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香りのお話(メトキシピラジン)

今回は少しライトタッチな書き方になっているので読みやすいと思います。
メトキシピラジンについてのお話です。


この香り成分はワインの香り成分の中でも有名なほうだと思う。

この香りはカベルネ系統のブドウ(カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルローなど)によく現れる香りで品種香ともとれるが、フランスやヨーロッパ圏の国では熟していないブドウから発せられる香りだとして、あまり好まれないことが多い。

この香り成分は「ピーマン」と表現されるものだ。
そして日本ワインにはこの香りがよく表れている。

さらっとこの成分について調べると色んな記事が出てくる。
その中でも自分がメモとして一度書き起こしておこうと思った情報をまとめることにする。


まずそもそもピラジンは2種類ある。
「2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン(IPMP)」「2-メトキシ-3-イソブチルピラジン(IBMP)」だ。(以下メトキシピラジンをMPとする。)
前者はアスパラガスの香りなのでソーヴィニヨン・ブランによく含まれ、後者は先に述べたピーマンの香りを持ち、先述の赤ワイン品種に含まれている。
またあまり触れられていないが、未熟な果実であればセミヨンやシャルドネにも含まれ、セミヨンに至っては成熟果実にも含まれていると言われている。

基本的にこれらの成分はブドウが成熟するにつれて濃度が減少していく。


また別の成分で青臭い香りを出すものがある。
これがC6アルデヒドといわれるもので、ヘクサナール(代謝されるとヘクサノール)といわれる成分とその関連した成分だ。

これは植物自体が持っている成分で、強めに破砕をしたり、プレスをしたりすることで果汁の中に出てくる。
しかしこれはMPよりも閾値が高く、また醸造中に量も減るためあまり香りに現れない。しかし還元条件下(CO2によって抗酸化されている場合)ではワインの中に残ることがある。
それでも基本的にはそこまで重要視しなくてもいい成分だ。


ということで話をピラジンに戻そう。

先に成熟するに伴って量が減少すると述べたが、それは熱や紫外線がブドウの果実中のMPを分解すると言われているからだ。

色づき期まではMPは生成能のほうが分解能より高く、その後それが逆転しMPが分解され減少するという流れになっている。

それは収穫期前(カベルネなら9月)の日照時間が長いと量が減少したり、除葉によって減少したりといったことによっても示されている。

またMPの産量は6月ごろからの成熟期の降雨量によっても増加する。

また葉から房へと移動するという説と房自身が作り出すという説があるようだが、葉が作るにしても房が作るにしても除葉は減少させる効果が見込める手法だ。
しかし除葉は結実から色づき迄にしなければ逆に量が増加してしまうという研究結果もある。

また前の記事の収穫時期をずらす栽培方法によってもメルローのMPの量は減少させられるのではないかと思う。6月の梅雨の時期と9月の秋雨の間をうまく避けた成熟期になればMP産量は減るだろう。


そのほかにも熱処理(Thermo Vinification)によるMPの低減も手法として用いられている。
熱処理は果実にも有効だが、除梗して取り除いた梗に対して行い、MPを取り除いた梗を用いて醸しを行うという方法もある。
梗ごとタンクで醸しを行うのは最近でもブルゴーニュのピノ・ノワールなどで行われていることなのでもしかするとこの方法が取り入れられているのかもしれない。

一方でMPを有している果皮との接触が長い場合や、発酵温度が高い場合には容易に抽出されてしまうので(多糖と結合していない)、栽培管理が第一のMP量管理の方法であることも否めないので、基本的にはMPは栽培から管理するということは忘れてはならない。

というわけで今回のMPについての記事をまとめると

・MPは2種類ある。
・栽培期の日照時間、降雨量、湿度に関連して生合成される。
・除葉、栽培管理の最適化、熱処理によってMPの量は減少させることができる。

以上MPについてでした。
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