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あなたは花のように咲きほこる人。

庭先の紫陽花が、例年より早すぎる猛暑の日差しを浴びる事なく、我が家の日陰の中からその日差しを仰ぐ様に生き生きと花弁を広げて咲いていた。"あの人が喜ぶかもしれないな。"と思い、ポケットからスマホを取り出し何枚か写真に収める。

川端康成が「掌の小説・化粧の天使達・花」という作品の中にある一節で
"別れる男に花の名を一つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。"
というのがある。本の題名以上にこの一説の方が有名かもしれない。つまりは、"別れてからも男は毎年、その花が咲く度にあなたの事を思い出すだろう。"という意味だ。

あなたに紫陽花の写真を送れば、これを含めておそらく三度目となる。あなたは紫陽花を見かける度に、私の事を思い出してくれるだろうか。結局のところはきっと、私の方ばかりがあなたを思い出してしまうのだろう。写真をあなた宛のメッセージに添付したが、スマホに表示された青色の紙飛行機のアイコンをタップをするのを思い留まった。私の書く文章が好きだと言ってくれるあなたに、この文章を見せてから送るかを決めようと思ったからだ。

梅雨の時期が来る度に、あなたの隣で紫陽花の写真を贈った話をさせて欲しいと伝えよう。それが叶わなければ、そんな気持ちを頂けてありがとうと伝えよう。

2022.7.2

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