかったのです)、果たして低い屋並みの路地裏にその菓子工場があったのです。

私達は、恐る恐る入り口らしいガラス戸を開けて中へ一歩入り、
「クズせんべい、5円で売ってくれるってホントか?」
というような事を言うと、働いていたオジサンの一人が不機嫌そうに結構大きなビニール袋にどっさり割れたせんべいを入れて渡してくれたのです。

「お前ら、この辺の子やないな。どっから来たんや?」
「柳ヶ瀬の方、、、」
「そんな遠くから来たんか。けど、まぁ(もう)来たらあかんぞ、うちも忙しいでな。坊主らの相手はようやらん」

そんなやり取りだったように思います。

僕たちは二度とそこへ行く事はなかったのですが、これはその時の記憶を絵にしたもの。

人間というのは、奇妙なことを覚えているものです。
皆さんには、そんな思い出ありますか?

<©2022もりおゆう この絵と文は著作権によって守られています>
(©2022 Yu Morio This picture and text are protected by copyright.)



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