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むるめ辞典
■夢中
[読]むちゅう
夢の中へ
[例文]
湿気に曇った鏡が冷まされて、次第にくっきりと輪郭を写すように自分の立ち位置がはっきり見えるようになってくる。
それは、ある一つの特技について上達すればするほど「私ってこういうものだ」という、開き直りにも似た、ある基準を持ち合わせていくことに似ている。
他人を見ていて、くっきり上下の差がわかった気になるのは、努力して手に入りそうか、そうでないかを感覚として掴む能力が働き始めた証拠で、努力のプロセスを論理的にも体験的にも知らない子供が陥る罠の一つである。
それでそのまま早熟で諦めの早いタチに育った子供が、他人の機嫌をとることに心を砕いていたりする。そういう子供も自分の選んだ道を辿って作った人生だから文句は言えないのだけど、社会的な幻想が与える影響だって相当大きいんじゃなかろうか。
親がこの社会的な幻想に熱心であればあるほど、子供は面倒はごめんだという気持ちで辛抱して代償を払っている。これをやっておけば後は何しても文句を言われない、という免罪符を子供は常に探しているのであると親になって理解した。
それと同時に私の心には、橙色の夕日を背負いながら、目を細めてボールを追いかける子供たちの影が、薄闇の迫るのを惜しみつつ次第に闇夜に馴染んでいく姿が焼きついて残っている。
「もう帰るよ」とどれだけ呼んでも叫んでも、一向に帰ろうとしない、ひたむきで、夢中で、疲れを知らない姿が心に焼きついて残っているのだ。
これからどの特技を伸ばしていくかという迷路みたいな子供の可能性について、親は手当たり次第に試しながら、ああでもないこうでもないと言いつつ、ときには胃を痛めて、やっと見つけた子供の夢を一緒に追いかける、のであーる。
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。