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弱さを知るおじさん
2024年10月26日 13:23
桐野夏生さんの「東京島」を読んだ。女性の強さ、人間に備わった生きることへの欲望について、物語を通じて思い知らされた。物語の舞台は無人島。そこからどうにか脱出しようとする過程の中で、登場人物たちの心理がリアルに描かれていく。例えば私が無人島に放り出されたとして、自分が助かるためにどうでも良い他人を蹴落としたりもするだろう。食べ物がなくなったら、しょうもない大嫌いなあいつの肉を喰らっ
2024年10月25日 11:53
小林泰三さんの「人獣細工」を読んだ。決して綺麗な話じゃない。むしろ、目を背けたくなるようなダーティーな世界。そんな物語なのに、読後の爽快感はなんだろう。きっと、ダーティーだけど、綺麗なのだ。物語として。ホラーに分類されるものと思われるが、あまりにも驚いて悲鳴をあげた後に、残るのは「やられた!」という一種の清々しさだったりする。そうして癖になる。脳が侵食される。ある意味で、これ
2024年10月23日 13:36
村田沙耶香さんの「殺人出産」を読んだ。普通とは何だろう?そう考えさせられる。こんな設定を思いつく作者は、良い意味で「異常」だなと思う。この本がすごく人気らしい。異常な作者が書いた、異常な物語が。だったら、楽しく読んでる僕らの側だって、実は異常なのだろう。隠しているだけで。皆、普通を演じながら日々生きているだけの、異常者なのかもしれない。普通なんて、この世界にはないのかも
2024年10月19日 19:37
「なぜヒトは心を病むようになったのか?」を読んだ。進化心理学、面白い。一見無意味に思える心の反応が、実は生存を有利にするためのものだったりする。きっと私たちはどこまで行っても人間であり動物だ。飯を食い、生きる。その確率を上げるために、本能的な部分で見えない力が私を支配してくれている。もちろん、不都合もある。だけど、これは私を守ろうとしている反応なんだと、理解できれば心は軽く
2024年10月19日 16:38
桐野夏生さんの「緑の毒」を読んだ。犯人がヤバい。まともではない。だけど、その犯人もまた、人である。私も同じく、人である。人ってやばい。人って怖い。例えば大きなストレスがあったとして。人生なんてどうにでもなってしまえと思えてしまう出来事が起こってしまったとして。僕が犯人のようにヤバい行動を取らないと、100%言い切ることができるのだろうか?僕はそこまで、僕を、そして人
2024年10月19日 16:30
星野源さんの「いのちの車窓から2」を読んだ。前作のいのちの車窓からを読んでから、長い時間が経った。人は変わる。僕の考え方も、見えている景色も、あの時は大きく変わっている。これからの人生をどう生きようか。敷かれたレールをただ進んでいくだけの人生。人生なんて決まっている?運命ってものがあって、僕たちがどう行動したところで、起こる事象は何も変わらない。そう諦めて生きてしまって
2024年10月13日 07:17
竹中直人さんのエッセイ「なんだか今日もダメみたい」を読んだ。タイトルがまず素晴らしい。竹中さんのお人柄を表している。なんかダメみたい。それでも前を向き、とりあえず生きてみる。挑戦してみる。本書は竹中さんの自伝的なエッセイだ。様々な出来事を経て、今日まで生きてきたことがわかる。本当にもうダメだと思うことも何度だってあるだろう。今日もダメみたい。そんな感じでいい。明日もダメ
2024年10月9日 22:47
ブレイディみかこさんの「転がる珠玉のように」を読んだ。人生は色々あるよな、と感じた。色々あって、全てはなるようになっていく。今こうして、生きていることが何よりの証明だったりする。転がって生きていこう。無理に自分の足で突き進む必要なんてない。自然の流れに身を任せて、転がって、そこから見える景色を楽しめる分だけ楽しんで。そうやって、人生を楽しんでいけたらいいなと、思わせてく
2024年10月4日 23:40
小川洋子さんの「薬指の標本」を読んだ。恋愛の辛さ、苦しさ、色んな感情が詰め込まれた物語だった。決して明るい物語ではないのだけど、静謐でダークな世界が何だか癖になる。読後はおしゃれな気分と人生への虚無感が入り混じったような、何だかうまく言葉にできない感情になれた。筆者の世界観が好きだなと感じました。
2024年10月2日 22:51
「もしも徳川家康が総理大臣になったら」を読んだ。政治を批判する私たち。だけどその声は届くはずもない。この小説はどうだろう。歴史上の偉人が総理大臣や政権を担うという斬新な設定で、そこと比較して現在の政治の足りない部分を的確に指摘していく。ただ不平不満を述べているだけの私たちとは違う。小説の力を感じた。ただの愚痴も、文学に乗せてしまえばそこに宿る重みが違う。理想の社会。思い通り
2024年10月2日 22:42
小川糸さんの「つるかめ助産院」を読んだ。人を救うのは、人との繋がりでしかない。そう思い知らされる。赤子と母の臍の緒が繋がるように、私たちは誰かと関係を繋いでいく。きっといつまでも、1人で生きていける時なんてやってこない。臍の緒を切って、人間関係という栄養が遮断された中では、きっと苦しくて息ができない。それでいい。私は弱い。1人で生きてなんていられない。その自覚が、開き直りが
2024年9月23日 07:40
MEGUMIさんの「心に効く美容」を読んだ。強い女性というイメージを著者に対して持っていたが、実は繊細で気遣いの人で、弱さを抱えているからこそ並大抵じゃない努力をされているんだと知り、とても共感と尊敬の気持ちを抱いた。美容のように自分をより良くするための行動は、普段頑張っている自分への何よりの愛情表現だと思う。私も日々のトレーニングや食事管理を意識して、自分自身を良い状態にしてあげたい。
2024年9月21日 08:36
高瀬隼子さんの「め生える」を読んだ。皆がハゲてしまうという斬新な世界設定のフィクションだけれども、「生きやすさ」とか「マイノリティ」とかについて深く考えさせてくれた。僕はハゲていないのだけれども髪があることが普通とされているこの世界では、ハゲている人はやっぱり辛い。スキンヘッドにしたり、ハゲをネタにしてみたりして、どうにか折り合いをつけて生きている。世界が反転したらどうだろう。ハゲ
2024年9月16日 17:54
宮内悠介さんの「盤上の夜」を読んだ。将棋や囲碁などのボードゲームを題材にした短編集。それぞれのゲームを通して、人間の内面であったり人生というものについて深く描かれていてとても面白い。本書はSF大賞も取られているとのこと。え、SF?これってSFなの?と感じたが、SFという言葉を調べてみると「空想的な小説」という意味があるらしい。リアルな世界をもとに、人間の心という空想的な世界を描いた