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第22話 おわりのはじまり

2021年12月。
封印していたテニスサークルへ久しぶりに顔を出す。
そこで一人の出会う。

彼女の名前はR。僕の3歳下。
某カップル系YouTuberに似た可愛らしい顔、
ややギャルな見た目に反した礼儀正しさ、
そして僕がふざけて笑い合うことのできるラフな空気感。

他人に興味のない僕が珍しく興味を持った。


「次は失敗しない。」

すっかり夏休みボケした僕は、休職しているという身の程を忘れ
再び恋愛という泥沼に足を突っ込んだ。

この時彼女には精神疾患の事も、休職している事も告げていない。

"失敗"するわけにいかないからだ。



2022年2月。Rと付き合うことになった。
と同時に、今まで影を潜めていた不安症状が顔を出し始める。


電車に乗って発作が起きたらどうしよう。
高速道路で発作が起きたらどうしよう。
外食中に発作が起きたらどうしよう。

世の中の人間は皆働いているのに
僕はこうして休んでていいんだっけ。
このまま社会復帰できなくなったらどうしよう。

休職していることや精神病であることが発覚して、振られたらどうしよう。


不安の波はどんどんと押し寄せる。

やめてくれ。もう失敗できないんだから。






付き合う前、あんなに嬉しかったLINEが来ても返すのが億劫に感じる。
常に脳がシャットダウンされている感覚。体は起きているのに、頭は熟睡している。
何もやる気が起きない。そして謎の焦燥感に襲われ続ける。



家の外に出るのが怖い。




気づけば、死ぬことばかり考えていた。


2022年4月。
鬱病という診断を下される。


流石に隠しきれなくなり、彼女に全て話すことに。

「私にできることがあったら頼って欲しいし、共有して欲しい。一緒にいてくれるだけで幸せだから、負担だなんて思わないで。」

当然別れることになるか、或いは「病気を早く治すって約束してくれるなら」などと言われるのではないかと腹を括っていた僕は、状況を理解するのに時間がかかった。


僕が人に頼れない性格を見抜いていた彼女は続ける。

「私の前で絶対に我慢はしないって約束して。」


彼女はなんとか、僕の拠り所であろうとしてくれた。
それでも僕は頼ったり、弱音を吐くことができなかった。

「年上なんだから、しっかりしなくちゃ。」






2022年6月。

この日、僕が放った何気ない一言で、人生のメッキが容赦なく削ぎ落とされる事となる。









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