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むるめ辞典

■進路

[読]しんろ

進む路

[例文]
理学療法士になりたいと両親に告げて浪人生活の許しを得た。

その間、キャバクラでアルバイトをした。

成り行きでそうなっただけだが、ここで私が学んだのは、一時の決意がいかに脆く崩れやすい光であるか、ということだった。

その一年の間、母は人生の標識を指差しながら仕切りに勉強しろと私に言ったが、試験対策という名前の勉強に私が励んだのは、最初の4ヶ月程度だった。

教科書の知識は国道の渋滞みたいにつまらなかったし、結局世の中は、詰め込まれた知識に頼るよりも身軽にスイスイと前に進む人が成功するようにできているんだと、キャバクラで働きながら知ることになった。

母の方でもそんなことは百も承知だった。でも交通のルールを守ることで得る安全こそが楽で、安心して笑って暮らせる路であると私に説き続けた。

生活の心配しないことが一番。例え渋滞したって、雲を見ながら歌でも歌ってればいいじゃないか。結局、大事なのは笑っていられる時間の持ち方なんだから、と。

父が大事にしていた料亭を畳んだことと、母の心は無関係ではなかった。

いつも私の選ぶものを尊重してくれた母は私が方向転換してアパレルの専門学校にいくことを許してくれた。

私は血に宿る人格を信じる。私はきっと会社員にはなれない。父も祖父もそうだったように。

オブラディ・オブラダ。

人生は進む。


サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。